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                                                           ——日本語教師・蛯原正子さん

【第42回】

    日本に帰ろうと思ったことは?

     ありますよ。もう自分が年で、学生の考えについていかれないかもしれない、それに自分も気づかないんじゃないかというのが理由です。ここ5年くらいはそう思いますね。私は最終的には東京に帰ろうと思っています。

     蛯原先生にとって、中国とは?

     おおらかだ、ということですね。細かいことにくよくよしない。それから外国人として中国にいるので、様々なことを客観的に見られる。客観性が保てる。これはストレスにならなくていいなあと思います。全てを面白がることができます。

     例えばSARSのときも私、「見届けなくっちゃ」って、残っていたんです(笑) SARSのときはほとんどの学生が帰郷し、わずかに残った学生は学校から外に出られなくなったんです。私は1年から4年の残った学生を集めて、一緒に授業しました(笑)一週間に1度お買い物バスが出ていて、外で買ってきたものを彼らに渡したりね。午後は天安門とか故宮とかを歩き回りました。

     あのサーズのときに外出されたんですか?

     あの広い天安門に私一人!故宮でも私一人。独り占めしたっていう高揚感がありましたよ。(笑)

    バスに乗るとお客さんが一人か二人いて、互いに緊張感があるんです。「ケホケホ」ってカラゼキなんかすると嫌な目で見られたりして(笑)学生たちにこういう話をすると唖然とされますが。

SARSのとき、北京の地下鉄内の風景

    北京の学生はいかがですか?

     北京の大学生は自主性が高く、企画力と組織力が高いです。チャンスを与えてやれば、自分たちで調べて、パワーポイントで資料を作って発表もしますし、日本語力も高いです。知識や思考力も高いです。ただ、外交学院には日本人留学生がいないため、たまに家に来て徹底的に話させるというのをやっています。

    4人ずつに分けて、週2回、家に呼んで。生徒同士も家に入った瞬間中国語を全くしゃべれない。

    毎回テーマを学生に決めてもらって、討論するんです。面白いですよ。今学生がどんなことを考えているかわかるから。

    どんなテーマが多いんですか?

    一番多いのが、「就職するべきか、大学院に行くべきか」。それから「同性愛結婚を中国でも法律で認めるべきか」「一人っ子政策を中国でも続けるべきか」など、様々なテーマを考えてきます。

    中国の学生は先生の期待に応えようとして、努力しようという素直さがありますね。そういうところが私が中国にいる一つの理由。やればやるほど面白いから。私はこれくらいしか期待しなかったんだけど、学生たちは2倍も3倍もやってくると、可能性は無限にあるんだなと思います。

    今後の抱負を教えてください。

     今回友誼賞をいただいて。簡単にいうと、「これで終わりにしてください」と言う解釈もできると。(笑)

    引退の花道を作っていただいたと思います。

    教師はやっぱり若くって、生き生きとした頭脳を持っている方が一番いいと思います。私のやり方で一番だと思っているのはよくないと思いますよ。東京に帰ったら?そのときはそのときで考えましょう。(笑)

     数々の思い出話を、本当に楽しそうに思い出しながら語ってくれた蛯原先生。私から見るとつらいだろうなと思われる情況でも、先生にかかると「面白かった」の一言。まるで、「人生を楽しむ極意」を生まれながらに身につけていらっしゃるかのようだった。一方で、生徒に対しては一人一人の問題を用意したり、家に招いて指導するなど、いつも熱心さを忘れない先生。蛯原先生の教え子たちはきっと、日本語だけでなく、人生の様々な大切なことを先生から学び、日中友好の架け橋として、様々な場面で活躍していくことだろう。(人民網日本語版記者 八嶋)

プチアンケート
・あなたの出身地は?
宮崎県
・中国滞在歴
22年
・一番好きな中華料理は?
中国で美味しいのはお粥。いろいろ食べたけれども。特に広東の。飲茶が好きですね。北京の水ギョーザ。
・中国で一番好きな都市は?
雲南が好きですね。雲南のシャングリラ。
・中国にあって日本にないものを1つ挙げてください。
老人が中心だということ。老人がのらりくらりとできる。あとは家族至上主義ですね。特にお母さん。中国人にとってお母さんは世界一の存在なんです。
・中国を漢字一文字で表すと?

 
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