インドが日本を抜き「世界第4位」に その背後にある要因は?
「インドはすでに日本を抜き、世界第4位の経済大国になった」。最近、複数のインドメディアの引用したインドの政策シンクタンク「Niti Aayog(the National Institution for Transforming India)」の発表が注目を集めている。
同シンクタンクの最高経営責任者であるスブラマニアム氏は、「インドの経済規模はすでに4兆ドル(1ドルは約143.8円)に達し、米国、中国、ドイツに次ぐ規模になった」と述べた。
国際通貨基金(IMF)も4月、インドは年末までに世界第4位の経済大国となり、名目GDPは4兆1870億ドルに達して日本の4兆1860億ドルを超えると予測した。
IMFの統計によれば、インドはすでに世界で最も成長率の高い主要経済国の地位を確保している。2021年から24年までの年平均GDP成長率は、それぞれ9.7%、7.6%、9.2%、6.5%にも達し、多くの先進国や新興国を遥かに上回っている。
インド経済の急成長の原因について、中国国際問題研究院アジア太平洋研究所の藍建学所長は、複数の要因が働いていると指摘する。
第1に、人口ボーナス。14億人を超える巨大な人口規模と若年層主体の人口構造により、インドは豊富かつ安価な労働力資源を有すると同時に、巨大な消費市場も形成している。これは経済を牽引する重要なエンジンであり、国際資本にとってのインドの魅力を極めて大きく高めてもいる。
第2に、デジタル技術の発展が重要な推進力となっている。情報技術やソフトウェアサービス分野における厚い蓄積によって、インドは従来型産業のデジタル・トランスフォーメーションを加速させるとともに、これを関連産業の協同発展につなげ、経済成長に新たな活力をもたらしている。
第3に、経済刺激政策の顕著な効果。モディ政権は「メイド・イン・インディア」政策と「国家インフラパイプライン」計画を推進している。これにより携帯電話製造、繊維、自動車部品などの分野が急成長し、製造業の弱点が補完された。
第4に、国際環境を見ると、グローバル産業チェーン再編のうねりの中で、インドは各国が仲間に引き入れようと争う対象となっている。この期待感がインドへの国際的注目を高め、大量の直接投資を引き付けてもいる。
インド経済は急成長しているものの、その背後には発展における隠れた懸念も複数存在する。
藍氏は、人口ボーナスと雇用危機が併存していると分析する。大量の失業の問題は、今後の経済と社会の持続可能な発展を脅かす。また、インドに長年にわたり存在する大きな貧富の格差や地域間の発展格差の問題は、国内市場の分断を招き、統一的かつ効率的な経済エコシステムの形成を困難にし、経済発展の足を引っ張っている。
モディ政権が改革を進めているにもかかわらず、全体的なビジネス環境はなお楽観を許さない。政策の不安定性や税制・法制度の不透明性などの問題が存在し続け、国際資本からの信頼を弱めている。また、周辺国との関係が緊張しており、地域的な衝突リスクも発展の阻害要因となる。
インド経済は、成長率は高いものの、1人あたりGDPは先進国を大きく下回る。人間開発指数(HDI)や基礎教育といった社会の重要な指標も明らかに後れを取っている。
インドの発展が世界に与える影響について、専門家は「インドは最大の発展途上国の一つであり、その成長は『グローバル・サウス』の経済的発言力を高め、世界の貿易・経済構造のバランシングに寄与している。また、人口15億近くの市場の拡大は、国際貿易に新たな原動力をもたらしてもいる」と指摘する。
中国の視点から見ると、中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の劉小雪副研究員は「インドの経済成長は新たな市場機会をもたらすだけでなく、中国企業に競争力の強化を促すものともなる。中印間の経済協力は大きな可能性を秘めており、中国の製造業の世界における重要な地位を踏まえれば、その資本と技術はインドの製造業の発展にとって極めて重要だ」と指摘する。
藍氏は「インドの急速な台頭が国際・多国間体制に与える影響は『やや複雑』だ。国際社会は、インドの奇跡を過度に持ち上げる必要はないし、その戦略的な不確実性がもたらすインパクトも過小評価してはならない」と指摘する。(編集NA)
「人民網日本語版」2025年5月30日
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