科学技術の力で動く中国の人工心臓
話すだけで息切れする状態から正常に働けるようになるまで、李晶さん(45)はこの数年で人生の激変を経験した。彼を谷底に突き落としたのは心不全で、健常者としての生活を取り戻させたのは国産人工心臓「ロケットハート」だった。
泰達国際心血管病病院は2009年より中国キャリアロケット技術研究院と協力し、宇宙技術と医学技術を結びつけるよう研究開発を強化した。その後、中国キャリアロケット技術研究院傘下の北京精密電気機械制御設備研究所、天津経済技術開発区国有資産経営公司、長征ロケット工業有限公司が共同出資し、航天泰心科技有限公司を設立し、心室補助装置の研究開発に専念してきた。その製品は「ロケットハート」と呼ばれる。
「ロケットハート」の流体設計が複雑で、期間が長く、コストが高いため、数値シミュレーション技術により臨床上の需要を満たす技術プランを選ぶことが特に重要となる。
国家スパコン天津センターが速やかに加入し、心血管結合システムの血流力学モデルを構築し、「天河データシミュレーションクラウドプラットフォーム」を利用し心室補助装置のデジタル化設計とマルチ作動条件の実験・検証を行い、血液ポンプの性能を極めて大きく高めた。同プラットフォームはさらに新製品の研究開発・世代交代及び生産を加速させ、新製品の開発期間を30%短縮した。
「ロケットハート」(埋め込み型左心室補助システムHeartCon)は2018年に国家薬品監督管理局から承認され、革新医療機器特別審査承認手続きに入った。中国で初めて同局の規定に完全に従い50件の臨床試験に成功した上、当時中国で埋め込み回数が最多の純国産人工心臓として、22年7月に販売の許可を得た。
李さんは19年3月に中国全土初の「ロケットハート」の移植患者となった。「長年病気に苦しんだが、ついに思う存分呼吸できるようになった」と興奮気味に語った。
李さんが移植した「ロケットハート」の材質はチタン合金で、心臓に「ポンプ」をつけるようなもので、衰弱した心臓の血液の送り出しをサポートし、脳、腎臓、肝臓などの重要器官への血液供給を保証することで、患者自身の心臓を「休ませる」ことができる。
天津泰達国際心血管病病院の劉暁程院長は、「磁性流体浮上の設計には機械の摩損がなく、理論的には数十年使用できる。大量の手術の成功と術後の血液ポンプの正常な作動は、中国の心室補助装置の研究開発技術と性能がすでに世界の同類の水準に達したことを証明した」と述べた。
「ロケットハート」は24年4月まで150人以上の患者を救った。還暦を過ぎた高齢者から10代の子供まで、科学技術の力を借りて新しい人生を手に入れた。
「ロケットハート」をはじめとするハイテク製品が現在、天津経済技術開発区で次々と誕生している。1984年に設立された同区は、中国第1弾・14の国家レベル経済技術開発区の一つだ。40年の発展を経て、ここは中国で経済規模が大きい、輸出志向が高く、総合的な投資環境が優れた国家レベル開発区になった。(編集YF)
「人民網日本語版」2024年5月15日
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