認知症患者の行方不明を防ぐ服を3000着以上寄贈してきた警官

人民網日本語版 2025年09月23日15:41

山東省済南市の警官・范衛東さんは、アルツハイマー病患者である父親が何度も行方不明になったのをきっかけに、ここ8年間、高齢者が行方不明にならないように、QRコードがプリントされた服を作り、3000世帯以上に安心と温もりを届けるというボランティア活動を行ってきた。

済南市公安局済陽区分局の警官である范さんは最近、とても忙しい日々を送っている。なぜなら気温が下がって寒くなる前に、行方不明になるのを避けるための服をアルツハイマー病患者の高齢者に仕事の合間を縫っては届けているからだ。

行方不明になるのを防ぐ服の背中には、アルツハイマー病を意味する「AD」と、「世界アルツハイマーデー」である9月21日を表す「9·21」という文字のほか、QRコードが目立つ位置にプリントされており、それをスキャンすると、高齢者の氏名や連絡先などの情報が表示されるようになっている。また、位置情報チップも搭載されており、高齢者の位置情報をリアルタイムでチェックすることができるほか、裾には蛍光反射テープが縫い付けられており、夜間の歩行の安全性を高めている。

アルツハイマー病患者の家族である王淑芹さんは、「母親がこの服を着るようになってから、外出しても、スマホを見てその位置を確認できるため、とても便利」と話す。

范さんが、行方不明になるのを防ぐための服に出会ったのは2017年のことだ。当時、父親がアルツハイマー病と診断され、行方不明になったり、怪我したりすることが多くなっていた。そこで范さんは、メモを持たせたり、バッジを付けたりしてみたものの、父親はそれを嫌がり、いつの間にか捨ててしまっていた。そこで父親のために、こうした目印を外すことができない服を作ることにした。それが、1着目の行方不明になるのを防ぐ服となった。

勤務中、范さんは、高齢者が行方不明になったという通報を受けることも多い。そして、出動すると、いつも心配からいてもたってもいられない家族を目にした。そこで、2017年に、自ら1万2000元(1元は約20.8円)をつぎ込み、行方不明になるのを防ぐ服を100着作り、同じような境遇にある家庭に寄贈したという。そこからなんと8年間もこの活動を続けてきたという。

2Gから4Gへ、現在ではモノのインターネット(IoT)SIMカードに、作業服から通気性の良い生地にアップデートし、さらに、連続待受時間は3日間から1週間まで延長し、春服、夏服、秋服、冬服も作るなど、范さんは改良を重ねてきた。

范さんは当初、一人で工場やアルツハイマー病の家族と連絡を取り、服を郵送するなどしていたものの、継続的にボランティア活動をする彼を見て、心を動かされる人も増えていった。そこで2021年、范さんが中心となって、「智慧范」公益サービスセンターを立ち上げ、今ではボランティア30人が所属している。

これまでの8年間、范さんは服を3000着以上寄贈してきた。ただ、父親が生前に言っていた「夏服にチップを搭載すると、着心地が悪い」という言葉を今も忘れることができないと言い、現在は靴底にチップを搭載できないか模索しているところなのだという。(編集KN)

「人民網日本語版」2025年9月23日

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