日本の岸田文雄首相はこのほど、ミシェル欧州理事会議長(EU大統領)、フォンデアライエン欧州委員会委員長と第28回日EU定期首脳協議を行った。協議後に発表した「共同声明」は、日本とEUが国際情勢の変化をリードするために結束を図る「戦略的野心」を露わにすると同時に、地政学的紛争に連携して介入する「危険な瀬踏み」の企ても反映するものだった。「共同声明」における中国関連の誇張した文言について、中国外交部(外務省)報道官は13日、中国が断固として反対し、すでに関係方面に厳正な申し入れを行ったことを明らかにした。(文:項昊宇・中国国際問題研究院アジア太平洋研究所特別招聘研究員。環球時報掲載)
2018年発効の日EU自由貿易協定(FTA)が象徴するように、近年、日本とEUは戦略的接近を加速し、その関係も従来の経済・貿易分野から政治・安全保障分野への拡大を加速している。ロシア・ウクライナ紛争を背景とする今回の日本とEUの連動は注視に値するものだ。
■「国際秩序」維持を名目に中国抑止で連携
日EU「共同声明」は、中国関連の問題に相当の紙幅を割いて焦点を当て、台湾地区関連や香港地区関連の問題を大いに誇張し、中国の内政に公然と干渉し、極めて挑発的意味を持つ対中強硬メッセージを対外発信した。
しかし、日EU関係における中国関連の否定的動向は「日本主導、欧州追従」の特徴を示しているということを、明確に認識する必要がある。西側主導の国際秩序を維持する観点から、双方は共に「中国の行動を規制し、中国の影響力を抑止し均衡を図る」ことを望んでいるが、その温度差は歴然としている。第1に、日本とEUとでは、中国に対する安全保障上の懸念が異なる。日本は事実上、すでに中国を「重大な脅威」と位置づけているが、中国とEUの間には地政学的な利害衝突がない。日本はEUを引き込んで中国に対抗するとの一方的願望を抱いているが、EUが東中国海、南中国海、台湾海峡の問題で軽々に「火中の栗を拾う」ことはあり得ない。第2に、日本とEUは共に中国と緊密な経済関係にあるが、利益上求めているものが異なる。日本は現在「経済安保戦略」の策定を進めているが、これは経済における対中依存度を下げ、科学技術産業で中国との競争力を強化することを大きな目標の1つとしている。今回、EUとサプライチェーン、産業チェーン、デジタル経済での協力強化について合意したのにも、この意図がある。しかし、EUは現在、ロシア・ウクライナ紛争による経済的打撃に直面しており、中国での利益を犠牲にして中国と対抗することは望んでいない。
最近の日本が対欧州外交を活発に繰り広げ、軍事・安全保障協力を積極的に推進しているのには、連携してロシアに圧力をかけるという目的以外に、国内政治的な考慮もあることを指摘しておかなければならない。日本の自民党政権は「戦後の束縛からの脱却」を加速するため、ロシア・ウクライナ紛争を積極的に利用して外的脅威を誇張し、憲法改正と軍事力強化を推進している。日本が外国との防衛・安全保障協力を積極的に推進するのにも、形を変えることで国内世論や法的制約を躱して、戦後の軍事的タブーを打破する狙いがある。
第二次世界大戦後、日本と欧州は戦争の廃墟の中から困難な再建と復興を実現し、米ソ冷戦の最前線に身を置きながらも経済発展に専念し、軍事・安全保障分野で自制を保ち、冷戦後には経済のグローバル化を積極的に推進して、世界の「平和の配当」の主たる受益者となった。現在、国際・地域秩序は深い変革に直面し、陣営間対立の危険が再浮上し、人類社会は再び「戦争か平和か」「衝突か協調か」の岐路に立たされている。日本とEUはとりわけ歴史を鑑としなければならない。地政学的対立の火に油を注いで、ただでさえ複雑な東アジアの安全保障問題の撹乱者となることがあっては決してならない。(編集NA)
「人民網日本語版」2022年5月16日