平陸運河とは、一体どのような運河なのか?
134.2キロメートルとは、どれほどの長さだろうか。それは全長50メートルの1000トン級河川貨物船2684隻を船首と船尾がつながるように並べた長さに相当する。これが平陸運河の全長だ。
平陸運河は、新中国成立以来初となる、河川と海を結ぶ運河プロジェクトであり、中国南西部の水運の地理的な構成を根本から変えることになる。

地図を見ると、広西壮(チワン)族自治区には1628キロメートルの海岸線がある。しかし、河川と海は近くにありながら結ばれておらず、南西部の貨物を海へ運ぶには東へ大きく迂回し、500キロメートル以上余計に輸送しなければならなかった。平陸運河は南西部の内陸部から海へ出る最短の大動脈となり、南西部が海へ出る際の迂回の歴史を塗り替え、輸送費を年間52億元(1元は約23.3円)以上節減することになる。
地図上では一本の線にすぎないが、現実には世界レベルの山地運河プロジェクトだ。平陸運河プロジェクトにおける土砂と岩石の掘削量は計3億1500万立方メートルに達した。これは、杭州の西湖を20個分満杯にできる量で、三峡プロジェクトの約3倍に相当する。

馬道水利施設、企石水利施設、青年水利施設の3つの水利施設によって、約65メートルの水位差を調整する。これは船舶に「水上エレベーター」を取り付けるようなものだ。コンクリートの総打設量は約584万立方メートルに上り、これは標準的なプール2300個分以上を満たせる量となる。
道路、鉄道、航空、水運などの輸送方式の中で、水運は「輸送能力が大きく、コストが低い」ことで知られている。トンキロ単価は平均で鉄道の約4分の1、道路の約15分の1だ。1本の水運ルートが南西部全体の産業の高度化を支え、地域経済の成長軸を活性化させることになる。
■平陸運河の開通で、広西は「末端」から「要衝」へ

中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の研究員で地域協力室主任の周亜敏氏によると、広西にはこれまで「三沿」の優位性、すなわち「沿海・沿江・沿辺」(沿海部・沿岸部・国境沿い)という3つの優位性があったものの、これら3つの優位性が同一の低コスト輸送ルートの中で連携することはなかった。平陸運河の開通により、「海・河川・国境」という3つの優位性が同一の輸送システムの中に組み込まれ、広西も輸送ルートの末端から要衝へと変わる。長期的には以下の3つの大きな変化がもたらされる。
第一に、南寧と北部湾港の関係が書き換えられる。内陸河川港と海港はもはや別々のシステムではなく、同一の貨物供給を担う川上・川下の関係となる。
第二に、水運に適したバルク貨物、機械設備、食用油・穀物加工などの産業が、運河両岸に集積し始める。
第三に、地域経済の枠組みにおける広西の交渉力が大幅に高まる。粤港澳大湾区(「広東・香港・マカオグレーターベイエリア」。広州、仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市クラスター)からの産業移転を受け入れることができ、ASEAN市場に向けた生産活動の展開も可能になるからだ。
■中国南西部の内陸部とASEAN市場を最短の水運ルートで緊密につなぐ
1本の運河が、さらに多くの地域と市場をつないでいる。中国の重慶、四川、雲南、貴州などは鉄道と水運の連絡輸送によって運河と接続し、各地ですでにASEANへ直行する河川・鉄道・海運連絡輸送列車の運行が始まっている。
中国ラオス鉄道と平陸運河も連携し、ラオスなどの内陸国も「運河を利用して海へ出る」ことが可能になる。ASEAN各国の中国駐在の外交官も最近、相次いで平陸運河を視察し、貿易拡大への期待を表明している。

2025年に中国とASEANの二国間貿易額は初めて1兆ドル(1ドルは約156.3円)の大台を突破し、ASEANは6年連続で中国最大の貿易パートナーとなった。「1本の河川が通じれば、百の産業が栄える」という言葉があるように、中国初のライフサイクル全体で対応するスマート運河である平陸運河は、中国とASEANがデジタル経済やグリーン・スマート海運などの新興分野で協力するための新たな空間も切り開いている。この「水上高速道路」は、双方向的に活力を注ぎこみ、互恵共生する中国・ASEAN協力の新たな紐帯となりつつある。
■この運河は、一般の人々とどのような直接的関係があるか?
まず、果物農家にとっては、身近な場所で果物を船に積み込めるようになり、積み替えに要する時間を大幅に短縮できるようになる。生活の糧としては、港にも、船団にも、船舶修理にも人手が必要となり、工場や埠頭が稼働し、運河観光も盛んになることで、文化観光産業も恩恵を受ける。運河が開通すれば、仕事の機会は自然と増えることになる。

さらに、港湾周辺産業が爆発的に発展し、貨物、工場、ビジネス、物流、経済・貿易、産業が次々と連動し、雇用機会がますます増えていくことになる。
したがって、この運河は広西が「海に進出して強くなる」ためのスタートラインであるだけでなく、南西部全体が「内陸の末端」から「開放の最前線」へと飛躍するための扉でもあるのだ。運河が開通すれば、機会も水の流れに乗ってやって来る。運河の建設完了は、始まりにすぎず、この運河は必ずやさらに多くの驚きと喜びをもたらすに違いない。
■着工から開通まで 60秒で見る平陸運河の誕生
平陸運河の着工から推進までの重要な節目を60秒に凝縮して紹介し、この「世紀の運河」がどのように青写真から現実へと変わっていったのかを見ていこう。
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