中国、材料界の宝石と呼ばれる毛髪ほど細く鋼鉄より強い炭素繊維を開発
飛行機、風力発電のブレード、斜張橋のケーブル、競技用自転車、バドミントンのラケット……こうした一見何の関連もないようなものに、実はいずれも同じ材料の炭素繊維が使われている。炭素繊維関連製品は複数の分野に広く応用されており、その重要性は言うまでもない。中国新聞網が伝えた。
長さ1メートルの「SYT65(T1000級。Tは炭素繊維の強度を示し、数値が上がるほど強度が高くなる)」炭素繊維の束は重さが0.5グラムしかないが、約500キログラムのものを持ち上げる強度を備える。指ほどの太さの束になると、飛行機2機を引っ張ることができる。
炭素繊維が使われた超軽量自転車フレームは、2本の指で軽々と持ち上げることができる。
腐食性が高く金も溶かすことが出来る「王水」に炭素繊維を入れても変化はなく、肉眼では明らかな反応は確認できない。
炭素繊維のこうした優れた特徴を支えるのは、複雑な生産工程だ。
公開された資料によると、炭素繊維の生産には100ほどの工程があり、300以上の重要技術が含まれ、3000あまりの工程パラメーターが用いられており、10数システムによる集積を経て生産が完了する。そのため炭素繊維は「材料の王冠に輝く宝石」と呼ばれている。
中国の炭素繊維開発は1960年代の初頭に始まったが、長年にわたり重要コア技術のブレークスルーを達成できなかったことから、関連製品は深刻な輸入頼みの状態が続いていた。またコア技術を確立している「炭素繊維強国」は、中国が必要とする炭素繊維の技術・設備・製品を3つとも封鎖する行動に出た。そこで中国の開発者は別の道を探るしかなくなった。
2005年9月、中復神鷹炭素繊維股份有限公司は炭素繊維プロジェクトをスタートし、プロセス全体で重要技術を次々に攻略した。07年には工業生産を実現した最初の炭素繊維がラインオフした。08年には「SYT35(T300級)」炭素繊維の1千トンクラスの生産ラインを完成させた。
06年から12年までの間、中復神鷹は主に湿式紡糸による炭素繊維の開発・生産に取り組み、前述の1千トン「SYT35」生産ラインを完成させたが、安定した生産を実現できなかった。
しかし、T300級から「SYT65(T1000級)」炭素繊維への「高度化」は、想像よりもはるかに困難だった。中国建材集団傘下の中復神鷹西寧公司の連峰総経理は取材に、「この時期には、当社の投資額は毎年、50万元(1元は約20.0円)以上に達していた」と振り返った。
数え切れないほどの失敗を繰り返した末、中復神鷹は08年に1千トンクラス炭素繊維生産ラインを稼働させた。12年には初の乾式ノズル・湿式紡糸の1千トンクラス「T700」生産ラインを完成・稼働させ、当時の中国国内で規模が最も大きく、技術が最も進んだハイレベル炭素繊維生産ラインになった。18年には世界の進んだ乾式ノズル・湿式紡糸技術を利用した「中国製炭素繊維」の生産に成功した。
最初の頃は技術テストを徐々に進めていたのが、今では1万トンクラスの炭素繊維拠点が稼働するようになった。原材料企業がコア技術を攻略し、川下の各種メーカーが新しい材料を用いて新しい製品を作ることができるようになり、「1社のイノベーション」が「数社のリニューアル」をリードすることが実現した。
21年9月、青海省西寧市にある中復神鷹西寧公司の1万トンクラス炭素繊維拠点が稼働し、世界で標高が最も高い高性能炭素繊維生産拠点になった。全面的に稼働するようになると、世界で唯一の規模2万トン超の高性能炭素繊維生産拠点にもなった。
現在、中復神鷹の江蘇省連雲港市にある本部では、「T1100級」炭素繊維の生産に成功している。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年8月31日
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