「ビッグデータを活用した常連客いじめ」に「脱馴化」で対抗できる?
中国のソーシャルメディアにはこのところ、「ビッグデータを活用した常連客いじめ」への不満を述べる書き込みが連日寄せられている。「ビッグデータを活用した常連客いじめ」とは、一部のオンラインサービスプラットフォームにおいて、「常連客は多少値段を上げても利用する」という設定に基づき、常連客が割引の対象にならなかったり、普通より高い価格で買わされたりする現象のことだ。これに対し、ある若者が「脱馴化」(馴化した後に新たな刺激を与えることで反応が復活すること)のアルゴリズムを使って「対抗」し、値段を下げることに成功した。
12月初め、北京のホワイトカラーの女性・丁然さんは、恋人と海外旅行に行く計画を立てた。よく利用している旅行アプリで検索すると、北京から韓国のソウルに向かう飛行機チケットの価格は1358元(1元は約21.5円)だった。帰りのチケットも約1000元で、2人で往復約5000元近くになってしまった。
これは「ビッグデータを活用した常連客いじめ」だと考えた丁さんは、あるソーシャルメディアで「エアチケットが高過ぎて、手が出ない。旅行は行かないことにした」とつぶやき、「ビッグデータを活用した常連客いじめ」に「対抗」してみた。翌日にもう一度そのアプリで検索すると、エアチケットの価格は588元になり、帰りのチケットは約600元に下がっていた。恋人と合わせて往復で約3000元余り安くなったことになる。「ソーシャルメディアのつぶやきが何かの役に立ったのか、単に偶然値段が下がったのかは分からない」と丁さん。丁さんは「脱馴化」のアルゴリズムを使って「ビッグデータを活用した常連客いじめ」に「対抗」することに成功したのだろうか。
このケースについて、ある旅行プラットフォームのカスタマーサービスは、「当社には『ビッグデータを活用した常連客いじめ』をする理由がない」としたうえで、「関連サービスの価格は様々な要素の影響を受けて随時変動するので、ソーシャルメディアのつぶやきが価格変動につながることを直接証明することはできない。同じ時にチェックしたのに価格が違う場合であっても、クーポンなどが原因である可能性もある。もし、商品は同じなのに価格が異なる場合は、プラットフォームに問い合わせることができる」と説明した。記者が消費者として複数のプラットフォームのカスタマーサービスに問い合わせてみると、ほぼ同じような説明が返って来た。
今年11月、中共中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室を含む4当局は共同で、特別対策行動を実施すると通知。そこには、「アルゴリズムを利用して『ビッグデータを活用した常連客いじめ』をすることは厳禁する」ことも含まれていた。通知は、「ユーザーの年齢や職業、消費レベルといった特徴を利用して、同じ商品であるのに価格を変えることを厳禁する」と明確に指摘し、「割引や販売促進キャンペーンの透明度を高め、クーポンを取得できる条件、発行数、使用ルールなどをはっきりと説明しなければならない」としている。さらに、「クーポンが取得できない理由を事実通り説明しなければならず、『遅かった』や『一歩間に合わなかった』といった言葉でごまかすことを厳禁する」としている。
南開大学・法学院の教授で同大学競争法研究センター主任の陳兵氏は、「『ビッグデータを活用した常連客いじめ』というのは、経済学的には『価格差別』に当たる。商品やサービスの提供者が、同じランク、同じ質の商品、サービスを提供する際に、顧客ごとに価格や消費基準を変えることを指す。アルゴリズムは、ビッグデータを通してユーザーの全体像を描き出す。1つのコメントだけでは、そのユーザーの全体像を知ることはできない。『脱馴化法』を使うと、初めは値段を下げることができるかもしれないが、それ以降は、アルゴリズムが発注数などに基づいてユーザーがそのサービスを引き続き利用し、商品を購入していると判断し、また値段が上がる可能性がある。『脱馴化法』のようなやり方をすると、逆にアルゴリズムがさらに『利口』になってしまう」と指摘する。
北京郵電大学インターネットガバナンス・法律研究センターの謝永江主任は、「アルゴリズムは複雑なシステムで、一般の消費費者にとって、さらには法執行機関の職員にとっても、アルゴリズムの透明性と解釈性の実現は至難の業だ。しかし、監督・管理当局側では、ビッグデータ解析を通して逆に業者のプラットフォームに対して発注状況を解析することが可能だ。業者側が消費者の消費習慣をアルゴリズムで解析でき、対象を絞って価格を決めることができるのと同じように、業者側の経営行為に対してもビッグデータ解析をすることができ、『不正競争防止法』や『独占禁止法』を活用して『ビッグデータを活用した常連客いじめ』を規制することが可能だ」との見方を示している。(編集KN)
「人民網日本語版」2024年12月31日
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