上海でスマート介護施設70ヶ所以上が完成 テクノロジーが介護をサポート
中国でも高齢化率が最も高い都市の一つである上海が発表している「上海市スマート介護施設建設推進3年行動案(2023—25)」によると、2025年末までに、スマート介護施設100ヶ所以上の完成を目標としている。現在すでにそのうちの約70ヶ所が完成している。
それらのスマート介護施設では、スマートマットレスやスマートランドリールームといった先進設備が導入されているほか、処方システムや移乗サポートロボットなどの研究開発にも参加して、高齢者の安全を確保し、運営の効率も高めている。またそうすることで、介護士にも余裕ができ、高齢者によりきめ細かな世話を提供することができる。
スマート設備:緊急事態を察知可能なマットレスやシーリングライト
「324号室の2番ベッドの王明香さんの血圧に異常がみられます。すぐに対応してください!」。
深夜、上海市浦東新区の介護施設・金楊養老院では、当直の介護士・趙占萍さんが、スマホを通して、異常を知らせるメッセージを受け取ると、すぐに王さんのもとに駆け付けていた。血圧の異常をリアルタイムで察知したのは、王さんのベッドに採用されているスマートマットレスで、王さんの家族もスマホを通してそれを知らせるメッセージを受け取ることができる。
スマート化されたシステムが見守る中、その夜、脳梗塞を起こしたことがある王さんはすぐに病院に搬送され、適切な治療を受けることができた。
金楊養老院では、スマートマットレスのようなスマート化された設備が数多く導入されている。
金楊養老院の陳雪院長によると、ホールに設置されている「スマート介護コックピット」情報システムは、全体を把握する「大脳」のような働きをし、あちらこちらに配置されているスマート化された設備は、中枢神経系に各種情報と感じたことなどを送る「目」や「肌」のような働きをする。そして、「トイレや浴室は、高齢者の転倒が発生しやすい場所。天井に設置されているシーリングライトは照明であると同時に、『電子レーダー』でもあり、転倒した高齢者を察知することができる」という。
上海市民政局の介護サービス処の李蘇晋副処長は、「テクノロジーによるエンパワーメントを通して、介護施設の運営効率を高め、サービスの供給を最適化するというのが、上海がスマート介護施設を建設する理由」と説明する。
高齢者向けの製品が介護士のアシスタントに
スマート化へのモデル転換が展開されるようになり、金楊養老院の介護士・陳菊秀さんは、負担がかなり軽減したと感じている。
鍾健美さん(96)が入浴する時、陳さんは、ボタンを押すだけで、移乗サポートロボットが車椅子に乗っている陳さんを抱きかかえるようにして、入浴室への移動をサポートする。
陳さんは、「下半身に力が入らない高齢者の移動をサポートするというのは、とても大変。ある時、体重が90キロの高齢者が起きるようと、ベッドの手すりに掴んで力を借りたが、手すりが壊れてしまったほど力を入れても起き上がれなかった。結局、介護士4人がかりで、その高齢者をなんとか起こした。でも、今は、一人で、高齢者の移乗をサポートしたり、入浴をサポートしたりすることができ、体力的に楽になり、リスクも減った」と説明する。
金楊養老院が所属する上海浦恵養老服務(集団)有限公司は現時点で、高齢施設16ヶ所を管理している。同社の党総支部委員会の高万傑書記は、「人手不足と介護士の年齢が高いというのが、当社が直面している難題。テクノロジーを活用して、手のかかる作業や重複作業をスマート化設備に任せることができれば、介護士は、高齢者一人ひとりに合わせたきめ細かなサービスを提供することができ、高齢者の精神的ニーズにも気を配ることができる」と語る。
障害物を自動で回避するスマート車椅子や囲碁ロボットといった高齢者向けの各種製品が、スマート介護施設の高齢者や介護士の間で好評となっている。高書記は、「より多くのスマート介護製品の研究開発と応用が進むにつれて、介護施設は、『介護産業拠点』という方向に向かって発展している」との見方を示す。
ただ、陳院長によると、介護士による融通が利き、心温まるサービスを、スマート設備やロボットでは提供できないという面もある。介護サービスを、より柔軟に、かつ心温まるものにするというのは、介護施設がスマート化を進める上で、考慮に入れるべきこととなっている。
またスマート化設備は、研究開発や購入、メンテンナンスといった面でコストが高いというのも、一部の介護施設のスマート化の足枷となっている。上海では、「3年行動案」の対象となっている介護施設は、スマート化建設の基準達成が確認されると、政府当局から最高で50万元(1元は約20.0円)の奨励金を一括で受け取ることができるようになっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2025年5月28日
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