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                                                           ——日本語教師・蛯原正子さん

【第42回】

    日本語を教え始めたばかりのころは、どうでしたか?

     私はもともと小学校で国語を教えていましたが、国語を教えるのと日本語を教えるのは全く違います。カリキュラムも基礎も全く違います。最初は手探りでしたね。

    プリントとかもすごかったですよ。当時はパソコンとかありませんでしたからね。ワープロもなかったし。全部手書きです。コピーも、申込書を書いて、使うクラスとか、何枚必要かとか、提出しないと印刷してくれませんでした。今は自分のコピー機で印刷していますけど。

     ということは、今でも教材は全て手作りということでしょうか?

     そうですね。ほとんどは。そのほうが楽ですから。

     それから、例えばクラスに17人いるとしたら、全員のために先週の復習とか質問を準備しておいて、「この問題はこの学生に質問する」とか、「この学生にはこのレベル」とか、一人一人に向けて準備しておくんです。そうすると、一応みんな答えられるし、ちょっと難しい問題をクリアしたという満足感が得られる。

    生徒一人一人の質問まで。すごいですね。

     日本の先生方はみんなそうやっていると思いますよ。東京の厳しい学校だと、毎時間の教材計画を立て、その中に板書の計画まで入っています。そのメソッドは5年くらい経った頃から取り入れ始めました。

     大体一回の授業で一人の生徒が3回くらい発言することを考えています。言語を教えるのですから、しゃべるチャンスを与えないと。聞くだけでは駄目だと思います。

     22年間にわたる中国滞在で印象に残った出来事は?

    以前、中国では国が大学生の就職を分配していましたが、その後学生が自分で就職先を探すようになった、あの転換期で中国は大きく変わりましたね。

    国家が就職先を探してくれた頃は、大学生たちはひたすら成績を上げようとする。いい成績を上げればいいところを推薦してくれる。

     でも、自分で仕事を探すようになったら、いわゆる情報収集のへたな学生、コミュニケーションのへたな学生、理想主義な学生、そういう学生の性格が仕事にもろに影響してきて、かわいそうだなと思いますね。最近では4年生になると教室が殺伐となります。みんながライバルですから。

    昔はそういうのはなくて、純粋にけなげに理想を追っていましたね。大学生も少なかったから、超エリートという意識があり、馬鹿なことはやらない、という品格がありましたよね。

     これまでに中国の各地で教鞭をとられてきたと聞きました。

     まずは吉林大学に4年いました。それで、「東北はわかった、南部を見よう」と広州のキ南大学に4年。さらに、その隣の華南師範大学に5年いました。広州は食事がおいしかったから長くいたんですよね。(笑)

     次に「西部を見たい」と思って、雲南大学に行きました。それからやっぱり首都を見なきゃと、北京に来て、もう7年目になります。

     それぞれが本当にいい思い出ですね。自分でも不思議に思うのは、5つの大学に行きましたが、どの大学でも全く不愉快な思いをしなかったんです。

北京の外交学院

     アンケートの好きな都市にシャングリラとありましたが、旅行も各地に行かれているんですか?

     中国は全部の省に行きました。雲南のシャングリラは、現代社会にはないような風景があります。同じ理由で吉林の長白山・天池もすばらしかった。マンシューリもすばらしいですね。それからハルピンからハイアールまでの汽車の窓から見えるヒマワリの畑も感動的ですね。キュウサイコウは、一般開放された直後だったので、本当にすごいと思いました。バスを押したりしながら行って、ついたときには、夢の世界が現れたような感じでね。


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