華夏の「美」を受け継ぎ、「漢服」産業が活況呈す山東省曹県

人民網日本語版 2024年02月08日13:28

山東省菏沢市曹県では近年、中国の伝統衣装である漢服の産業が急速に発展している。産業が立ち上がった時期自体は遅いものの、舞台衣装加工産業で培われた基礎を活かし、ECの後押しを受けて、同県の漢服産業は急速に成長し、今では、中国の漢服市場のシェア4割を占める中国最大の漢服生産拠点となっている。春節(旧正月、2024年は2月10日)が近づくにつれて、同県で生産されている「春節を祝う服+馬面裙(プリーツスカートタイプの伝統衣装)」のセットが、供給が需要に追いつかないほどの人気となっている。

人民網の取材チームはこのほど曹県に足を運び、漢服経済の急成長の舞台裏に迫り、漢服を製造する街の独特の魅力を取材した。

山東省菏沢市曹県大集鎮にある穿越大唐漢服雲倉ライブ基地のショールームに陳列された漢服(1月24日撮影・周琳佳)。

「漢服ブーム」きっかけに地元に戻り就職する若者たち

昨年大学を卒業したばかりの張子晨さんは、「00後(2000年以降生まれ)」の漢服デザイナー。漢服や中国伝統文化が大好きな彼女は生まれ故郷である曹県に戻って漢服のデザインに従事するようになった。生まれ故郷のここ数年の発展について、彼女は、「中国国産品のトレンド『国潮』の盛り上がりは必然的なものだ。誰かが曹県で作られた漢服を持っていると話すのを聞くと、とても誇りに感じる」と話す。

山東省菏沢市曹県にある有愛雲倉ライブ基地で漢服のデザインをする張子晨さん(1月23日撮影・袁蒙)。

張さんは、「イノベーションが漢服のデザインの最大の難関。伝統文化と近代的な要素をいかに組み合わせて、現代人の心を掴むかが、デザイナーが一番頭を使う所だ」とする。そんな彼女は今、「青花瓷」シリーズの馬面裙と上着のデザインを進めており、「この漢服には、青花瓷の上品さと、清潔感ある色彩を採用しているほか、菏沢が誇る牡丹の花を取り入れている」と説明する。

普段街に出かける時や、旅行に行くときなどは、自分でデザインした漢服を着ているという張さんは、「漢服を着ると、伝統文化を身にまとっているかのようで、自信を持って出かけることができる」という。

子供の世話していた女性や高齢者も総出で漢服作り

雲牧服飾有限公司・生産部の責任者・高燕さんは、裁断から始め、縫い合わせ、ロールエッジ仕上げ、アイロンがけ、プリーツ加工、腰回りのスリット加工などの工程を経て、馬面裙を作っている。彼女の下で働いているのは製造工場の主な生産力となっている平均年齢50歳前後の女性たちだ。糸を針の穴にスッと通し、女性たちが足元のペダルを踏むと、ミシンがカタカタと動き始め、生地と生地を縫い合わせ、馬面裙の腰の部分があっという間に完成した。高さんは、「自分が作った漢服を見ると、達成感を覚える。それに舞台衣装を作っていた時よりも収入も増えた」と話す。

山東省菏沢市曹県大集鎮にある雲牧服飾有限公司で馬面裙を作る高燕さん(1月24日撮影・袁蒙)。

曹県の漢服産業が近年発展するにつれて、以前は家で子供の世話をしていた女性や高齢者に働く機会が提供され、こうした人々は服を作ったり、ボタン付けをしたりして収入を得ることができるようになっている。こうした変化について、高さんは、「特に、ミシン縫製やアイロンがけといった作業に、こうした人たちを起用している」と説明する。

ECがエンパワーメントし「農業」から「ネットショップ経営」に舵切る県民多数

曹県にある「有愛雲倉ライブ基地」では、ライブ配信パーソナリティーが、「当社は『織金倣粧花』という刺繍の技術を採用しています」や「私が着ているのは、ナンバー14のリンクをタップして購入できます」といったようにPRして、漢服を販売していた。

「有愛雲倉ライブ基地」は倉庫型のライブ配信拠点で、ホールには約4000着の漢服が並んでいるほか、ライブ配信ができる場所や設備も提供されている。パーソナリティーはスマホさえあればライブ配信を始めることができる。同拠点には、ライブ配信ルームが40部屋あり、そこでパーソナリティー15人が活躍し、売上高は1日当たり約25万元(1元は約20.6円)に達している。

山東省菏沢市曹県の「有愛雲倉ライブ基地」で、ライブ配信をして「馬面裙」を紹介する姚馳行さん(1月23日撮影・周琳佳)。

「有愛雲倉ライブ基地」の姚馳行総経理は、ライブ配信パーソナリティーの一人。「鳳紋」がデザインされた「馬面裙」を着てライブ配信をした後、「『馬面裙』は1千年以上の歴史を誇る。その最大の特徴は馬に乗りやすいことで、これを着るととても素敵で、テンションが上がる」とし、「女の人なら誰でも『馬面裙』を1枚は持っているようになり、馬面裙が私たちの生活に溶け込むことを願っている」とその夢について熱心に語ってくれた。

整備され続けているEC業態も、伝統的な「農業大県」である曹県の「転職」を大々的に後押しし、多くの県民がネットショップを開いてEC事業を展開するようになっている。

同県のEC企業は約7000社、ネットショップは8万3000店舗に達しており、こうした高まりを見せるECの流れが、漢服産業の急速な発展を促進する内生的原動力やコア競争力となっている。(編集KN)

「人民網日本語版」2024年2月8日

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