5年間で約1333ヘクタール増えた海南省の「海の森」
海南島の海岸線には、「海の森」と呼ばれるマングローブが青々と茂る森がある。それは、回復した生態系からの「緑のラブレター」のようで、見る者に自然の大切さを語りかけている。新華社が報じた。
マングローブ林と都市がコラボレーションしている海南陵水マングローブ林国家湿地公園(撮影・蒲暁旭)。
潮間帯に茂るマングローブは、中国が重点的に保護している希少植物だ。中国において、海南省はマングローブの主な分布地で、中国の3分の一のマングローブがここに生育している。1980年代前後、海南省は海面養殖による増収を奨励したことで、いけすやいかだが激増した影響で、マングローブ林と湿地が次第に減少していった。
当時を知る高齢の村民によると、マングローブ林の減少で、微気候が変化しやすくなり、海岸侵食が生じ、天然の貝類やエビ、水鳥が減少の一途をたどるようになった。経済は発展し始めても、生態系が破壊されてしまったら、後世はどうなってしまうのだろうか?マングローブ林の保護は、生態環境問題に対する社会の覚醒と言える。海南省は近年、マングローブ林の保護・回復を目指す特別措置を全面的に講じている。
海南省儋州市で、人工的に栽培されているマングローブが育ち、回復し始めた湿地(撮影・蒲暁旭)。
儋州市自然資源・計画局営林科の責任者である邢鋭氏は、「いけすやいかだを撤去し、マングローブ林を回復させるというのは、至難の業だ。各世帯を一軒一軒訪問し、一定規模で養殖を認めるエリアと、養殖を禁止するエリアを定め、法律法規に違反したいけすやいかだを全て撤去したりするのに、1年以上を要した。そして、囲い堰を作り、水の自然循環を回復させ、有害な外来種や海洋ゴミを除去した。全ての準備を整えた後、夜に干潮になって、水位が最も低くなった時に、懐中電灯を使いながら、苦労してマングローブの苗を植えていった」と振り返る。
海沿いの土壤の塩分濃度は複雑で、頻繁に潮が満ち引きするため、マングローブの活着率は低かった。そこで、三亜鉄炉港などでは、科学研究者がボランティアと共に、「挿し木法」を編み出した。マングローブ林保護ボランティアの楊運さんは、「胚軸を箸のように泥土に挿すと、3時間以内に根が出るため、潮が満ちるまでに根付く」と説明する。
海南東寨港国家級自然保護区で羽を休めるサギ(撮影・楊冠宇)。
その土地の状況に合わせた回復の取り組みが行われ、多くの成功例が生まれた。例えば、海口東寨港の潮の満ち引きによる浸食が深刻な場所では、牡蠣の殻を積み上げて「消波ブロック」にし、河口の土砂を除去して、両岸に積み上げ、低い浜辺で造林を実施した。陵水新村のラグーンでは、島の在来種の苗をメインとし、他の地域の品種をサブとして植えることで、マングローブ林の立体感と自然な美しさを高めた。儋州市の新英湾では、湿地である元々の地形に合わせて溝を残し、どんな潮位でも、生息する動物が餌を食べたり、植物が生長したりしやすい環境を作った。
マングローブ林を育てる過程で、海南の多くの地域が、「宇宙・空・地上」を一体化したスマートモニタリング体系を構築し、衛星・リモートセンシングとドローンによるパトロールと、地上のセンサーなどを使って、マングローブ林の面積、生育状況、及び外来種の侵入状況をリアルタイムで監視している。
海南新盈マングローブ林国家湿地公園で、のんびりと餌を食べる渡り鳥(撮影・張麗芸)。
海面養殖が行われ、分断されていた湿地で、新たに植えられたマングローブがすくすくと育ち、ヘラシギやクロツラヘラサギといった絶滅危惧種の鳥も再び姿を現すようになり、「大自然にできた傷跡」が「緑の肺」へと華麗なる変身を遂げていった。ここ5年、海南省で新たに増えたマングローブ林の面積は約1333ヘクタールで、「海の森」が復活しつつある。
多くの人が懸念していた生態系保全による「負担」も今では、少しずつ「資産」に変わってきている。例えば、2022年、海南省初のブルーカーボン生態系産品取引プロジェクト「海口市三江農場マングローブ林回復プロジェクト」の調印が完了し、取引されたカーボンシンク量は約3000トン、取引額は30万元以上(1元は約20.7円)に達した。儋州市の新英湾では、マングローブ林を活用して、「豊かな自然は金銀同様の価値がある」という理念を実行するアプローチを模索し、「湿地にやさしい」観光の発展を目指している。バードウォッチング探究型学習、自然の撮影などを通して、村民は自然を破壊しながら収入を増やすパターンから、自然を守りながら収入を増やすパターンへと舵を切り、エコツーリズムによる収入が年々増加している。
儋州湾湿地でクロツラヘラサギを撮影する愛鳥家(撮影・蒲暁旭)。
マングローブ林保護は、ゴールのない長距離走だ。3月初めに発表された「海南省マングローブ林資源保護特別計画(2024—35年)」は、マングローブ林資源の範囲を沿海の12市・県に拡大する計画を掲げており、2035年をめどに、海南省のマングローブ林の面積が安定して7948ヘクタール以上をキープするようにしたい考えだ。
マングローブが青々と茂る海南東寨港国家級自然保護区(撮影・蒲暁旭)。
邢氏は、「マングローブが風に揺れ、鳥の群れが飛び交うというのが、『海の森』の本来の姿。マングローブ林の保護者がどんどん増えることを願っている」とした。 (編集KN)
「人民網日本語版」2025年3月27日
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