「人災」はいつ終わるのか?志賀原子力発電所事故を問う
2024年1月1日、最大震度7を記録し200人以上が亡くなった日本の能登半島地震で、震源地に近い石川県志賀町にある志賀原子力発電所では、変圧器の破損および油の漏れ、一部の外部電源の使用不能や使用済み核燃料貯蔵プールからの水漏れなどの事故が発生し、国際社会から大きな懸念が寄せられた。日本政府は志賀原発が福島原発のような災害を繰り返さないと主張しているものの、関連情報と過去資料を踏まえれば、我々は今回の事故もまた「人災」によるものではないかと問う必要がある。(文・周生升/上海国際問題研究院研究員)
第一に、日本の原発リスク評価能力を問う。地震多発国である日本は、地震災害に備え、原発の安全を確保する義務がある。地理的制約により、福島原発や志賀原発などを含む日本の多くの原発は断層の近くに建設されているため、断層のリスク評価は原発の安全運営に関わる死活問題だ。実際、2007年に地震により志賀原発で機器の故障や使用済み燃料プールからの水漏れなどが発生したが、原発の管理を担当する北陸電力は当時、志賀原発の耐震性は問題ないと主張した。2012年、日本政府の原子力安全・保安院(現在の原子力規制委員会)の専門家会議において、発電所敷地内のシーム(亀裂)が活断層である疑いが指摘され、4年間の調査を経て、2016年に「活断層の解釈が合理的」と結論付けられた。2023年3月、原子力規制委員会は北陸電力の調査結果をもとに、「活断層が存在しない」と当初の判断を覆した。今回の能登地震について、日本政府の地震調査委員会は活断層が関連した可能性が高いと発表したうえ、今回地震のあった断層は政府が公表している主要活断層に対する長期評価の対象外だったと明らかにした。調査委員会の平田直委員長は「(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる」とした上で、評価の対象外だった断層で大きな地震が起きたことについて「非常に残念だ。もっと早く評価しておくべきだった」とも話した。平田委員長の発言は、日本が地震大国であるにもかかわらず、断層のリスク評価が追いついていないという衝撃的な事実を浮き彫りにした。また、今回の地震で重大な被害を受けた石川県珠洲市はかつて日本政府から原発の立地に指定された経緯があったが、幸いなことに、地元市民の強い反対により、原発の建設計画は頓挫した。もし珠洲原発が実現していたら、「第二の福島」にならなかったという保証はない。
第二に、日本の電力業界の「隠蔽体質」を問う。能登地震後、事故の原因に対して、北陸電力は「想定外」の状況が発生したと述べ、志賀原発で観測した揺れの加速度が、北陸電力が想定した数字を一部上回ったと明かした。しかし、原発を運営する上で、「想定外」の一言では済まされない。福島原発災害の影響を受け、日本政府は2013年に原発規制基準を新たに制定し、活断層が存在する地域における原発の建設と運営が原則上、禁止されることになった。北陸電力は、経営状況の改善を図るため、独自の調査結果を根拠に敷居内に活断層が存在しないと主張し、2011年から運転停止された志賀原発の再稼働を政府に求めた。しかし、2024年の能登地震は北陸電力の調査方法に問題があることを証明した。実際、志賀原発1号機は1999年に臨界事故を起こしたことがあり、当時、北陸電力は2号機の建設を進めるために、この重大な事故を政府に報告しなかった。2007年、この事故が明るみに出たため、北陸電力は行政処分を受けた。隠蔽行為は、北陸電力に限ったことではない。例えば、日本の中国電力は自社の運営する島根原発に活断層が存在しないと1980年代から主張し続けてきたが、2006年にその地下に約39キロメートルの活断層が存在することを認めた。また、東京電力は以前、福島第一原発から高濃度汚染水が漏れ続けているのを知りつつ公表せず、対策を講じようともしなかった。さらに、東北電力が運営する女川原発、日本原子力発電が運営する敦賀原発などでも、報告を行わず、断層の存在を否定する事例があった。隠蔽体質が蔓延る地震大国に原発が立ち並んでいることは、国際社会にとって、まさに原子力安全保障上の脅威だ。
第三に、日本政府の「信用」を問う。2023年8月、岸田文雄首相は、日本政府が福島の原発汚染水放出について「たとえ数十年にわたっても国が全責任を持って対応をしていく」と公言した。しかし、半年も経たないうちに志賀原発事故が発生し、日本政府の原発安全管理能力の不足が露呈した。活断層に対する評価不足関連の報道に加え、日本のメディアはさらに、志賀町が作成した「志賀町原子力災害避難計画」が全く役に立たないだけでなく、原子力規制委員会がこういった「計画」に対して一切の審査を行わなかったことについても報道した。これは、日本政府が原発災害問題に対して真剣に検討していないことを意味する。原発の安全管理について、日本政府は何度も綺麗事を並べてきた。2013年、安倍晋三首相(当時)は国際オリンピック委員会(IOC)総会で、福島第一原発を「アンダーコントロール」と表現し、東京オリンピックを誘致した。その直後に、東京電力が原発汚染水漏れを隠蔽したことが発覚し、「アンダーコントロール」という嘘が暴かれた。ジャーナリストの三浦英之氏は著書『白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺』で、日本政府が五輪招致のために、原発汚染水の対応などを求める福島の人々の要望から目を背け、むしろ「復興五輪」の大義名分で福島の人々の口をつぐませていたと痛烈に批判した。今日に至っては、新たに発足した岸田内閣はこれまで政府の約束していた「脱原発」政策を放棄し、ひいては能登地震の前年に志賀原発、柏崎刈羽原発、女川原発、東海第二原発など7基の原発の再稼働作業を加速させた。日本の電力会社のほうも「原発マネー」の獲得に躍起になっている。今回の地震と志賀原発事故がなければ、これらの原発は十分なリスク評価を受けずに再稼働していたかもしれない。このような日本政府の行為を目の当たりにした国際社会が日本の原発安全管理に大きな疑問を持つのは当然だ。そして、「数十年にわたっても国が全責任を持って対応をしていく」という日本政府の言葉は、到底信じがたいものだろう。
確かに、現在の科学技術では地震を予測することは不可能だが、「人災」の要素を無視すべきではない。2023年11月、習近平国家主席は岸田首相との会談で、日本の福島原発汚染水の海洋放出は全人類の健康、世界の海洋環境、国際的な共通利益に関わるものであり、日本は国内外の懸念に真摯に対応し、責任ある建設的な態度で対処すべきだと指摘した。これは、中国を含む国際社会が日本の原発安全管理能力とその態度に対して抱いている切実な懸念をよく表している。歴史と現実を振り返れば、日本政府と電力会社が政治利益と企業利益を原発安全管理より優先させていることは、明らかに日本の原発事故が頻発する主要な原因だ。今回の志賀原発事故は再び警鐘を鳴らした。日本は「人災」を抑制し、「福島の災難」を繰り返さないようにすべきではないだろうか。
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