苫船のような海南省黎族の伝統的な古民家「船型屋」
海南省東方市江辺郷の白査村は、苫船に似ていることから「船型屋」と呼ばれる黎(リー)族の伝統的な古民家がほぼ完全な状態で今も保存されている中国で唯一の古い村落だ。熱帯雨林の広がるこの地で、村民を千年にわたって守って来たこの村は、海南省の黎族にとって、ノスタルジックなムードが色濃く、祖先が残してきた生きた証を探す場所となっているほか、黎族が継承する文化を観光客が体験できる人気観光スポットにもなっている。新華社が報じた。
海南省東方市江辺郷白査村に建ち並ぶ伝統的な古民家「船型屋」(12月5日、ドローンによる撮影・蒲暁旭)。
黎族の人口は現在、約150万人となっている。黎族の「船型屋」については、宋(960-1279年)の時代の文献に早くもその記載がある。山地の熱帯雨林で暮らしていた古代の黎族は、木材や竹、籐のつるといった熱帯雨林によく見られる材料を使って、家の骨組みを作り、茅を屋根に葺いた。その茅は、地面すれすれまで伸び、それが壁替わりにもなり、断熱効果のほか、湿気防止にも一役買っている。熱帯雨林での生活に適している「船型屋」には、海の島にある熱帯雨林で暮らしてきた黎族の「生きるために知恵」が詰まっている。
白査観光サービスセンターの職員・周浩さんによると、白査村は、海南島で「船型屋」の保存数が最も多く、保存状態が最も優れた黎族の集落で、黎族伝統の集落がそのまま残されている。そこには、茅葺屋根の「船型屋」が81軒、納屋が6棟残っているほか、「隆閨」と呼ばれる黎族の若者が集まる建物もある。
海南省東方市江辺郷白査村で「船型屋」を見学する観光客(12月6日、撮影・蒲暁旭)。
2008年、「黎族の船型屋建築技術」は、第2陣の中国国家級無形文化遺産保護リストに組み込まれた。そして、黎族に残された最後の「船型屋」は、黎族の歴史文化の遺物として保存されるようになった。また、2009年、政府は資金を投じて白査新村を建設し、村民は、壁がレンガ、屋根は瓦の住居に引っ越して暮らすようになり、白査村全体が保存されるようになった。
時代が移り変わったとしても、黎族の「船型屋」建築技術が受け継がれ続けるようにするため、海南省と東方市政府は、その技術を伝えるトレーニングクラスを何度も企画し、これまでに、白査村の10人がその技術伝承人に認定されてきた。そして、白査村の符打因さん(30)は今年、最も若い伝承人となった。
海南省東方市江辺郷白査新村(12月7日、ドローンによる撮影・蒲暁旭)。
新村に引っ越した符打因さん一家は、マンゴーやビンロウを栽培するほか、黄花梨と呼ばれる木材を使った工芸品ショップを経営し、年収は10万元(1元は約20.2円)以上に達している。さらに、符打因さんは時間を見つけては、「船型屋」の保護活動に力を注ぎ、黎族の文化を発信している。
そんな符打因さんは最近、海南師範大学の教壇にも立って、学生たちに「船型屋」建築技術や黎族の生活習慣を紹介した。
海南省東方市江辺郷白査新村の入口(12月7日、撮影・蒲暁旭)。
符打因さんは、「以前生活していた『船型屋』が今は保護されるようになった。それは、黎族の伝統文化や技術が私たちの世代で消失してしまうことがないようにするためだ」と語る。
「海南熱帯多雨林・黎族伝統集落」は国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界複合遺産(文化遺産と自然遺産)に推薦される予定となっており、既に「暫定リスト」に組み込まれている。そのため、白査村の注目度がさらに高まっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年12月29日
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