思い出を残すサポートをする「電子機器のおくりびと」

世の中には数多くの職種があり、どの職業にも優れた人材がいるものだ。中国では近年、若者らが知恵を絞り、ユニークな新しい職業を次々に編み出している。「00後（2000年以降生まれ）」の陳興一さんは大学卒業後、ミルクティーショップを経営したものの失敗。その後、iPhone4を分解して各部品を額縁の中に並べた「標本」を作成し、ネット上で大きな話題となった。それをきっかけに、陳さんは「電子機器のおくりびと」になった。銭江晩報が報じた。

陳興一さんが電子機器を分解して作成した「標本」

「電子機器のおくりびと」とは、誰かが使った電子機器を分解して、それをきれいにレイアウトし直し、台紙に張り付けて額縁の中に入れ、「標本」のようにする職業だ。

陳さんは以前、蔵（チベット）族の女性が送ってきた携帯電話を受け取ったことがある。その携帯電話は女性の父親が生前使っていたもので、折りたたみ式で色は紫、表面は色がはがれ落ちている所がたくさんあったという。陳さんはその携帯電話の「標本」に女性の父親向けのメッセージを書き、さらにコスモスの花の絵を描いた。

陳さんに携帯電話やカメラ、ゲーム機、スマートロック、腕時計、ビデオカードなどの「標本」を作ってほしいと頼む人はどんどん増えているという。陳さんは、「僕のことを『電子機器のおくりびと』と呼ぶ人もいる。僕の仕事はみんなのいい思い出を残し、電子機器の行き場を見つけてあげること」と話す。

陳興一さん

ここ数年の間に、アニメ・漫画・ゲームなどを総じたジャンル「二次元」や中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな国産品のトレンド「国潮」、かわいいペット、大きめサイズのレディースファッションなど、これまではそれほど注目されていなかった分野が、ショッピングサイト・淘宝（タオバオ）を通して次々に台頭し、大人気となってきた。そして、より細分化された、斬新でユニークな若者向け市場が発展し、時代の流れの縮図となっている。

関連調査の統計によると、淘宝にはそのようなクリエイティブなショップが少なくとも20万店あり、2年前に比べて倍増した。その約77.2％を90後（1990年代生まれ）と95後（1995－99年生まれ）が占めている。

社会へと出たばかりの若者たちは、斬新な発想を次々と繰り出して、自分らしさを表現する方法を見つけているのだ。（編集KN）

「人民網日本語版」2021年8月20日