晋公盤(山西博物院所蔵)
古代の君主は娘の嫁入り道具に金銀宝石や美しい絹織物のほかに、どんなものを準備したのだろうか?今回紹介する「晋公盤」は、「春秋五覇」の1人である晋の文公が愛娘のために特別に作らせた嫁入り道具だ。
青銅製の晋公盤は洗面器のような道具で、「匜(イ)」と呼ばれる水差しとセットで使用される。匜で水を注ぎ、盤に水を張り、手を差し入れて洗う。晋公盤は中央部分にとぐろを巻く2匹の竜が精緻な浮き彫りでデザインされているほか、鳥や亀、魚、カエルなどさまざま動物の飾りがちりばめられている。なによりユニークなのは、これら19個ある動物の飾りはすべて360度回転させることができる点だ。水を流し込むと、盤上の動物たちは命を吹き込まれたように、水鳥は嘴を開けたり閉じたりし、亀は頭を出したり引っ込めたりし、魚は見えつ隠れつしながら泳いでいるように、カエルは追いかけっこをしているように見え、鳥のさえずりがいつまでも響き渡るように感じる。愛娘がまだ幼かった頃、一緒に池の畔で楽しく遊んだ、そんな美しい思い出の一瞬を再現したような作品となっている。
2600年も昔に作られた晋公盤は、現代のおもちゃと比較しても引けを取らないほどの精巧さだ。では晋国の職人達はどうやってこれを作ったのだろうか。専門家がX線-CT(コンピュータ断層撮影)技術を使って、その鋳造の秘密を明らかにした。
晋公盤は別々に鋳造したパーツをつなぎ合わせる方法で作られており、持ち手の「附耳」、人の形をした3本の脚、動物の飾り、盤本体がすべて別々に鋳造されている。最も精緻な作りとなっているのは動物の飾りで、すべて内部に支柱が隠されている。鋳造した際に、まずはこれらの支柱を作り、支柱の上部先端に丸いパーツを取り付け、そこに銅製の動物の形をした一対の外枠をはめる。このような構造で、動物が360度回転することを可能にしている。
精巧でかわいらしい晋公盤は、2600年も昔の職人の技術を現代まで伝えているだけでなく、春秋時代の晋国の総合的な国力の強大さも示している。そしてこれはまた、青銅文明の証人であり、青銅文化を継承し伝承する存在でもある。
晋公盤はその変わった外観やユニークで精巧な作りの素晴らしさだけでなく、そこに記されている銘文にも奥深い意味が込められている。内側の7ヶ所に記された全183字の銘文は、まず晋国の祖先である唐叔虞が周の武王の天下平定を補佐した史実までさかのぼり、次に文公の父親の献公が領土を広げた功績を記し、最後は娘の孟姫に対する要望と希望を記し、娘が永遠に喜びに包まれ安らかであるようにとの願いがつづられている。文公の時代の晋国の隆盛をうかがわせるとともに、父親の娘に対する尽きせぬ愛情を余すところなく示している。(編集KS)
中国の文化財は語る
博物館は人類文明を保護し、伝承する重要な場。博物館に所蔵されている文化財は埃をかぶった骨董品ではなく、いずれも民族の生きてきた証となる生きた伝承だ。「中国の文化財は語る」では毎回博物館に所蔵されている文化財の紹介を通じて、文化財に込められた中国の文化と精神について紹介していく。
「人民網日本語版」2023年10月24日
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