中国で「野生のパンダ遭遇」が頻繁に起きているワケは?
中国国家林業・草原局の関志鴎局長はこのほど、第一陣の国家公園建設の成果について説明した際、「パンダ国家公園では、体制革新と資源集約を進めて、パンダ国家保護研究センターを設立したことで、70%以上の野生のパンダを保護し、パンダの生息地13ヶ所においてパンダが行き来できるルートを作りあげてきた」と語った。新華社が報じた。
パンダの活動の痕跡を見つけて、的確な場所でエサを補給でできるよう、当時のパンダ野外生態観測地点「五一棚」の責任者と一緒にパンダの糞をチェックする胡錦矗氏(左)。撮影・金勖琪
1978年、ジャイアントパンダ研究の第一人者で「中国のジャイアントパンダの父」として知られる胡錦矗氏は、四川省の卧竜に、世界初のパンダ野外生態観測地点「五一棚」を設置した。そして、そのバトンを受け継いだ各世代のパンダ研究者のたゆまない努力が実り、2013年末の時点で、野生環境に生息するパンダの個体数は1864頭まで増えた。
しかし、野外調査によると、広大なパンダの生息地が人間の活動によって分断され、孤島のように分離されてしまったため、野生環境に生息するパンダの間の交流が遮断され、33の下位個体群に分かれてしまっていた。うち24下位個体群が絶滅の危機に瀕していた。
5月15日、パンダ国家公園滎経区域で、赤外線カメラに映るパンダをチェックする科学研究検査責任者。撮影・胥氷潔
2021年10月12日、四川省、陝西省、甘粛省の3省に跨る総面積約2万7000平方キロのパンダ国家公園が正式に設立された。公園内に設置されている赤外線カメラ監視システムや自然保護地ネットワークは、野生のパンダが交流などで移動する「パンダ回廊帯」の設置をデータの面から効果的に支えている。現時点で、公園内には「パンダ回廊帯」9本、野生動物ルート7ヶ所が形成されており、128.5平方キロで植生が回復し、分断されていたパンダの下位個体群が交流できる環境が整えられた。
3月3日、パンダ国家公園の職員が発見した野生のパンダ2頭(ドローンで撮影、画像はパンダ国家公園唐家河区域が提供)
中国では近年、「村民が夜中に山を下りて来たパンダに遭遇」や「観光客が木に登る野生のパンダに遭遇」、「野生のパンダが村民の庭に」といったニュースが度々、ネット上の検索トレンド入りしている。
パンダ国家公園管理局の関係責任者は、「一部の地域のパンダを対象に展開したDNA解析による個体識別では、区域内の個体数が増加しているほか、個体拡散が促進されているため、野生のパンダ活動範囲も拡大していることが分かった。それが、パンダ遭遇率が高まっている重要な要素だ」と説明する。
パンダ国家公園を設立するため、四川省はエリア内の多数の鉱業権を放棄し、小さな水力発電所100ヶ所以上を廃止し、公園の中心エリアに住んでいた住民が秩序に基づいて移住した。北京大学生命科学学院の李晟研究員は、「断片化した生息地を一つにする国家公園を設立することによって行われたパンダ保護は、野生動物の保護という面で、世界でも有数の成功例となっている。中国の生態系保全や生物多様性保全の成果を表すものだ」との見方を示している。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年8月2日
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