中国の文化財を主役にした短編アニメ動画が話題に

人民網日本語版 2025年06月09日14:54

黄鋭穎(アカウント名・阿蝦AIXA)さんは、ある動画サイトで5月15日、短編アニメ動画「退勤後の国宝(原題:当国宝下班後)」を配信したところ、当日の再生回数が瞬く間に100万回を突破し、6月5日までに総再生回数は520万回を超えた。彼が2024年6月に配信した最初のヒット作「別の角度から国宝を知ろう!陶鷹鼎編(原題:換个方式認識国宝吧!陶鷹鼎篇)」も数百万回の再生を記録している。中国青年報が伝えた。

短編アニメ動画「退勤後の国宝」

短編アニメ動画「退勤後の国宝」

黄さんによると、文化財をアニメ化するというアイデアは、2023年初夏にまで遡る。当時25歳だった黄さんは、中国国家博物館の「古代中国」常設展示・隋唐五代コーナーで、敦煌莫高窟の「鹿王本生図」の1:1複製を眺め、漠然とした感動を覚えたという。子供の頃、上海美術電影製片廠のアニメ映画「九色鹿」を見たことがあり、その神秘的な美しさが印象に残っていたからだ。

古代の人々の審美眼と技術に驚きを感じた黄さんは同時に、近くにいたカップルが、唐三彩の陶馬を見ながら呟いた「ディズニーアニメの馬みたい」という何気ない感想が心に響き、何かを始めたいという衝動に駆られたのだという。現在、黄さんの文化財をテーマにしたアニメが注目を集めるようになっており、作品のコメント欄にはアニメに対する評価や、自分のお気に入りの文化財をシェアするコメントが次々寄せられている。黄さんは、「多くの若者が『実際に博物館でこれらの文化財を見てみたい』とコメントしてくれており、これは『文化財を見たい、知りたいと感じ、好きになってもらいたい』という私が当初、目指したことと一致している」とした。

黄さんが昨年配信した最初のヒット作で題材に選んだのは、新石器時代後期の仰韶文化に属する陶鷹鼎だ。これは、1957年に陝西省の農民が畑で偶然発見し、自宅に持ち帰って鶏の餌箱として使っていた。1958年秋、北京大学の考古学チームが陝西省渭南市華県で発掘調査を行った際、この農民が自らこの文化財を持ってきたのだという。黄さんは調査を通じ、この陶鷹鼎が1993年に「五輪誘致大使」としてスイスで展示されたこと、そして2002年には「国外展示禁止文化財(第一陣)」に指定されたことを知った。

「この文化財自体が面白いエピソードを持っており、絶対に無駄にはできない」という信念のもと、黄さんは短編アニメ動画のほぼ全工程を独力で完成させ、一部の作画のみアニメーターの福貴さんと協力した。この期間、彼は昼夜を問わず作画に没頭し、「純粋な作画作業だけで約1ヶ月半を使った」と黄さん。

そして黄さんは、「文化財の外見を100%再現するだけで、観客の興味を引くのは難しい。だから可愛らしさを追求しつつも、文化財の特徴や美しさは残したいと考えた」とする。「『退勤後の国宝』に登場する彩絵石騎馬人は、切れ長の目をやや吊り上げて、馬の鼻はやや大きく、口を開けて笑っているように描いた。また、説唱俑の額には実際は多くの皺があるが、アニメの中では皺は1本だけにとどめ、特徴を保ちつつ簡略化した」という。さらに彼は作品に、ユニークな効果音や有名アニメキャラのカメオ出演といった細かいディティールも加えた。

黄さんは、自分の作品が海外のウェブサイトでも10万を超える「いいね」を獲得していることを目にし、「中国の文化財の物語が、外国人にも受け入れられていることに驚いた」としている。

狄方寧さんが創作したキャラクター

狄方寧さんが創作したキャラクター

ネット上で総再生回数1000万回を超える「博物館の目立つ存在(原題:博物館顕眼包)」シリーズの作者・狄方寧(アカウント名・動画道長Dee)さんも、「子供が何度も見て、博物館に見に行きたいと言い出した」というコメントに最もやりがいを感じるとしている。そして、「私の作品が次世代の文化財への好奇心を刺激できることは、再生回数の向上より、倍以上の満足感をもたらしてくれる」と話す。

狄さんは以前からストップモーションアニメや水墨画アニメを制作していた。2023年6月、ファンから「ちまきに龍の顔を描いた動画の表情がユーモラスで可愛らしい。古代の陶磁器のような雰囲気がある」というコメントが寄せられ、さらにいくつかの文化財の写真が送られてきたという。

狄さんは、「以前から博物館には足を運んでいたが、これらの『目立つ存在』には特に注目していなかった。このファンが熱心に共有してくれた思いと写真が、私に新たな世界への扉を開いてくれた。それらの文化財の誇張された造形や生き生きとした表情に一瞬で心を奪われ、頭の中にはそれらが動くアニメーションのイメージが浮かび、強い創作衝動に駆られた」とした。

そこから狄さんは入念な準備を重ねていった。ネット上で話題の文化財のステッカーやユニークな解説を大量に収集し、「ブレイク」した文化財の視覚的特徴と、人々が共感するポイントを分析。さらに博物館に足を運び、文化財の「表情」を多角的に観察・研究し、年代情報なども記録していった。同時に博物館が提供する公式の文化財写真や記事を参考に、文化財の機能を理解することで、面白さを保ちつつも、その文化財本来の性質から逸脱しないように配慮したという。

狄さんのアニメはこの1年間、月に約1回のペースで作品を発表することで、すぐに高い人気を獲得し、ネットユーザーたちはコメント欄で冗談を交わしながら、自分たちが見つけた面白い文化財を共有し合っている。彼の作品は海外のSNSにも転載され、いくつかの博物館からもコラボレーションの依頼が来ているという。

狄さんは、「私は人々が思わず笑みを浮かべるような面白さを追求している。私たちの伝統文化は海外に伝わる過程で、一部抜け落ちていたり、誤解が生じたりしているため、それが私により一層、作品を通じて世界に直接『中国の可愛らしさ』を感じてもらいたいという思いを抱かせている。小さなアニメの一つ一つが、世界と中国の優れた伝統文化をつなぐ架け橋になれると願いたい。これが私の今後の目標だ」と語った。(編集SC)

「人民網日本語版」2025年6月9日

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