慰安婦問題は韓日関係における「トゲ」であり続けてきた。合意と財団設立によって、双方はこの問題を解決する一歩を踏み出した。だが、歴史の重荷、民間の抗議、領土紛争のために韓日関係は依然脆弱だ。人民日報海外版が伝えた。
■障害を除去
韓国・聯合ニュースによると、日本軍慰安婦被害者を支援するための「和解・癒やし財団」が28日に発足した。日本側が同財団に10億円を拠出。両国は被害者の名誉を回復し、心の傷を癒すための様々な事業を協力して行なう。韓日両国政府が昨年12月28日に慰安婦問題で合意してから、すでに7カ月が経っている。
慰安婦問題の解決は、日韓の「喉に刺さったトゲ」を抜く助けになる。「この歴史的障害の除去によって、日韓間の協力は増えるはずだ。朝鮮核問題で、米韓日の情報共有は拡大するだろう」と、復旦大学国際問題研究院の方秀玉教授は指摘した。
■現実の圧力
合意の背景には、現実の圧力を前にした韓国のやむを得ない選択がある。時間は人を待ってくれない。方教授によると、朴槿恵大統領が慰安婦問題の解決を急いだのは、健在な慰安婦がすでに少なくなっているからだ。慰安婦被害者は高齢で、報道では昨年1年間だけで9人が亡くなった。朴大統領は就任当初「『慰安婦』のおばあさんたちはすでに80代半ばを超えている。彼女たちが生きているうちに恨みを取り除かなければならない。これは私の差し迫った気持ちだ」と表明した。
時間に迫られたやむを得なさ以外に、韓日による慰安婦問題の解決には国益上の考慮もある。方教授は「朴政権は朝鮮核問題で多少の突破口を開くことを望んでいるが、非常に難しい。韓国は安全保障問題で米日を必要としている。したがって、韓国は日本との緩和を図る必要がある。もし慰安婦問題でさえ解決できないのなら、国内の圧力が強くなる」と指摘した。
米国も韓日緩和によって、アジア太平洋地域で同盟の力を強化することを望んでいる。方教授は「米国は韓日関係の発展が困難なのは、歴史問題が障害になっているからだと考えている。このため仲裁に入り、歴史問題を解決し、同盟国の体制下で米日韓協力を促進することを望んでいる。慰安婦は第一歩だ。慰安婦問題をうまく解決してはじめて、他の問題もうまく解決できる」と指摘した。
■解消しがたいもめごと
韓日は困難な交渉を経てついに合意にいたったが、双方がこれで歴史の重荷を完全に下ろして大きく前進できるというわけではない。実は韓国の民衆は合意に満足していない。
中央日報が韓国の成人1000人を対象に実施したアンケート調査では、政府による慰安婦交渉の結果を「不満」とした回答者は53.7%で、「満足」(35.6%)とした回答者を大きく上回った。
韓国のニュースサイト「News1」の25日の報道によると、「ナヌムの家」の安信権所長は記者会見で「日本政府の公式謝罪及び法的賠償を明確に含まない韓日慰安婦合意は無効であり、これに基づき設立される財団も不法だ」と述べた。同日記者会見に参加した元慰安婦3人も、自分たちは金のためではないとして、真摯に謝罪し、法的賠償を行なうことを日本政府に要求した。
「表面上、日韓間の慰安婦問題は解決した。だが、今後国内で後遺症は大きい」と方教授は指摘した。
この他、韓日間では領有権紛争が依然敏感だ。竹島(韓国名:独島)問題をめぐり、日韓は共に領有権を主張している。方教授は「領有権問題は韓日関係における中心的問題だ。敏感な領有権問題に関わるたびに、歴史問題がくすぶり始める。慰安婦問題は外交問題で合意に達したが、歴史問題解決に向けた小さな1歩に過ぎない。領土紛争が激化すれば、両国関係は依然として容易に決裂する」との考えを示した。(編集NA)
「人民網日本語版」2016年7月29日
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