【撮影者は語る】宮﨑一騎氏、多様性の幅が広い中国が「おもしろい」

人民網日本語版 2024年12月31日15:05

中国国際航空公司日本支社と人民網日本株式会社が共同で主催する「心に映る中国」日本人がとらえた中国フォトコンテスト2024が3月18日からスタート。約3ヶ月間にわたる応募期間中、中国各地で撮影された作品が合わせて約1000点寄せられた。コンテストでは、「撮影者は語る」と題し、撮影者に写真を撮影した過程で出会った事柄や中国の印象、感じたことなど紹介していく。今回は二等賞を受賞した宮﨑一騎さんにインタビューした。

宮﨑一騎さん

北京に計2年半の留学経験あり。卒業後は日本で就職。

日本人向けに中国旅行に関するコンテンツを発信するYouTubeチャンネル「一騎探検中」とホームページ「ミドルキングダムの冒険」などを運営。

Q:受賞作品「仙境の世界」について

「心に映る中国」日本人がとらえた中国フォトコンテスト2024で二等賞を受賞した宮﨑一騎さん撮影の「仙境の世界」。

「心に映る中国」日本人がとらえた中国フォトコンテスト2024で二等賞を受賞した宮﨑一騎さん撮影の「仙境の世界」。

湖南省張家界市にある武陵源森林公園内の天子山ロープウェイの中から撮りました。

武陵源には以前も行ったことがあったのですが、雪景色を見たくて冬に再訪。ただ園内に雪が全然なく、ガッカリしながら天子山ロープウェイに乗り込みました。そんなモヤモヤした気持ちを抱きながら霞んだ雲の中を進み、急に視界が晴れて見えたのがこの景色でした。

黄色い岩肌、真っ白な雪、そして、それを覆う雲海。ロープウェイでこの空間をゆっくりと浮遊して目にしたのは、現実とは思えないような幻想的で美しい世界でした。友達と私は叫びながら大興奮。まさに一生忘れられない瞬間になりました。

そんな瞬間をとらえたのがこの一枚です。ロープウェイの窓に反射や汚れが映り込むなど、写真としては完璧とは言えませんが、「これよりきれいな自然見たことあるかな?(いや、これが人生最高の景色だ)」と自問自答した美しさと興奮が伝わる一枚になったと思います。

Q:素晴らしい撮影作品とは?

目が落ち着く写真とストーリーがある写真は素晴らしい作品だと感じます。

目が落ち着く写真とは技術的な観点です。撮影者が被写体や構図を意図的に決めた上で、作品を見る人の視線の動きやどこに注目するかなども考えて構成し、撮影した作品は、意図した情報伝達がより効果的になると思います。

また、ストーリーがある写真とは内容的な観点です。構図や撮影設定のうまさではなく、作品を見た際に、その瞬間あるいは背景にあるストーリーも含めてぐっと心を引き込む力のある作品です。

撮影の上手い人は数えきれないほどいますし、今はAIでそれっぽい作品を生成することも可能です。ただこうした作品がどれも素晴らしいとは限りません。その差はストーリーの有無にあると思います。

Q:中国での撮影の過程で、印象深かったエピソードは?

雲南省の世界有数の深さを誇る大峡谷・虎跳峡で1泊2日のトレッキングをした際に、ドローンを墜落させてしまったことです。

5千メートル級の山々に囲まれながら歩き、最後に谷底を流れる長江の上流・金沙江まで下りて行きました。するとこれまでの人生で最も激しくて大きな激流が目の前を流れていました。

この大迫力をみんなにも伝えたいという思いから、狭い谷間でドローンを飛ばしたところ、激流から生じる強烈な上昇気流でドローンが制御不能になり、瞬く間に崖に激突して墜落してしまいました。その結果、それまで撮影していた超絶景の写真や動画も全てパーに。非常につらい経験でしたが、中国の大自然の力を身をもって体感した経験でもありました。今後はもっと撮影に気をつけ、虎跳峡にもいつかリベンジし、中国各地のすごい作品を共有したいです。

ドローンが墜落した後に無線通信で唯一取り出せた写真。人の小ささがこの場所の雄大さを物語っている(撮影·宮﨑一騎)。

ドローンが墜落した後に無線通信で唯一取り出せた写真。人の小ささがこの場所の雄大さを物語っている(撮影·宮﨑一騎)。

極寒の中、1時間以上にわたり撮影した雲南省虎跳峡の満点の星空(撮影·宮﨑一騎)。

極寒の中、1時間以上にわたり撮影した雲南省虎跳峡の満点の星空(撮影·宮﨑一騎)。

Q:「一度は絶対に行くべき」おすすめの中国の場所は?

