「いろいろ」が集まる場を提供する「乾坤空間」

胡同の芸術家~その壱~

人民網日本語版 2023年08月03日13:03

陶磁器の文化クリエイティブグッズなどを扱うショップ「采瓷坊」とワークショップなども体験できるアートスペース「乾坤空間」は北京市の歴史ある胡同・楊梅竹斜街にある。この2ヶ所を経営しているのは、自身も磁器修復工芸家である王京さんだ。そんな王京さんに、北京で昔と今、中国と外国をつなぐ芸術家やその試みなどについてお話を聞いた。人民網が伝えた。

「乾坤空間」の外国人芸術家

アートスペース「乾坤空間」には2人の外国人芸術家が関わっている。一人は日本人の丁未堂さん、そしてもう一人はロシア人のLiubaさんだ。王京さんと芸術家2人との出会いは約10年前にまでさかのぼることができる。丁未堂さんは木版画をメインに、Liubaさんはイラストレーションをメインとした作品を創作しており、それぞれ作風も趣も異なるものの、王京さんが彼女たちに抱く思いは同じだ。「私自身がまず彼女たちの作品が気に入ったということ。そしてさらに重要だったのは、彼女たちにある種の感動を受けたということ。なぜなら自分の国の文化や歴史が外国人から愛され、尊重されていると感じることができたから。彼女たちはずっと中国や北京を表現する作品を作り続けてきました。今のように多くのファンや販売する店も無かった当初、作品を作り続けたのはこの国に対する熱い思いがあったからに違いありません。作品の創作には極めて多くの時間と労力を必要とします。そして自分を掘り下げ、表現していかなければならないのです。彼女たちが見せてくれたこうした過程の多くは、私たちが学ぶべき価値のあるものだと私は考えています」としている。

「乾坤空間」に集まる「ユニークなもの」

そうした芸術家たちの作品を展示、販売するアートスペース「乾坤空間」自体もまたユニークな場所だ。間口は狭く、入るのにちょっと勇気が必要な感じがする。しかし一歩足を踏み入れると、中は思いのほか広くて奥行きがあり、商品や展示品、パネルなどが所狭しと並べられている。そして一番奥にはワークショップを開くことができる作業スペースもある。この「乾坤空間」という名について王京さんは、「『乾坤』という中国語には実に様々な意味があります。男と女という意味もあれば、天と地と理解することもでき、東西南北といった方向や、内と外という意味もあります。つまり『乾坤』は森羅万象を表しているのです。私は文化には国境はないと考えており、誰もがそれに関わることができると考えています。そうした考えからこの場所を『乾坤空間』と名付けました」としている。

さらに王さんは、「ここに来ると、多元さを感じることができると思います。なぜならここでは中国人芸術家たちの伝統文化や北京のユニークなものに対する理解や解釈、伝えたいものが見えてくるのと同時に、丁未堂さんやLiubaさんのような外国人芸術家たちが理解する中国の歴史や文化、古都である北京も見えてくるからです。こうしたものが見えてくる過程もまたとてもユニークです。外国人芸術家である彼女たちは、彼女たちの視点で表現し、その中に自分たちの理解と自分たちの民族の工芸技術を融合させているのです。そしてこの場所はそうしたものを展示できるような場でありたいと考えています。さらには国内外の人々が互いに交流し合い、互いに学び合う場でもありたいと考えています」としている。

インタビューに答える王京さん(撮影・張若涵)。

インタビューに答える王京さん(撮影・張若涵)。

東西の文化と古今が交わり復元された「乾隆年製の彩色タイル」

こうした交流を経て復元されたのが、「乾坤空間」に展示されている「乾隆年製の彩色タイル」だ。現在、世界で発見されている中で最も古い床暖房のタイルで、清代の乾隆年間に作られた。タイルには仏教の伝統的なマンダラの花模様や中国の伝統的な図柄であるハスの花模様がデザインされているほか、ヒシの花模様もデザインされている。しかし王さんによるとヒシの花は中国の伝統的な模様ではなく、昔の欧州の宮廷で非常に流行っていた模様なのだという。そのため、「このタイルから東西文化が互いに交流し、互いに参考にし、応用し合ってきたことを見てとることができるのです」としている。

そしてこのタイルにはもう一つの「交流」が隠されている。このタイルの残存していた一部から全体の図柄の復元に協力したのが中国人ではなく、外国人だった点だ。王さんによると、復元にボランティアで参加したそのドイツ人芸術家は作業に熱心に取り組んでいたとし、「進んで参加してくれた理由の一つが、このタイルの色彩が、彼女の見たことのある欧州の宮廷の色彩に似ていたからです。これはもちろん考証の必要はありますが、少なくとも彼女はその色彩に一種の帰属感のようなものを感じたことは間違いないでしょう。そしてもう一つの理由として彼女が挙げていたのは、この200年ほど昔の中国のタイルの復元作業に、現代の、そして外国人である自分が関わることができるのは非常に誇らしく、さらに復元することでより多くの世界中の人々にこのタイルの本来の姿とその素晴らしいデザインを展示できることに特別な意義があるからということでした。私は私たちの文化をもっと多元的にとらえ、より寛容になれたなら、このドイツ人芸術家のようなより多くの人々が、私たちの文化を共同で立ち上げ、伝え、広め、そして技術的な支援をするために参加してくれると考えています。これは非常にユニークなプロジェクトであり、皆で一緒にやり続けていく意義のある事だと私は考えています」とした。

「乾坤空間」とこれから

年末には新たな文化クリエイティブグッズを打ち出すと話す王京さん。具体的にどんな作品なのか気になったものの、「それは秘密です!」とニッコリ。そして、「この場所は小さな場でしかありませんが、中国にはこうした場はたくさんあります。こうした場での出会いはもしかしたらとても規模の小さいものかもしれませんが、もっと多くの、もっとたくさんの国の方に訪れていただき、中国だけでなく、その歴史や文化、そして歴史ある都・北京を理解してもらいたいと思っています。そしてそんな『北京人』の1人でもある私自身もこうした活動に携わっていく中で、ここに集まる人々に尊敬の念を抱くと同時に、誇らしいと思う気持ちもあります。なぜなら、より多くの外国の方々が私たち民族の文化を理解したいと感じ、そしてそうした作品を作り上げ、展示してくれているからです。これはとても誇らしいことだと私は思うのです」とした。(文・玄番登史江)

「人民網日本語版」2023年8月3日

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