会場ボランティアスタッフからようやく許可をもらって、秦凱選手は「幸せの手すり」の前に立った。深呼吸を繰り返したり、自分の胸を叩いたりして、その緊張を落ち着かせようと努力していたが、試合に向かう時とは比べものにならないほど緊張していたのだという。新華社が報じた。
周囲のチームメイトやコーチ、さらには外国のコーチや選手からも、「がんばれ」という声がひっきりなしに飛んだが、緊張した彼の耳には届かなかった。金・銀・銅の各メダルを獲得した3人の選手が目の前を通り過ぎ、祝福を受ける表彰台で記念写真に応じようとしたまさにその時、秦凱選手が大きく息を吸い込み、指輪の入った箱を後ろ手に持って、一歩一歩ゆっくりと、慎重な足どりで、女子3メートル板飛び込みで銀メダルに輝いた何姿選手の前にやって来た。
会場となったマリア・レンク水泳センター全体が興奮の渦に包まれた。世界中の人々が、秦凱選手が何姿選手にプロポーズすることに気づいたためだ。秦凱選手が突然目の前に現れたことに何姿選手は大変驚き、2、3歩後ずさりした。
全観衆が注目し、「彼と結婚して!彼と結婚して!」と合唱する声が響く中、秦選手は立ったまま、何選手にしばらく話しかけていた。その後、跪いてからも引き続きずっと彼女に話かけ、見ている観衆がやきもきし始めるほどだった。秦選手が話し続ける間、何選手は涙をずっと拭いているだけで、なかなかうなずこうとしなかったからだ。
ついに彼女は秦選手のプロポーズを受け、ダイヤの指輪を受け取った。
「彼が何を話していたのか、私は緊張のあまり、ほとんど覚えていない。誰でも想像がつくような、愛を誓う言葉だったと思う。でも一番私を感動させたのは、彼が『生涯、君の言うことを何でもきくよ』と言ってくれたこと」と女子3メートル板飛び込み決勝で銀メダルを勝ち取ったばかりの何選手は、喜びの涙を拭いながらこう話した。
秦選手によると、非常に長い時間をかけてプロポーズの準備をしたという。彼は、「このチャンスを絶対に逃したくなかった。本当は彼女が競技を終えた後、すぐにプロポーズするつもりだったが、その時彼女はやや落ち込み、機嫌もそれほどよくなかったので、諦めようかと少し弱気になったほどだ。人生初のプロポーズだったので、何度も思い悩んだ。彼女がOKしてくれるという自信がなかったからだ。でも、たとえ断られても、あきらめずに彼女に尽くして、またプロポーズするつもりだった」と話した。
今から4年前のロンドン五輪で、秦選手が試合に負け、何選手がハグする姿から2人の恋愛関係が発覚。同じ中国代表チームの一員としてともに戦うチームメイト同士でもある2人は、これまでにオリンピックでそれぞれ秦選手は金2個、銀1個、銅2個、何選手は金1個、銀2個と2人で計8つのメダルを獲得した。しかし残念ながら今回のリオ五輪では、2人とも金メダル獲得はかなわなかった。
「長い人生の中で、飛び込みがその全てではない。2人でこれからも仲良く暮らし、2人の時間を大切に過ごすという平凡な普通の暮らしこそが真の人生だと思う。これは私が彼女に伝えたことであり、彼女の願いでもある」と秦選手は話した。(編集KM)
「人民網日本語版」2016年8月15日
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