「世界最小の点」を印刷 マイクロメートルからナノメートルに

人民網日本語版 2023年08月28日09:34

書籍、新聞、包装、カード……人々の暮らしの中ではこうした印刷物をよく見かける。中国人は印刷術に深い感情を持っているが、従来的な印刷産業は汚染の課題に直面している。人民日報海外版が伝えた。

印刷をグリーンでゼロ汚染にするにはどうすべきか。中国科学院化学研究所の宋延林研究員は、親水性の板に親油性の模様を印刷することを考えた。「模様にインクがつき空白部分にインクがつかなければ直接印刷できる」。ハスの葉を水滴が流れ落ちる光景に触発され、宋氏は印刷材料の模索を開始した。「ハスの葉の表面にはマイクロナノ複合構造がある。ナノ材料により親水性と親油性のコントラストを強め、そしてナノ粒子複合を利用し印刷耐久性を高め、インクを付けられる模様・文字エリアを直接印刷する」と宋氏。

宋氏のチームは数年前に「ナノ印刷」のコンセプトを打ち出した際に、疑問視された。

「世界の当時の印刷精度はまだマイクロメートルスケールだった。マイクロメートルからナノメートルに移るには3桁の飛躍が必要で、精度を1000倍上げる必要がある」。宋氏によると、印刷の精度のブレイクスルーを達成するためには、多くの基礎科学の問題に直面しなければならない。その一つが「コーヒーリング効果」と呼ばれる。1滴のコーヒーは固体の表面で乾燥する際に不均一に広がり、縁が厚く中央が薄くなり、不均一な斑点を形成する。この難題を解決できなければ、印刷インクの正確な制御が不可能だ。

そこでチームのメンバーは液滴と材料表面の相互作用の深い研究と正確な制御により、従来のインク液滴サイズの限界を突破した。印刷される斑点のナノレベルの精度を実現し、さらには各液滴内のナノ粒子の個数を正確に制御し、「世界最小の点」を印刷した。

宋氏のチームはその後さらに「レイリー・テイラー不安定性」や「マランゴーニ効果」などの「線」と「面」の基礎科学の難題を解決し、印刷術の全体的な精度をマイクロメートルからナノメートルスケールに推進した。

■ぬくもりある科学研究を

宋氏は数年前に、視覚障がい者の生活を歌詞にしたある歌を耳にした。歌詞の中で描かれた視覚障がい者の生活が強く心に響いた。「研究で視覚障がい者のためにできることはないだろうか」。チームはは点字印刷に目を向けた。

従来の点字は金属板のプレスによって印刷された。印刷の過程が煩雑で、点字が擦れて消えやすいことはさておき、その本は一般的な本の15−20倍と非常に高額だ。これは視覚障がいを持つ子どもの知識習得の機会の大きな壁だ。

「インク液滴形成を正確に制御した上で、すべての液滴を制御し微小突起構造を形成できれば、点字の基本的な形を作れる」。宋氏はそれまでの研究成果を踏まえ、特殊印刷で作られていた点字を普通の印刷に変えることで、コストを大幅にカットした。

文字や本の印刷の他にも、新しい印刷方法は図形を印刷できる。チームはルービックキューブの各面に異なる模様を印刷し、視覚障がいを持つ子どもでもルービックキューブで知力と想像力を開発できるようにした。

宋氏は、「科学者は人情味のない集団ではなく、ぬくもりのある科学研究を行うべきだ。科学者は人間本位に、科学研究でこの世界をより良くするべきだ」と述べた。(編集YF)

「人民網日本語版」2023年8月28日

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