中国の科学者、高励起状態の分子の「ローミング過程」のルートを発見

人民網日本語版 2024年02月18日16:24

化学反応においては、分子や原子が「エネルギー障壁」という「山」を越えることで、新物質が生成される。しかし、一部の分子は、山を越えるのではなく、山道をふらふらとさまよいながら下りるような「回り道」のルートを通ることで、新物質を生成する。そのような特殊な現象は「ローミング過程」と呼ばれている。中国科学院大連化学物理研究所はこのほど、大連コヒーレント光源を利用して、高励起状態の分子の「ローミング過程」のルートを発見。これは、「ローミング過程」のメカニズムは化学反応において普遍的であることを物語るもので、化学反応を理解・予測する新たな視点が提供されることとなった。これに関連する研究成果は学術誌「サイエンス」に掲載された。人民網が伝えた。

21世紀初めに発見された「ローミング過程」だが、科学界のメカニズムの解析は、分子の低電子状態と基底状態に留まっていた。世界で唯一稼働する極端紫外線の自由電子レーザー装置としての「大連コヒーレント光源」は、波長をチューニングしながら非常に明るい極端紫外線を出力することで、どんな分子でもエネルギー的に特定の高さの状態に励起させることができる。

中国科学院大連化学物理研究所の袁開軍研究員は、「大連コヒーレント光源は、高励起状態の分子の反応のメカニズムを研究する扉を開いたと言うことができる。私が所属する科学研究チームは、高励起状態の二酸化硫黄の分子を作り出し、一重項酸素の量子状態の分布を探った後、理論的計算を通して、実験所で観測した現象を正確に再現することに成功した。実験結果と理論が一致したことは、高励起状態の『ローミング過程』ルートが存在していることを裏付けており、化学反応において『ローミング過程』は普遍的に存在していること物語っている」と説明する。

中国科学院の院士である楊学明氏は、「この研究を通して、化学反応の理論に関する新しい認識が生まれた。これまでの理論では説明できなかった多くの現象を、『ローミング過程』のメカニズムを使って説明できるようになる可能性がある。それにより、化学反応の本質に対する理解が一層進むだろう」との見方を示す。(編集KN)

「人民網日本語版」2024年2月18日

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