【中国経済FAQ】AIによるショートドラマ制作は演算能力の浪費?
最近、人工知能(AI)モデルにおけるToken(トークン、AIが文章を理解・生成するための最小単位)消費量の用途別構成に関するデータが注目を集めている。中国国内のToken消費量のうち、ショートドラマ・動画生成に使われたものが55%、EC・マーケティングが24%を占め、ソフトウェア開発はわずか15%にとどまった。こうしたデータを米国の「Tokenの58%がコード生成と企業の自動化に当てられている」状況と比較して、「中国の演算能力はエンターテインメントに使われ、米国の演算能力は未来を創っている」と結論付ける人がいる。
こうした比較は最も基本的な検証にも耐えない。「中国ではToken消費量のうちショートドラマ・動画生成が55%」というのは、ネットで話題になった、AIショートドラマに重点的に投資する上場企業がIR資料の中に記載した業界調査に基づく判断にすぎず、定評ある統計手法によって全面的な分析を行った結果ではないからだ。AIアシスタントの豆包側もこのほど、このデータは全面的に信頼できるものではなく、豆包を開発した字節跳動(バイトダンス)の演算能力全体のうち動画生成モデルのトレーニング・推論に当てられているのはわずか10%ほどだと明確に示した。また、「米国ではToken消費量のうちコード生成が58%」というのは、どこから出てきた数字か全く分からない。
Tokenは文章を理解・生成するための最小単位であり、計測するのは作業量と演算能力の消費量だ。Tokenは生産性とは異なり、国内総生産(GDP)データでもなく、これによって直ちに一国のAI産業の価値を推し量ることはできない。しかも、動画生成はToken消費の多い高密度な利用シーンである一方、コード生成は反対に少ないTokenで効率よく処理できる利用シーンであり、両者を一概に比較することは、方法論としても成立しない。
Tokenの消費により生み出される価値を計測する場合、比較するのはどれくらいTokenを消費したかではなく、消費によって何がもたらされたかを見なければならない。ショートドラマ、EC、ライブ配信などのシーンは、おそらく一般の人々の考えるハイテク最前線シーンのイメージには合致しないだろうが、実はこうした「日常」こそが、AI技術が実際のユーザーによる検証を受け、ビジネスの循環の中で繰り返し磨かれる最前線に他ならないのだ。1つの動画生成モデルは、数千、数万回に及ぶショートドラマ制作で高頻度に利用される。そこで直面するのは安定したリアルな画面の追求、制作サイクルの圧力、制作コストの制約であり、そこで得られるアップデート・バージョンアップ・進化の機会は、少数のエンジニアだけが使用し、時にはPPT資料の中にしか現れることのない技術よりもはるかに多く、産業の価値という点でも比べものにならない。
「大衆的」は「価値の低さ」を意味しない。大衆向けの応用を先端研究開発と対立するものとして捉えるのは誤りだ。応用の規模そのものが研究開発を支える力となり、進む方向を示す。
集計基準が異なり、出所も不明なデータを並べて、「こちらが未来を創り、あちらはエンタメを追求」とまとめるのは、人々を誤った見方に誘導しやすく、正常な技術の普及・拡散と産業の分業を政治問題化させやすい。中国のAIは研究開発と応用シーンを循環させる仕組みを築き、独自の道を歩んできたのであり、世界のAI技術の普及・拡散と産業応用のためにもより大きな可能性を提供してきたのである。(編集KS)
「人民網日本語版」2026年10月30日
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