小惑星探査機「天問2号」の10年近くの旅、短期ミッションとの違いは?
小惑星探査機「天問2号」ミッションの打ち上げがこのほど、無事成功したことにより、中国の小惑星探査およびサンプルリターンの旅が始まった。天問2号ミッションの計画期間は10年前後となっている。まず、天問2号は約2年半で小惑星「2016HO3」の探査、そして地球へのサンプルリターンを実施する。天問2号の帰還モジュールは2027年末に地球に着陸する予定だ。その後、天問2号のメイン探査機は再び地球のスリングショット効果を利用し、次の探査ミッションの目標であるメインベルト彗星「311P」に向かい、7年余りの飛行と科学探査を実施する。
北京航空航天大学宇航学院の張暁天准教授によると、天問2号は中国の惑星探査において、ミッション期間が最も長く、飛行距離が最も遠いミッションだ。今回の超長期間の深宇宙飛行ミッションの裏には多くの新しい技術的ブレイクスルーがある。代表的な例として、自律探査ナビゲーションと電気推進が挙げられる。
まず自律探査ナビゲーションについてだが、探査機は随伴飛行から小惑星に接触するまでの制御を極めて正確に行わなければならない。少しでも不注意があれば横転や衝突といった事故が発生する可能性がある。そのため天問2号は飛行しながら探査し、意思決定を行う戦略を採用し、従来の探査機よりも高度なインテリジェンスでこれらの課題に対応している。
次に電気推進についてだが、ミッション全体が10年に及ぶため、探査機の動力システムにより高い要求が求められる。天問2号はイオン電気推進と化学推進を組み合わせた動力システムを採用。電気推進は従来の推進剤の激しい化学反応による推進と比べて、効率が高く、より多くの燃料を節約することができ、長時間の深宇宙飛行に特に適している。
天問2号のミッション期間は10年であるのに対し、これまでの月探査機「嫦娥6号」の月面サンプルリターンは約2カ月で、火星探査機「天問1号」の火星探査の全体的なミッション期間は約2年だった。天問2号のミッション期間はこれらよりもはるかに長い。
これほど長期間にわたるミッションでは事前準備を十分に行うだけでなく、10年間にわたり専門的な技術チームが探査機の運行状態を持続的にモニタリング・管理する必要がある。これは従来の地球周回衛星の長期運用保守とも異なる。
地球周回衛星はその寿命期間中において、機体の状態や機能・ミッションに大きな変化はないが、天問2号はこの10年で常に新たな宇宙環境に直面し、飛行状態を随時調整しながら、2つの探査目標に正確に向かう必要がある。そのため、従来の衛星の長期運用保守よりも難易度が高い。(編集YF)
「人民網日本語版」2025年6月3日
注目フォトニュース
関連記事
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257 Mail:japan@people.cn