これまでに15の省、4の自治区、3の直轄市、2の特別行政区、約30の世界遺産に行きました。ここではその中からおすすめの一部を紹介します。

文化系

莫高窟(甘粛省):敦煌に残る古代遺跡。砂漠の下の岩盤に掘られた多くの洞窟の中に色鮮やかな仏像などが残っている。一番大きな楼閣の洞窟には、暗闇の中で浮かび上がる巨大な黒い大仏があり、その荘厳さと迫力に衝撃を受けた。

故宮(紫禁城、北京市):明の永楽帝が建てた宮殿が今も見られるので大興奮間違いなし。全景が見える景山公園からの景色が特におすすめ。

かつて誰がここを歩いていたのかと思いを馳せながら撮影した夕暮れ時の静寂に包まれた故宮(撮影·宮﨑一騎)。

かつて誰がここを歩いていたのかと思いを馳せながら撮影した夕暮れ時の静寂に包まれた故宮(撮影·宮﨑一騎)。

万里の長城(北京市):実際に見てみると、はるか昔にこれほど険しい山の上にこんな巨大な城壁を築いたのかと衝撃を受け、中国の歴史とスケールを感じられる場所。

どこまでも続く城壁が美しい北京郊外の司馬台長城(撮影·宮﨑一騎)。

どこまでも続く城壁が美しい北京郊外の司馬台長城(撮影·宮﨑一騎)。

兵馬俑(陝西省):2千年以上も前にここまで大規模な副葬品を作成し、埋葬したことに衝撃を受けた。秦の始皇帝の存在を現代でも感じられる場所。

楽山大仏(四川省):川岸の巨大な岩盤を彫って作られた巨大な大仏。表面を緑色の苔が覆い、悠久の歴史と迫力に圧倒させられる。

自然系

武陵源(湖南省):大迫力の奇峰が林立する絶景。特に雪景色は圧倒的な美しさ。

武陵源の奇峰は大きすぎて真ん中に映る自分はあまりにちっぽけ(撮影·宮﨑一騎)。

武陵源の奇峰は大きすぎて真ん中に映る自分はあまりにちっぽけ(撮影·宮﨑一騎)。

九寨溝(四川省):エメラルドグリーンの色合いの澄んだ水がとてもきれい。紅葉に囲まれてのハイキングがおすすめ。

桂林(広西壮族自治区):奇峰が林立し、まさに中国の絶景。奇峰に登り、山頂から眺めたり、筏下りで下から見上げたり、色々な鑑賞を楽しめる。

虎跳峡(雲南省):世界有数の深さを誇る大峡谷。谷底を流れる長江の上流に沿って最高に気持ちいいトレッキングができる。

稲城亜丁(四川省):銀色の雪山とエメラルドグリーンの湖がある標高3千〜5千メートルの高山地帯の絶景の中をトレッキングできる。

瀘沽湖(雲南省):圧倒的に透明な水が周りの景色を反射する鏡面世界のように美しい風景。現地の少数民族伝統の小舟で湖を遊覧すると一層美しい。

瀘沽湖の夕暮れ(撮影·宮﨑一騎)。

瀘沽湖の夕暮れ(撮影·宮﨑一騎)。

都市系

重慶市:中国で「8D都市」と言われるほど立体的に入り組んだ複雑な大都市。奇想天外な都市構造は散歩するだけでも楽しい。夜景も絶景。

重慶の夜景。暗い空間でこの夜景を見てから外に出るとまるで夢から覚めたような気分に(撮影·宮﨑一騎)。

重慶の夜景。暗い空間でこの夜景を見てから外に出るとまるで夢から覚めたような気分に(撮影·宮﨑一騎)。

芙蓉鎮(湖南省):小さな集落の中心を流れる大きな滝を囲むように古い町並みが作られていて美しい。特に、上品なライトアップの中で楽しむ夜の散歩は最高。

カボチャのような形の提灯が美しかった芙蓉鎮の夜(撮影·宮﨑一騎)。

カボチャのような形の提灯が美しかった芙蓉鎮の夜(撮影·宮﨑一騎)。

Q:中国を留学や旅行した中で感じたことは?

