200超える国・地域で視聴者の心をつかむ中国ショートドラマ
陝西省にある映画撮影拠点では、150ヶ所もあるさまざまなセットの撮影現場が24時間稼働し、最も多い時には1日に11の制作チームが同時に撮影を進める。海外から来た若い俳優たちは中国ショートドラマの制作本数の多さに驚き、「ここには確かにより多くのチャンスがある」と話す。このような活気あるシーンの背後には、中国ショートドラマの勢いある海外進出という壮大な情景が広がっている。中国ショートドラマは今や200を超える国・地域に広がり、市場規模は100億ドル(1ドルは約148.2円)に達する。
中国ショートドラマがグローバル市場をこじ開けた秘密の鍵は、まさに「ショート」という点、つまり短いことにある。従来のテレビ・ドラマが長いストーリーを制作するためにあれこれ知恵を絞っている時に、1~15分のショートドラマは「テンポのよさ、ハラハラする衝突やすれ違い、共感を呼ぶ展開」で現代人の隙間時間にぴったりとハマった。ショートドラマの短いストーリーは文化伝達の壁を打ち破り、最も直接的な感情の共鳴を起こし、世界中の視聴者の心をつかんだ。複雑な歴史的背景への理解を必要とせず、「文化的割引」の影響も受けず、ハラハラする設定やスッキリするどんでん返しで、さまざまな文化的背景を持つ人々が暮らしの中で共感できるコンテンツ、それがショートドラマなのだ。
中国ショートドラマの海外進出は、決して単なるコピー&ペーストではない。2024年に陝西省西安市の制作会社が撮影した海外ドラマは4~5本だったが、25年はすでに20本に達した。その背後には、「中国のスピード」と呼ばれるハイスピードと「グローバルニーズ」の波長が合ったということがある。つまり、セットの製作から衣装・メイク・小道具までカバーする「ワンストップ式サービス」があることで、制作チームは「カバン一つで映画制作を始める」ことが可能になり、高い頻度での更新を求める海外市場のニーズに応えられるようになった。「クールな作品を撮りたい」と強く願っている海外の俳優に対しては、成熟した中国ショートドラマ産業チェーンがその願いを実現できる「土壌」を提供した。中国は成熟した映画テレビ産業システムをよりどころにして、世界の視聴者の「手っ取り早く満足したい」という消費ニーズに応える一方で、「中国のストーリー」を伝えるうえでも一層柔軟なアウトプットのためのルートをもたらした。
当然のことだが、中国ショートドラマにとって100億ドルという数字は最終目標ではない。今後もさらに発展の範囲を広げるためには、「文化的深水エリア」を飛び越えなくてはならない。「翻訳してすぐ海外に発信」という初期段階のモデルが徐々に限界にぶつかる中、どうすれば「中国的な表現方法」を世界のさまざまなコンテクストに融合させることができるのか。そのためには、単に登場人物に英語をしゃべらせるだけではだめで、人類に共通する心のテーマを深く掘り下げ、親子の情、恋愛、努力、成長といったテーマを丁寧に描くことが、中国ショートドラマが世界で流行し続けるための重要な鍵かもしれない。同時に、中国のストーリーをよく理解し、国際的なルールにも精通した制作者を育成し、「中国のシナリオ+現地の俳優+現地での宣伝・発信」という協力メカニズムを構築し、文化の伝達が一方向のアウトプットから双方向の対話へと転換するよう後押しすることも必要だ。
小さな画面には大きな時代が映し出される。私たちがそこに見るものは、1つの産業の誕生と発展だけではない。非常にローカルなストーリーが広く世界の人々の心を動かし、1つの文化が新たに生命力を得る様も見ることができる。中国ショートドラマの海外進出が教えてくれるのは、真の文化的自信は人間同士のささやかな共鳴から生まれ、ごく自然な「感情の共振」に根ざすということだ。世界中の視聴者が同じストーリーを見てともに喜びを感じる時、はるか遠い距離を隔てた双方向の共鳴体験によって、互いの心の中に相手を理解するための種がすでにまかれているのだ。(編集KS)
「人民網日本語版」2025年9月24日
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