東京は夏を迎えた。夜のとばりもまだ下りない時刻に、銀座の大通ではネオンサインが争うようにキラキラと点灯し始める。三越や和光などの名店が集まる銀座4丁目交差点では、「Haier」(海爾、ハイアール)のネオンが真っ先に輝きだす。
ハイアールのネオンは、赤い縦ラインの光が右端に点灯し、日本人の縦書きの習慣に従って右から左へと移動し、少しずつ赤ラインの部分が増えていく。全体が赤くなると「Haier」の文字だけを残して消え、また右端に赤ラインが点灯して同じ動きを繰り返す。今、銀座の大通でデパートの袋を下げている人々はすぐに中国人だとわかる。目抜き通りにハイアールのネオン広告がきらめくのを見て足を止め、「ハイアールだ」とうれしそうに叫ぶからだ。
東京の池袋にあるブランド製品販売店で働く西尾さんは、「日本には銀聯カードが使える店が38万店ある」と話す。
5年前には日本の小売業界で銀聯カードを知っている人はほとんどいなかったが、今では相当の規模のデパートやブランド店で銀聯カードが使えなかったとしたら、そこの経営者に問題があるという。池袋だけではない。銀座に行けば、どの店も銀聯カードのマークを他のクレジットカードのマークより大々的に取り上げ、一番目立つ場所に貼っている。日本人消費者が使おうと使うまいと、銀聯マークを目にすることから、銀聯ブランドがもはや少数派ではないことがうかがえる。銀聯は今や日本で最も知名度のある中国ブランドだ。
「11時半に銀座の交差点のデパートのライオン前で会いましょう」。東京で、尊敬する友人の島津氏から「微信」(WeChat)のメッセージを受け取った。10分前に着いてライオン前で待っていたが、時間が来ても氏は姿を現さない。もう一度、「微信」のメッセージを送ると、「もうライオン前にいますよ」との返事。おかしい。ライオン像は一つしかないはずだし、その前には私しかいない。氏は一体どこにいるのか。デパートの前を探すと、氏は違う側で待っていた。到着してからやはりしばらく経つらしい。「こちら側のライオンはもう撤去されてしまいましたよ」と私が言うと、氏は初めてライオンが一頭しかいなくなったことを知ったようで、そういうことかと笑い出した。私も笑った。
もし「微信」がなければ、人の大勢いるデパート前で会えたかわからず、高価な国際電話をかけなければならないところだった。
国際広告は往々にして、現地の国民に見せるためというよりは、自国の国民に見せて一種の誇りを感じさせるためのものなのだろう。30年前、日本人記者が首都空港の道路で日本企業の広告を見た時の気持ちを、私たちもようやくわかるようになった。
筆者はもともと、日本で華為の製品を買おうという気などなかった。だがどういうわけか、成田空港で華為の広告に目を止めてから、日本の家電量販店を訪れるたびに、華為の製品を探すのがくせになってしまった。ある日、一番大きな(家電量販チェーンの)ヨドバシカメラの店舗に入ると、入り口近くの携帯電話のカウンターに華為の携帯電話やタブレットが並んでいるのを見つけた。やはり買う気はなかったが、思わずその前でしばらく立ち止まってしまった。
秋葉原のアニメ、家電量販店、免税店に殺到している中国人観光客にとって、「ヨドバシカメラ」こそが家電量販店の最大手のはずだ。この家電量販店に入ってみると、中国のPCメーカーレノボのパソコンが大きな勢力を保っているのを見つけた。
国際広告は往々にして、現地の国民に見せるためというよりは、自国の国民に見せて一種の誇りを感じさせるためのものなのだろう。30年前、日本人記者が首都空港の道路で日本企業の広告を見た時の気持ちを、私たちもようやくわかるようになった。
日本の百貨店の1階は一般的に化粧品、ハンドバッグ、靴など良質な品物が売られている。これは百貨店の販売力、顧客誘致力を判断する最もシンプルな基準である。もし多くの人が化粧品をみているのであれば、だいたい優れている店と考えることができる。一方、家電量販店の状況は異なり、携帯やパソコンに頼り、消費者を引き込んでいる。ヨドバシカメラに入店すると、フロアのレジ附近にある広告を見て、各パソコンカウンターを見てみると、レノボが非常に目立つことがわかる。