1パックの牛乳が歩むカーボンニュートラルの旅

人民網日本語版 2025年08月26日10:56

「中国の酪農の都」と呼ばれる内蒙古(内モンゴル)自治区呼和浩特(フフホト)市では、その多くの市民の低炭素な一日が1パックの「カーボンニュートラル牛乳」から始まる。新華社が伝えた。

「活力中国調査行」をテーマとした取材チームはこのほど、同市にある乳製品大手の伊利集団を訪れ、乳業企業の産業チェーン全体における低炭素の実践を取材した。

呼和浩特市伊利敕勒川エコ・スマート牧場にある搾乳工場(7月28日撮影・李志鵬)。

呼和浩特市伊利敕勒川エコ・スマート牧場にある搾乳工場(7月28日撮影・李志鵬)。

乳業は第1次産業、第2次産業、第3次産業全てに関わり、飼育や加工、消費などの各段階にも関わるため、炭素排出削減の難易度が極めて高い。

十数年前、伊利は産業チェーン全体のカーボンフットプリント調査を始め、川上となる牧場などの生産の前段階における炭素排出が全体の8~9割を占めていることを発見した。乳牛1頭が1日あたり排出するガスには250~500リットルのメタンが含まれ、その温室効果は二酸化炭素の数十倍にも達していた。

中国乳業協会が発表した「中国乳業品質報告(2025)」によると、2024年には、中国の一定規模以上の乳製品加工企業の主要事業収入は5104億8000万元(1元は約20.6円)に達し、中国全土の牛乳生産量は4079万4000トンに達した。産業の質が急速に向上し、国産乳業の競争力は持続的に強化されている。同時に、世界的にも気候変動対策が重視されている中、中国の乳業はグリーンで低炭素な発展へと歩みを進めている。

伊利敕勒川エコ・スマート牧場では、乳牛1万2000頭が「低炭素な暮らし」をしている。それを支えているのは一連の低炭素のノウハウだ。具体的には海藻粉末を加えた飼料やプロバイオティクスを配合して牛の胃の中を「環境に優しく」するほか、遺伝子選別による「低炭素牛」を育成することで、牛のゲップにより排出されるメタンガスを減らし、牛糞を回収し、肥料や牛舎の敷料として再利用することなどが挙げられる。

さらに削減が難しい炭素排出に関しては、牧場周辺に草を多く植えることなどで相殺している。この方法は炭素クレジットの置き換えになるだけでなく、飼料としても活用でき、農業と畜産業が相互に支援し合い、増産と同時に炭素削減を実現している。

牧場から数キロメートル離れた場所には、伊利現代スマート健康バレーのメインビルがある。その姿は巨大な蝶が陽光の下で羽ばたこうとしているかのようで、「ゼロカーボン」への変革を進めている。

液体ミルクの生産工場では、1パックの牛乳が殺菌、配合、包装といった高度に自動化とスマート化された数十もの工程を経て、生産されている。生産ライン18本を上から見下ろすと、充填機が平均で毎秒11パックの牛乳を充填し、ベルトコンベアで次々と運ばれていく。

伊利現代スマート健康バレー液体ミルク世界製造モデル拠点で、ロボットアームが牛乳製品を箱詰めする様子(7月28日撮影・李志鵬)。

伊利現代スマート健康バレー液体ミルク世界製造モデル拠点で、ロボットアームが牛乳製品を箱詰めする様子(7月28日撮影・李志鵬)。

伊利集団安全生産管理部の環境保護専門家である董暁玲氏は、「生産効率とエネルギー利用効率を高めることこそが、資源の浪費とエネルギー消費を減らす最大の炭素削減策だ。同時に、乳業企業は産業チェーンの現代化水準を向上させ、スマート乳業エコシステムを構築し、高品質な製品で消費者の需要に応えている」としている。

中国の乳業が質の高い発展を目指す過程においては、牧場から店舗の棚に至るまで、あらゆる細部で品質を追求し、炭素排出との「闘い」が続けられている。

そして熱エネルギー回収技術で冷熱の循環利用を実現し、年間5000トン以上の標準炭を節約し、殺菌工程の改良によって、4人家族の900世帯以上が1年間に消費する電力に匹敵する電気を節約。また低炭素な包装資材を導入することで、環境に優しい牛乳パックを作り上げて、炭素排出を20%削減するといったような努力が積み重ねられている。

董暁玲氏は牛乳のパックを手に取り、「この『カーボンニュートラル牛乳』を例にすると、10パック入りの1ケースで約8.5キログラムの炭素排出を削減でき、それはほぼ1本の木が1年間に吸収する炭素量に相当する」とする。

1パックの牛乳による「カーボンニュートラル」の旅は、呼和浩特市の乳業企業が進めるグリーン・低炭素トランスフォーメーションの縮図となっている。

現在、呼和浩特市には中国で大きな影響力を持つ乳業全体のサプライチェーンがあり、伊利と蒙牛という2つの1000億元規模の乳製品加工企業が育つとともに、200社近い一定規模以上の乳製品関連企業が集まっている。

健康バレーの産業観光エリアの棚には、「カーボンニュートラル牛乳」や「カーボンニュートラル粉ミルク」、「カーボンニュートラルチーズスティック」などの商品が所狭しと並び、消費者に多様で豊富な商品を提供している。(編集KN)

「人民網日本語版」2025年8月26日

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