木の傷から生まれる貴重な香料 広東省東莞市

人民網日本語版 2025年05月28日10:24

莞香の成長について紹介する国家無形文化遺産「莞香製作技術」の代表的伝承者・黄欧さん(写真左、5月26日に撮影・王雅蝶)。

莞香の成長について紹介する国家無形文化遺産「莞香製作技術」の代表的伝承者・黄欧さん(写真左、5月26日に撮影・王雅蝶)。

広東省東莞市大嶺山にある莞香非遺保護園では、何百年もの時を経た沈香の木が静かにそびえ立ち、樹皮に刻まれた「香門」が時を刻む痕跡となっている。莞香は、沈香の木が傷ついた後に分泌される樹脂が形成する貴重な香料で、「香りが清々しく遠くまで届き、薬用価値が格段に高い」ことから「嶺南の至宝」とされている。人民網が伝えた。

莞香無形文化遺産保護園の担当者によると、東莞市は亜熱帯季節風気候帯に属し、気温が温かく湿度も高いことや、丘陵地帯の弱酸性土壌と独特な菌群環境が、沈香の木が香りを結ぶための天然の「培養基」を提供している。「香りを結ぶことは、木と時間の対話だ」と国家無形文化遺産「莞香製作技術」の代表的継承者である黄欧さんは包丁を持ち、樹皮に軽く傷をつけて「香門を開ける」技術を実演した。この千年にわたって受け継がれる技術では、木質部を避け、数年間にわたって樹木と真菌が「相互作用」するように刺激する必要があり、そうすることで香りを完成させることができる。

広東省東莞市の莞香無形文化遺産保護園で見学できる、沈香の木が傷ついた後に真菌が侵入して寄生し、香りの脂質結晶体が凝縮・沈殿している様子(撮影・蔡睿智)。

広東省東莞市の莞香無形文化遺産保護園で見学できる、沈香の木が傷ついた後に真菌が侵入して寄生し、香りの脂質結晶体が凝縮・沈殿している様子(撮影・蔡睿智)。

現在、古籍に記されていた莞香は人々の暮らしにもとけ込むようになっている。大嶺山の「莞香タウン」では年間生産量3トンを超える莞香がエッセンシャルオイルやスキンケア製品になり、消費者に手の届く商品になっている。また、香道の講座や香り採取体験は若者の人気を集め、中国伝統衣装の漢服と古式ゆかしい香りが新しい潮流を生み出している。千年にわたり漂ってきたこの香りが、今や革新的な姿で嶺南の地に香道の伝統を受け継ぎつつ、新たな歴史を刻み続けている。(編集KW)

香りを整える過程を披露している黄欧さん(撮影・王雅蝶)。

香りを整える過程を披露している黄欧さん(撮影・王雅蝶)。

東莞市にある中国(寮歩)沈香文化博物館で、香道の実演を行う香道師(撮影・寧玉瑛)。

東莞市にある中国(寮歩)沈香文化博物館で、香道の実演を行う香道師(撮影・寧玉瑛)。

中国(寮歩)沈香文化博物館で、蓮花紋様の香篆(撮影・朴馨語)。

中国(寮歩)沈香文化博物館で、蓮花紋様の香篆(撮影・朴馨語)。

「人民網日本語版」2025年5月28日

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