潜在している日中交流の可能性
私が日本語を教えている蘭州理工大学は甘粛省蘭州市にある。甘粛省は北西から南東へ伸びる奇妙な形をした省である。その北西部には一大観光地の敦煌を擁しているが、省都である蘭州市を訪れる外国人は少数である。有名なことといえば、黄河が街中を流れる唯一の省都であることと蘭州牛肉麺ぐらいであろうか。標高約1500mの高地に位置しており、これから初めての夏を迎えることになるが涼しく過ごし易いと聞いている。しかし、冬は降雨量がゼロに等しく、大気汚染のひどさは予想以上である。上流域であるため川幅は200m程しかないにも関わらず、対岸が全く見えなくなる日も多い。至る所でマスクは売られているが、どこまでの効果があるのか疑問である。着任後の1ヶ月間はこのまま任期を全うできるかと不安になったことを思い出す。日本語教師よりも環境汚染の専門家を派遣した方が良いのではないかという考えは今でも変わっていない。
そうは言っても、大学で日本語を教える忙しい日々が始まると、このような劣悪な環境もしだいに気にならなくなってきた。人間の慣れとは恐ろしいものである。麻痺と言った方がいいのかもしれない。仕事の内容は大学1年生から4年生までに会話、作文、聴解、そして論文の指導を行うというものである。ここに来るまではどれだけ真剣に日本語を学ぶ学生がいるのだろうかとの疑いを隠すことはできなかった。が、実際に授業をしてみると学生の熱心さに驚かされることばかりである。会話の時間のみんなの声の大きさを聞くだけで、レベルの高低に関わらずその熱意が伝わってくる。更に驚かされたことは、日本語を学んでいない学生も日本語コーナーを実施していたことである。日本語コーナーとは学生が自主的に日本や日本語を学ぶ場のことである。一昨年から本校に加え西キャンパスが開校した。こちらには外国語学部がなく、理系の学部が集められている。第2外国語として中国人の先生が日本語を教えに行くことがあっても、日本人を実際に見たことがある学生は皆無である。こんなところでも日本語コーナーが行われていたのである。その存在を知らされ、是非一度来て欲しいとの依頼があり、参加する機会を得た。日本に興味があり、その知識を吸収したいという思いの学生が40人程集まっていた。自己紹介の後、日本に関するクイズ、歌、簡単な会話練習などで盛り上がった。それから、初めての日本人が来たということで、1時間近くの質問攻めに遭った。アニメの話から日中関係まで多岐に渡ったが、その中で困ったのは豊臣秀吉について説明してくださいというものであった。恐らく説明したことは分かってもらえなかったであろうが、今後も参加することを約束してお開きとなった。今回のきっかけを通して、これからも学内に限らず幅広く中国人と交流し、相互理解を深めていきたいという思いを新たにした。
甘粛省蘭州市 蘭州理工大学 17年度2次隊 日本語教師 中須賀 剛