中国の無形文化遺産技術の数々をマスターした女性が目指す「伝える人」
個人メディアのクリエイター・九月さん(別名「江尋千」)は、溶解した鉄を木の板を使って空に打ち上げるパフォーマンス「打鉄花」を披露したり、大きな竜の氷彫刻を作成したり、広東省の軽快なリズムを刻む打楽器の音に合わせた伝統舞踊「英歌舞」を踊ったりして、話題をさらってきた。最近では「英歌舞」が大きな話題となり、以前は竜の氷彫刻、「打鉄花」、苗(ミャオ)族の銀細工、巨大な竜の頭の凧の作成が注目を集め、さらに、糖画(飴細工)といった各種伝統グルメを披露するほか、敦煌の壁画に描かれている天女の「飛天」や京劇の女形「花旦」のパフォーマンス、美しい人魚などに「七変化」する九月さんの動画の内容は、まさに多種多様だ。中央テレビニュースが報じた。
九月さん率いるチームのメンバーは、「彼女の前でしんどいなんてとても口にできない」とし、無形文化遺産の師匠たちも「苦労をまったく厭わない女性」と一目置いているほどだ。文化志向のクリエイターになった理由について、九月さんは、「やりたいと思ったことをやろうと思っただけで、それが無形文化遺産かどうかは関係なかった。ただ子供の頃はよく目にしたのに、大人になってからは見なくなってしまったものがある」とする。子供の頃、祖父と一緒に「京劇」を鑑賞しにいったことがあり、「京劇」を学んで祖父に「披露」したいと考え、京劇を学んだこともあったという。
そして無形文化遺産の師匠と交流していく中で、九月さんは彼らの、「1つのことを極める」職人の執念と精神に感動させられたという。「無形文化遺産の師匠たちは、一生かけて1つのことを極めている。そして一生を通じて1つのことをやり続けている」と話す九月さんは、「自分はとても浮ついており、あれもこれも学んでいる」としながらも、「なにかの技術の継承者ではなく、それを伝える人というのが私の役割」と自分のポジションを見つけ、やりがいを感じているという。「もし動画で紹介している技術を私がマスターできていないと疑いを抱く人がいた場合は、ライブ配信で私が学び始め、マスターしていく過程を全て見せてもいいと思っている。全てをさらけ出すことを怖いと感じたことなどない」とする。そして実際、今年初めに、竜の氷彫刻の制作に疑いの目が向けられた時、九月さんはチームに全てを公開するように指示したという。「同じ作業を繰り返さなければならない場合もあり、効率を高めるために、誰かが手伝ってくれることはある。だからといって、他の人の作品を自分の作品として撮影している訳ではない」と九月さん。
九月さんは一つのスキルを学ぶために、どんなに遠く、苦労が伴うとしても、師匠の所に足を運んでいる。ベストショットを撮影するために、朝夜問わず忙しく駆け回っている。九月さんについて、チームのメンバーは、「体力が無限にあるようだ」と話す。しかし、彼女自身は、「半年学んでも、生かじりのスキルもある。時間が本当に足りないし、自分の一人の力では足りない」と感じている。伝統文化やその技術を伝える人という使命を感じている九月さんは、「非常に高齢の無形文化遺産の継承者もおり、撮影が間に合わない可能性がある技術もある」と、焦りさえ感じている。例えば、広東省東莞市の伝統美術・千角灯を制作していた時、70代後半の師匠・張樹祺さんは手術を受けることになり、中止となってしまった。九月さんは、「チームが制作する文化がテーマの映像を通して、あまり知られていない素晴らしい伝統技術に再びスポットライトを当て、有名人の影響力で商品販売を促すように、無形文化遺産の技術の人気の火付け役となれたら、それほどうれしいことはない。そのようにできれば、その業界に従事している職人ももっと豊かな生活を送ることができるだろうから」と語る。
九月さんの動画を見て、多くのネットユーザーは、彼女は「オールラウンダー」だと感じている。しかし、ネット上にアップされることはない動画には、技術を学ぶ時に、幾度となく失敗を重ねる九月さんの姿が映っている。九月さんは、「いつも失敗ばかり。でも、ネットユーザーに、大変な姿はあまり見せたくない。私の動画を通じて、より多くの人にあこがれ、一緒にそれをしてもらいたいから。伝承というのは、一人ですることではなく、たくさんの人ですることだから」と語った。 (編集KN)
「人民網日本語版」2024年11月26日
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