ピアノも弾けるスマートバイオニックハンド 「失った右手を10年ぶりに取り戻した」
スマートバイオニックハンドを装着してピアノを弾く周鍵さん(写真提供・周鍵さん)。
スマートバイオニックレッグを装着してロッククライミングを楽しむ林韵さん(写真提供・林韵さん)。
浙江省杭州市余杭区のAIタウンにある浙江強脳科技有限公司(以下、「強脳科技」)のオフィスエリアに入ると、周鍵さんがパソコンに向かい、キーボードを打っていた。よく見ると、彼の右手はアルミニウム合金で作られたスマートバイオニックハンド(筋電義手)だった。それでも、パソコンの画面を見ると、文字が打ち込まれていく速さは、左手と全く引けを取らない速さだった。人民日報が報じた。
周さんは12歳の時に、事故で右手を失ってしまった。その後、2022年に大学を卒業し、ある公益性のあるプロジェクトの支援を受けて、強脳科技が研究開発したスマートバイオニックハンドを使うことができるようになった。周さんは、「以前は普通の義手を使っていたが、使い勝手が悪く、飾りのようなものだったので、結局使わなくなってしまっていた。スマートバイオニックハンドを使うようになり、失った右手を10年ぶりに取り戻した気分」と話しながら、ミカンの皮を剥いていた。そして、「装着すると、ソケットの電極が、僕の動きの筋肉や神経の電気的信号を収集する。そして、僕が手を動かしたいと思うと、義手が収集した信号に基づいて、その意図をくみ取り、相応の動きをする。練習を重ねると、自由自在に操ることができるようになる」と説明する。
さらに、義手の動きをより柔軟にコントロールし、思うがままに手を動かせるようになるために、周さんもいろんな工夫をしたという。例えば、約1年前、音楽に関しては素人だった彼だが、スマートバイオニックハンドを使ってピアノを弾く練習を始めた。始めは、曲のワンフレーズしか弾けなかったものの、今では、初めから最後まで弾ける曲が何曲かあると言い、新たなスキルを身につけた。
現在、周さんはドアを開けたり、物を運んだり、握手をしたりすることにも慣れ、高速列車に乗り、重い荷物を持っている旅客を見ると、手伝うこともあるという。「以前は、荷物を持って列車に乗る時は、他の人に手伝ってもらっていたが、今では僕が手伝えるようになった」と喜ぶ。
強脳科技の創始者・韓璧丞氏は、「海外のブレイン・マシン・インターフェイスのように脳にチップを埋め込むのと異なり、当社は非侵襲型ブレイン・コンピューター技術を採用しているので、開頭手術を行う必要がなく、リスクが低くなっている。ただ、皮膚の電気的信号は非常に弱いため、センサーやアルゴリズム能力を高め続けなければならない。そうでなければ、筋肉や神経の弱い電気信号を収集し、脳から伝わる動きの意図をくみ取り、正確に手の動きをコントロールすることができない。電極材料を収集する方法や構造のデザインだけでも、1千回以上アップデートを行ってきた」と説明する。
強脳科技のバイオニックハンドはすでに量産が実現しており、販売価格は約10万元(1元は約20.5円)。海外の同じタイプの商品と比べると7分の1から5分の1の価格で、オーダーメイドの注文、購入、装着ができる。実験室では、新世代のスマートバイオニックハンドのテストが急ピッチで実施されている。新製品は、ヒトの手の形にさらに近づけられているほか、圧力や温度のセンサーも搭載されており、柔軟で高精度の動きを可能にしているほか、相手の手のひらの温もりを感じることもできるという。
強脳科技は近年、各地の身障者連合会や基金会などと積極的に提携し、条件を満たす障がい者に、安価、場合によっては無料でスマートバイオニックハンドやスマートバイオニックレッグを提供している。韓氏は、「ブレイン・マシン・インタフェースは、医療やリハビリ、次世代ヒューマンコンピュータインタラクションといった面で、大きな発展のポテンシャルを秘めている。当社の技術と、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングといった分野の革新的融合を加速させ、さらに多様な商品のラインナップを開拓し、さまざまな人々に合わせたサービスを提供し、彼らの暮らしにおける無限の可能性を広げていきたい」と語る。(編集KN)
「人民網日本語版」2025年2月24日
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