「北のシルクロード」の今と昔

人民網日本語版 2025年07月10日10:52

広義では、「シルクロード」は、「陸上シルクロード」と「海上シルクロード」に分けることができる。陸路は、古代の長安(現在の陝西省西安市)を起点に、蛇行しながら西に続いており、ユーラシア大陸の文明が交わる道となっている。人民日報が伝えた。

田畑と山々が織りなす白山市臨江市松嶺雪村の絶景(写真提供・臨江市党委員会宣伝部)。

田畑と山々が織りなす白山市臨江市松嶺雪村の絶景(写真提供・臨江市党委員会宣伝部)。

しかし、長安などから東に向かうと、「北のシルクロード」と呼ばれるシルクロードがあることは、実はあまり知られていない。このシルクロードには、陸路と水路があり、東北アジアの奥地にまで続いているため、「東北アジアのシルクロード」とも呼ばれている。これは単なる貿易ルートとしてだけでなく、文化を伝える架け橋ともなっていた。「北のシルクロード」の重要区間は現在の吉林省白山市にあった。

白山市は、長白山の麓にあり、鴨緑江が同市に沿って流れるなど、大自然に囲まれている。かつては、野山参(オタネニンジン)や松の実といった特産品が、「北のシルクロード」を通じて、唐代の長安へ運ばれ、中原のシルクや陶磁器などが、東北アジアへと輸出された。使臣や隊商が、「北のシルクロード」と呼ばれる古道を通ったほか、日本や新羅などの使節や僧侶たちもそこを通って中国まで行き来し、中華文化が東北アジアへと伝わった。

‌渤海と唐王朝を繋いだ古道‌

331国道の白山区間は、連なる山々の中を通っている。頭道松花江に近い撫松県抽水郷碱場村西坎屯の北西約500メートルの場所には、古道の跡が今もわずかながら残っている。撫松県に住むお年寄りたちの話によると、「北のシルクロード」は、同県の山の中を通っており、その昔、中原の王朝と東北エリアの国境地帯とを繋いでいたのだという。

約1000年前、渤海使は、長白山のオタネニンジンやミンクの毛皮といった特産品を携えて、竜泉府(現在の黒竜江省寧安市)から出発し、古道を通って、西京鴨淥府(現在の吉林省白山・臨江市)へ向かい、そこで水路に切り替え、船で鴨緑江を下り、現在の遼寧省丹東市から海に出て、登州(現在の山東省煙台市蓬莱区)から上陸し、陸路で長安に向かった。木々が青々と茂る山の中を通る道を通じて、文化交流が盛んに行われていたのだ。渤海が中原に派遣した数多くの朝貢使や王公貴族の関係者は、中原の文化や最先端の技術・工芸、儀礼を必死で学んだ。唐朝の詩人・温庭筠の「国に帰る渤海王子を送る」に出てくる「疆理は重海と雖も、車書は本と一家なり(国は海で隔たれているが、制度や文化は同じ根源だ)」という句から、渤海と唐王朝の間に密接な人的・文化的交流があったことをうかがい知ることができる。

‌原料の販売から高付加価値製品へと飛躍したオタネニンジン

大自然生物工程有限公司の生産工場内で、オタネニンジン関連の商品の生産管理をする技術者(撮影・劉勇)。

大自然生物工程有限公司の生産工場内で、オタネニンジン関連の商品の生産管理をする技術者(撮影・劉勇)。

撫松県にある万良長白山オタネニンジン市場はまだ日も上がらぬうちからすでに活気にあふれている。市場に店を構える王梅正さんは、オタネニンジンを発泡スチロールの箱に入れながら、「世界中で、長白山のオタネニンジンが高く評価されている。品質が良く、パッケージもしっかりしていて鮮度が保たれているので、東南アジアのクライアントもとても喜んでくれる」と話す。万良長白山オタネニンジン市場は、中国で唯一、また世界で最大規模を誇る国家級オタネニンジン交易専門市場で、2024年におけるオタネニンジンの取引量は2万9750トン、取引額は24億1000万元(1元は約20.3円)に達した。また、乾燥オタネニンジンの取引量は9000トン、取引額は30億元に達した。市場の責任者・張国紅さんは、「この市場は、世界のオタネニンジンの『心臓』だ」と話す。

白山市の人々が胸を張るのは、生や乾燥させたオタネニンジンだけではない。撫松県大自然生物工程有限公司の生産工場に足を踏み入れると、中医薬を抽出する近代的な生産ラインが効率よく稼働しているのを目にすることができる。同社の劉勇販売マネージャーは、「以前は、500グラム単位で、加工していないオタネニンジンを販売していたが、今はグラム単位で、加工済みの付加価値の高い商品を販売している。追加工・二次加工して、高い付加価値を掘り起こし、欧州の企業からは、オタネニンジン10万パックの注文が入った。現時点で、白山市にはオタネニンジンの加工企業が3000社以上あり、食用、飲用、医薬品など、600種類以上のオタネニンジン関連の商品が30ヶ国・地域以上に輸出されている。白山の特産品だったオタネニンジンは今や世界でも認められるブランドに飛躍している」と話す。

文明交流の場を提供する森林と雪原

崔長安さん(写真左)のレクチャーを受けながら中国の無形文化遺産・オタネニンジン堀りを体験する外国人留学生たち(撮影・杜沿賓)。

崔長安さん(写真左)のレクチャーを受けながら中国の無形文化遺産・オタネニンジン堀りを体験する外国人留学生たち(撮影・杜沿賓)。

白山市の木々が青々と茂る山の中では、「棒槌(オタネニンジンの別名)だよ!」と言うオタネニンジン堀りのプロ・崔長安さんの声と、「棒槌ってなんですか?」と聞き返す外国人留学生の声が響いていた。これは、外国人留学生が、白山市で特色ある無形文化遺産を体験するイベントでのことだった。長白山のオタネニンジン掘りの技術は2008年に中国の国家級無形文化遺産リストに組み込まれた。「崔親方」と呼ばれている崔さんは、50年以上かけて積み上げたオタネニンジン堀りの経験と、その背後にある中国伝統文化を、余すところなく外国人留学生たちに紹介している。

白山市撫松県小山発電所ダムの冬景色(撮影・孫莅珉)。

白山市撫松県小山発電所ダムの冬景色(撮影・孫莅珉)。

また白山市は近年、長白山のパウダースノー、温泉、カルデラ湖の「天池」、森林といった大自然を拠り所として、世界レベルの観光地へと成長しており、森林と雪原からなる「林海雪原」‌が白山市の新たな代名詞になっている。外国人観光客の安全を守るため、撫松県の国境管理大隊は、英語を話せるメンバーからなる二ヶ国語対応サービスチーム‌を立ち上げ、一面の銀世界が文明交流・相互参考の場となっている。

白山市撫松県長白山華美勝地観光リゾートでスキーを体験する子供たち(撮影・施維)。

白山市撫松県長白山華美勝地観光リゾートでスキーを体験する子供たち(撮影・施維)。

高く聳える山々は1千年以上にわたり、「北のシルクロード」の繁栄や、オタネニンジン市場の賑わいを見守ってきた。木々が青々と茂る森では歴史の趣を感じることができ、ゲレンデではさまざまな国の言葉が飛び交っている。歴史の趣と人々の暮らしの活力が互いに影響を与え、多元的に融合し、無限のポテンシャルを備えた未来が、この地でさらなる輝きを放とうとしている。(編集KN)

「人民網日本語版」2025年7月10日

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