小さなチップで長江生物の「遺伝子の痕跡」を検出

人民網日本語版 2026年03月18日14:18

今年の全国両会(全国人民代表大会・中国人民政治協商会議全国委員会)期間中、「部長通路」に登場した小さなチップが注目を集めた。生態環境部(省)の黄潤秋部長はチップを示しながら、「これは環境DNA(eDNA)シーケンシング用チップであり、ヨウスコウスナメリやイェンツーユイ(胭脂魚)などの水生生物のDNA情報を記録しており、長江における10年間の禁漁措置の成果を示すものだ」と紹介した。科技日報が伝えた。

eDNA技術は、水や底泥などの環境試料から生物が残した「遺伝子の痕跡」を抽出し、標準DNA配列と照合することで種を正確に識別する画期的な技術だ。このチップはどのように長江の水生生物のDNAを特定しているのか。また、環境保護の在り方をどのように変えるのか。こうした疑問を持ちながら、専門家に取材した。

環境モニタリングの「超能力」を備える

湖北省生態環境モニタリングセンターステーションの副所長であり上級エンジニアの劉真貞氏は、「水生生物は種類が多く、分布が広く、環境変化に敏感だ。水生生物をモニタリングすることで、水生態系の健全性を総合的に反映でき、水質汚染対策や生態修復に科学的根拠を提供できる。従来の水生生物調査は、主に目視観察、網による捕獲、形態学的同定などに依存しており、時間と人的コストが高かった」と語る。

劉氏は、「水生生物が環境中に放出する試料(皮膚、代謝細胞、分泌物、さらには腐敗物など)に対してDNAシーケンシングを行えば、種のモニタリングが可能になる。黄部長が紹介したチップは遺伝子シーケンシング装置に搭載され、採取した環境試料から生物種を迅速かつ正確に識別できる」と話す。

このチップは華大智造が独自に開発し、G99遺伝子シーケンサーに搭載して使用される。同社マルチオミクス研究開発センターサブセンター長の王逸叢氏は取材に、「eDNA技術の水生生物モニタリングにおける『超能力』を強化するため、当社は中国科学院水生生物研究所および湖北省生態環境モニタリングセンターと共同で、武漢の東湖6地点において魚類多様性のモニタリングに適した遺伝マーカーを選定した。その結果、16科36属に属する51種の魚類が検出され、eDNAメタバーコーディング技術を東湖の魚類多様性モニタリング・研究に応用する基盤が固められた」と述べた。

一握りの水で魚種を特定

湖北省生態環境モニタリングセンターの呉冬晴博士は、「生物が環境中に放出する情報はごく微量だが、eDNAシーケンシング技術は近年大きく進展し、高い検出精度と信頼性を備えるようになった。実際の作業では、モニタリング作業員が異なる地点から『一握りの水』を採取するだけで、遺伝子解析システムを通じて水生生物の検出結果を得ることができる」と説明。

王氏は、「精密なモニタリングを実現するため、華大智造はナノボール技術やプローブ固定型重合シーケンシングなどの独自コア技術をチップと装置に統合し、低品質・低濃度のDNAの配列読み取りが可能となり、複雑な生物群集構造の解析や希少種・外来侵入種のモニタリングを効果的に支援できる。これらのコア技術により、チップは標的ゲノム情報を捉える『高感度の神経』を備え、環境中の汚染物質やノイズ情報を効果的に除去できる」と語った。

王氏はさらに、「当社は研究チームとともにDNAバーコード参照データベースを構築し、種の効率的な検索における『索引』として機能させている。DNAバーコードは、短いDNA配列を種識別のマーカーとして用い、DNA配列と生物種との一対一の対応関係を確立し、『一握りの水で魚種を特定する』という目標を実現するものだ」とした。(編集YF)

「人民網日本語版」2026年3月18日

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