『先生と友だちになりたい』
「先生と友だちになりたいです」
初めての授業が終わったあと、数人の学生が私に近づいてきて、こう言ったのである。
「えっ・・・友だち・・・?」
その時、私は、正直に言うと、とても驚いた。
日本では、学生と先生が友だちになるという感覚がないからだ。
先生は、いつまで経っても先生で、友だちになりうることは絶対にない!と思いこんでいた私は、先生と学生が友だちになる?そんなことが中国ではよくあることなのだろうか?と考えこんでしまった。
だから、その学生に対しても、どんなふうに答えたらいいのかよく分からず、曖昧に頷くしかできなかった。
現在、2年生と3年生の会話の授業を担当しているのだが、授業を始める前に立てた目標のうちの一つが、学生の名前と顔を覚えることで、そんなことは当たり前なのかもしれないが、全員で230人も学生がいるので、結構大変な作業であった。
授業中だけではとても覚えきれないので、授業以外のイベントにも積極的に参加した。
授業以外の時間を一緒に過ごすことで、普段分からない一面を垣間見ることができるため、本当の意味で、親しくなれる機会だと思っている。
日曜日の朝から、バスケットボールをしたり、岳麓山に山登りに行ったり、また、近くの公園にバーベキューをしに行ったりと、いろいろな活動に顔を出していたのだが、その行く先々でも、冒頭で紹介した、「先生と友だちになりたいです」この言葉を何回も聞いたのだった。
ある日、3年生の学生と飲みに行く機会があった。
彼らは、白酒4本をぶら下げて、「先生、今日は、飲みましょう!」と笑顔で待ち合わせ場所にやってきた。
「おお〜・・・彼らの勢いについていけるだろうか・・・」心の中で少しびびっていたのだが、ここまできたら、「一緒に飲むしかない!」と腹をくくって彼らの「干杯」に付き合った!
その時に、ある学生が、また「僕たちは、先生と友だちになりたいんです」と言ってきたのだった。そこで、今までの疑問を解決するために、どういう意味なのか思い切って学生に聞いてみた。すると、彼らは、「現在、湖南大学には、日本人の先生が3人、留学生が2人しかいないため、せっかく日本語を勉強していても、なかなか日本人と話をする機会がなく、本当の意味での交流が少ないため、先生ともっと親しくなって、いろいろ日本について知りたいんです。」というふうに説明してくれた。
「なるほど!そういうことか」と私は彼らの真意をやっと理解することができた。
確かに、ここ湖南省には、日本語を勉強している学生はたくさんいるが、日本人はかなり少ないように思われる。省全体でも、100人弱ぐらいである。だから、私以外の日本人と接触する機会は、ほとんどないため、せっかく日本語を勉強して、日本人と交流したくても、知り合える機会がかなり少ないということなのだ。
しかし、このような条件にもめげず、彼らは、本当に一生懸命日本語の勉強をしている。もっと流暢に話せるようになりたいとか、発音を矯正したいとか、目標を持って頑張っている。
私は、日本語教師という職業柄、言葉の意味だけにとらわれ過ぎていて、頭が固くなってしまっていたのだが、彼らの話を聞いて、「学生たちと友だちになる」という言葉の響きもいいものだなと思い始めている。
これからも、一人でも多くの中国人学生と友だちになっていきたいと思う。
湖南大学外国語学院 日本語教師 西條 治子