中国、AI基盤モデルのスマホ搭載が加速 事業展開を競うメーカー
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中国では複数の携帯電話メーカーがスマートフォンへの人工知能(AI)による基盤モデルの搭載を進めたり、AIスマホを発表したりしている。このほど取材に答えた複数の専門家が、「AI基盤モデルのスマホへの搭載の道筋がよりはっきりしてきたが、難点もいくつかある」との見方を示した。
AI基盤モデルはこれからのスマホメーカーの競争における重要な手段になる。最近は、華為(ファーウェイ)、vivo、OPPO、小米(シャオミ)などのメーカーが基盤モデルを搭載したスマホ端末を発売し、中国のトップレベルスマホメーカーがすべてAI基盤モデルの事業展開の競争に乗り出したことになった。
OPPOは先週に行われたOPPO開発者大会(ODC)で、基本ソフト(OS)「ColorOS」の次世代バージョン「ColorOS14」を正式にリリースし、初めて基盤モデル「Andes GPT(アンデスGPT)」をスマホに搭載した。このモデルにはパラメータ10億-1000億の複数のモデルが含まれ、バージョンアップ後はアシスタント「小布助手(Breeno)」が基盤モデルの能力を備えるようになるという。
vivoは10月に独自開発のAI基盤モデルのマトリックスを発表した。それには10億、100億、1000億と異なるクラスのパラメータの5種類の独自開発基盤モデルが含まれ、中心的な応用シーンをもれなくカバーした。また11月に初のAI基盤モデル搭載スマホ「X100」も発表した。これは業界初の100億パラメータ級基盤モデルを端末上で利用できるスマホだ。
小米集団の雷軍董事長は、「小米はAI基盤モデルに取り組んでいる。現在、スマホ端末側の基盤モデルはほぼ使えるようになった」と明らかにした。ファーウェイは、スマホのシステムがマルチモーダル基盤モデル「盤古Chat」に接続するようになり、搭載される基盤モデルの音声アシスタント「小芸」がクラウドテスティングを開始したことを明らかにした。栄耀(HONOR)は、まもなく独自開発の70億パラメータ級端末側AI基盤モデルと新たなクラウドサービスを打ち出すとしている。
北京博瑞恒潤科技諮詢有限公司の張揚コンサルティングディレクターは、「現時点でスマホ端末でのAI基盤モデル応用は画像識別、音声識別、自然言語処理などの分野に主に集中しており、消費者により正確な言語識別、よりインテリジェントな情報提示、よりスムーズな音声のやりとり、よりスピーディな反応速度といった体験を提供することが可能だ」と述べた。
OPPOデジタルインテリジェントプロジェクト事業部の劉海鋒総裁は、「生成AI技術に支えられて、スマホはより正確にユーザーの意図を理解したり感情を読み取ったりするようになる」と述べた。
スマホへのAI基盤モデル搭載は、技術的には計算力を提供する半導体、放熱、電池などの影響を受ける。シンクタンクである賽迪智庫の未来産業研究センターAI研究室の鍾新龍主任は、「最近はソフトウェア・ハードウェアの技術が高度化して、AI基盤モデルをスマホに深いレベルで搭載するための道筋が徐々に明らかになっている」と述べた。
たとえば10月26日に発表されたばかりのクアルコムの新モバイル半導体「スナップドラゴン8Gen3」は、オフラインの端末でパラメータ数100億の基盤モデルを操作できることが目玉の1つだ。メディアテックが今月発表したスマホ向け新プロセッサー「天璣(Dimensity)8300」は、100億級 AI基盤モデルに対応し、より快適なゲーム・音響・映像、マルチメディア娯楽体験を提供することができる。また専用のAI半導体とハードウェアアクセラレータにより、モデル操作の効率と速度が著しく向上できる。
実際、スマホメーカーとソフト開発会社は非常に複雑な方法を用いてAI基盤モデルのスマホへの搭載を実現させる必要がある。鍾主任は、「端末とクラウドの結合はスマホでの基盤モデル応用を実現する時によく用いられる方法だ。計算の仕事をクラウドのサーバーに振り分け、スマホはその場で一部の簡単な計算を処理し、より複雑な計算はクラウドに任せる。これは小規模の最適されたモデルまたはハードウェアの加速によって実現することができる」と述べた。
またモデルの圧縮と最適化、たとえば知識蒸留、枝刈り、量子化などの手段によって基盤モデルを最適化することで、パラメータ数と計算力に対する要求を引き下げ、計算力に限界があるスマホでの操作が可能になる。
AI基盤モデルをスマホに搭載する場合、自動車やパソコンに搭載する場合と異なり、より多くの課題に直面することになる。張氏は、「スマホの連続使用時間を保証することを前提として、基盤モデル操作の効果あるいは能力を保証するにはどうすればいいか。ユーザーのデータの安全性とプライバシーをどうやって保証するか。こうしたことすべてが挑戦だ」と述べた。
また張氏は、「現在、スマホ端末でのAI基盤モデル応用シーンには限界があり、これから十分な市場ニーズがあってこの技術の普及応用を下支えするかどうか、しばらく様子を見る必要がある」と述べた。
vivoの周囲副総裁は、「スマホメーカーが基盤モデルを手がけるにはデータ、アルゴリズム、計算力と3つの難点が存在する。特に計算力の分野では、計算力大型クラスターの建設それ自体が挑戦だと言える。vivoのここ数年間のAI関連投資はすでに200億元(1元は約20.9円)を超えた」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年11月27日
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