クリーンエネルギー利用技術で南極の「グリーンな観測」をサポート

人民網日本語版 2024年09月18日09:03

今年は中国の極地観測40周年となる。数世代の科学技術者の弛まぬ努力により、中国はすでに極地陸海空全方位立体観測体制を形成し、南極科学観測大国になった。エネルギー利用技術は南極の活動を支える上で重要で、長期的な発展と持続的な更新が必要となる。科技日報が伝えた。

南極のクリーンエネルギー設備やシステム、運用保守などの基幹技術の研究開発に方向性と指導を与え、南極エネルギークリーン利用技術体制を構築し、健全化するため、「南極クリーンエネルギー利用技術12年発展綱要」(以下、「綱要」)がこのほど、2024中国極地科学学術年次総会で発表された。綱要は中国極地研究センター(中国極地研究所)が組織し、太原理工大学が先頭に立ち、山西省エネルギーネットワーク研究院や中国電子科技集団公司第十八研究所、清華大学などの関連チームと共同で作成した。

南極は地球最大の淡水資源バンクであり、気候環境変動の傾向を示す場所でもある。南極は1千種以上の魚類や220種以上の鉱産物、数百億バレルの石油埋蔵量を擁している。人類の南極活動の範囲の持続的な拡大に伴い、汚染を回避し、手つかずの極地環境を維持することが、各国の南極科学観測活動の重要な関心事になっている。太原理工大学電気・動力工学学院の竇銀科副院長は、「2022年の世界範囲の南極活動において、エネルギー消費に占める燃料の割合は82%だった。燃料メインの南極エネルギー消費構造が引き起こす環境汚染などの問題に注意すべきで、南極でのクリーンエネルギーの利用は極めて重要だ」とした。

各国は近年、南極という「浄土」を守るため、南極クリーンエネルギー発展のさまざまな模索に取り組んでいる。その中でも太陽光及び風力が主な開発対象となっている。綱要によると、2022年現在ですでに20ヶ所以上の南極観測基地でクリーンエネルギー発電装置が設置されており、うち50%以上が太陽光もしくは風力を利用している。中国は現在、泰山基地に80kW風力発電及び60kW太陽光発電施設を設置している。また中国の秦嶺基地のクリーンエネルギーの割合はすでに基地全体のエネルギー消費の60%に達している。

しかし南極の過酷な環境において、太陽光及び風力発電設備は往々にして、安定性と高い効率を維持できない。山西省エネルギーインターネット研究院科学イノベーション部の薛屹洵部長は、「現在は南極環境の特徴に向けたクリーンエネルギー技術の系統的な応用が不足している。南極地域のクリーンエネルギー利用は、安全・安定運転の面で従来のエネルギーには遠く及ばない。そのため、南極のクリーンエネルギー利用は長期間にわたり、模索の段階にある」としている。

南極の過酷な環境におけるクリーンエネルギーシステムは、電気・熱・石油などのエネルギー資源をメインとする典型的なマルチエネルギーフローシステムだ。これは各種エネルギーフローを集め、効率的な利用を実現する複雑なエネルギーシステムで、各種エネルギー形式間の相互補完と切り替えにより、全体的なエネルギー利用効率を高めている。薛氏によると、国内外の多くの研究機関が近年、このシステムの研究を広く行っているが、依然として数多くの挑戦に直面しているという。

薛氏は、「南極クリーンエネルギーシステムの発展は、安全で効率的、グリーンで便利、信頼できる設備、マルチエネルギー相互補完、スマート融合という5つの重要な特徴を兼ね備える必要がある。南極環境におけるエネルギー設備の信頼できる運転と、南極エネルギーシステムのマルチエネルギー相互補完を物理的基礎とし、南極の環境における情報物理システムのスマートな融合をデジタルサポートとし、南極エネルギーシステムの建設から運転、さらには運用保守までの安全で効率的な管理を実現し、南極科学観測基地と野外観測基地、南極交通システムのエネルギー構造を最適化する必要がある」とした。

では現在の南極クリーンエネルギー利用の技術的な難題に解決策はあるのだろうか。

太原理工大学の孫宏斌学長は、「南極クリーンエネルギーシステムの発展はまず、南極クリーンエネルギーの共通的な技術発展の流れを模索し、個別の技術の発展方向と重点を整理するべきだ。次に、南極におけるエネルギー需要の特徴に対する踏み込んだ分析が極めて重要だ。また、地熱や太陽熱などのその他の新エネ技術の、南極クリーンエネルギー技術の発展に対する潜在的な影響についても評価すべきだ。さらに風力発電と太陽光発電は南極環境と結びつけ技術イノベーションを行うべきだ。風力・太陽光発電によって生まれるグリーンな電力の長期的な貯蔵についても、さらに考慮していく必要がある」とした。

綱要は、南極クリーンエネルギー発展の全体目標を達成するため、2025年までにクリーンエネルギー設備とシステムの南極の過酷な環境における適応性の難題の全面的なブレイクスルーを果たすとした。また2030年までに中国南極観測基地のクリーンエネルギー利用のモデル転換及び高度化を全面的に完了し、安全で効率的、グリーンで便利、信頼できる設備、マルチエネルギー相互補完、スマート融合の目標をほぼ達成する。さらに2035年までに整った南極科学観測基地クリーンエネルギー供給技術体制を形成し、中国の南極観測事業を新たな段階に押し上げるとした。(編集YF)

「人民網日本語版」2024年9月18日

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