中国と中国人は知れば知るほどわからない存在だと感じています。ある時、強烈な印象を残す国や一個人のある動きがあると、人々は往々にして「中国は〇〇だ」とか、「中国人は〇〇だ」というように一括りにしてしまいがちですが、実際はそんなにシンプルではありません。それはどの国や国民にも当てはまることですが、特に中国と中国人は多様性の幅が非常に広いと思います。中国には先進国のような大都会もあれば、途上国のような農村もあり、灼熱の砂漠も、凍てつく雪山もあります。豊かな人から貧しい人、漢民族から少数民族まで実に様々です。そのためその「平均値」の幅も非常に広いと感じます。予測不可能で、多様性に富み、それが難しさと同時に、尽きることのないおもしろさの源泉にもなっています。

これが普段感情があまり動かない私の五感をも強く刺激し、私を中国に惹きつけます。常に発見と疑問、衝撃があり、好きとか嫌いではなく、中国はおもしろいと思うのです。私はそんなワクワクを求め、いつも中国を探求しているし、これからも探求し続けていくと思います。

Q:日本人向けに中国旅行に関するコンテンツを発信する活動を始めたきっかけは?

私は大学と大学院で日中関係を主とした国際関係を専攻していました。そして、複雑な諸課題が存在する日中間に、より持続可能な平和を構築することに貢献したいと思ってきました。

国と国の関係は国家機関や公人同士の公的な関係でもありますが、国民同士の民間の関係でもあります。民間の関係が改善すれば、それは国家の関係をも改善するきっかけになるかもしれないと思ったのです。

実際、あるデータでは、日本を実際に訪れたことがある中国人は、訪れたことがない中国人よりも、日本に対する印象が良くなる傾向にあるとしていました。また日本人の対中認識に影響する要因について調べた際も同様に、中国を実際に訪れたことがある日本人は、訪れたことがない日本人よりも、中国に対する印象が良くなる傾向にあったのです。

そこで、中国をもっと身近にするための活動をしようと思い、中国旅行を日本人に紹介し始めました。中国には世界的にも非常にレベルの高い素晴らしい観光地が多いので、より多くの日本人が訪れるポテンシャルも高いと感じたからです。

Q:今後の計画や目標は?

中国の大学院で学んでいた時、「ミドルキングダムの冒険」と名付け、中国の全ての省と全ての世界遺産を旅してホームページや各種SNSで発信することを計画しました。残念ながら、このプロジェクトは新型コロナウイルス感染症で中断を余儀なくされ、現在も再開できていないままとなっています。そのため、今後はこの旅を完結させたいと思っています。

宮﨑一騎さんが運営しているYouTubeチャンネル。

宮﨑一騎さんが運営しているYouTubeチャンネル。

また現在、「一騎探検中」というYouTubeチャンネルなどで中国旅行に関するコンテンツを作って発信しています。うれしいことに最近は自分のコンテンツを見てくれる人も増え始め、実際に中国に行ってきたと報告してくれる人も多くなりました。

上海に向かう機内でCAからもらった初めての「ファンレター」。「実際に自分のコンテンツを見てくれている人がいるんだと実感した非常にうれしい瞬間でした」と語る宮﨑さん。

上海に向かう機内でCAからもらった初めての「ファンレター」。「実際に自分のコンテンツを見てくれている人がいるんだと実感した非常にうれしい瞬間でした」と語る宮﨑さん。

最近は、連休を活用して中国への弾丸旅行を楽しむ「週末中国」という旅もしています。これは、多くの働く日本人にとって参考になる海外旅行の一形態だと思うので、今後はこうした中国旅行の選択肢も紹介していきたいです。

「人民網日本語版」2024年12月31日

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