「ADHDになっちゃった」が口癖の中国の若者 「ADHD」とは?

人民網日本語版 2024年01月23日10:33

中国のメディアやソーシャルメディアで最近、「ADHD」という言葉をよく見かける。「ADHD」とは、「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略語で、日本語では「注意欠如・多動症」と呼ばれる神経発達症(発達障害)の一種。患者の集中力や記憶、決定能力などに影響を与え、集中力にかけたり、落ち着きがなかったり、衝動的に行動したり、感情的問題を抱えたりする。中国青年報が報じた。

中国青年報・中青在線の微信(WeChat)公式アカウント「中青校媒」は最近、中国全土の大学生を対象に、話題となっている「集中力」に関するアンケートを実施し、3634人から有効回答を得た。調査では、回答者の約9割が「集中力に欠けることがある」と答えた。うち29.44%が「よくある」、34.23%が「時々ある」と答えた。

また回答者の89.40%が「集中力を高めたい」と答えた。しかし、集中力に欠けるからといって、全てのケースが深刻な問題となっているわけではない。自分の集中力不足について、回答者の11.36%は「困ってはいない」、54.43%が「少し困っている」、24.60%が「比較的困っている」と答え、「とても困っている」との回答は9.60%にとどまった。

断片化した情報、環境の刺激、疲れなども集中力に影響

中青校媒の調査によると、回答者は集中力に欠ける原因について、「断片的な情報が多すぎて、深みのあるコンテンツを集中して見ることができない」(65.88%)や、「各種情報に流される」(62.63%)、「やる事が多すぎて落ち着かない」(47.94%)と答えた。「ADHDと診断された」との回答も2.50%あった。

西南大学心理学部の馮廷勇副部長によると、一部の若者には、集中力に欠ける、注意力散漫、先送り、衝動的という状況がみられる。それには2つの原因があり、1つは病気で、もう一つは一般的な意味での集中力不足だ。「実際には、集中力に欠けるというのは、誰にでも多少なりともあり、その原因もいろいろだ。例えば、心身が疲れていたり、仕事のストレスが大きかったり、全部のことをできない時に先送りしたりなどだ。また誰でも環境の影響を受けることは避けられない。外部の誘惑や刺激があると、注意力が散漫になりがちだ。さらにショート動画をしょっちゅう見ることもまた、子供の集中力をますます落とす原因だ」としている。

ただ、馮副部長は、「この種の集中力不足は、病気の『ADHD』とは本質的に異なる。『ADHD』患者の場合、その集中力は病気による多大な影響を受けているほか、感情をコントロールする能力も低く、仕事に関する記憶に深刻な影響が出て、日常的な生活や仕事、結婚生活などにおいて、極めて多くの問題を抱えている」と強調する。

「ADHD」という病名が多くの人に知られるにつれて、「気が散る」時に、「ADHDになっちゃった」とい言うのが口癖となっている学生も多い。以前、「心が傷付いた」時に、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という病名を使うのが流行したのと似ている。

馮副部長は、「社会の多くの人が『ADHD』に注目するということには、一定の程度においては良い影響でもあると言える。それにより、社会全体がADHDのことをより理解し、客観的に関連する知識を広めることにつながるからだ。また自分の集中力不足を専門的に評価し、治療を行う必要があるかについては、社会生活機能が目に見えて影響を受けているかを見て判断したほうが良い。もし、症状が勉学や仕事、結婚生活、生活の質などに明らかに影響を与えているような場合は、専門機関に相談し、治療を行うべきかを判断してもらうのが良い」との見方を示す。

ただ、「ADHDの注目度は上がっているものの、一部の人はADHDを自分に当てはめ、自嘲することで、ストレスを解消している。『ADHD』と診断されたわけでもないのに『ADHDになった』と自嘲することで、自分の集中力不足や先送り、メンタルコントロール能力の低さの言い訳にしているだけだ。そしてそれが一部の人にとってのストレス解消法になっている。そのため、こうした使い方を非難する必要は無い。しばらくすればブームも過ぎ、この言葉が使われることも少なくなっていくだろう」との見方も示している。(編集KN)

「人民網日本語版」2024年1月23日

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