冷エネルギーで冷水魚を養殖

人民網日本語版 2025年04月09日14:12

淡水魚の養殖に10数年にわたり従事してきた王晨浩さんは初めて、海水魚の養殖を試みた。しかもそれは液化天然ガス(LNG)が放出する冷エネルギーを活用した冷水魚の養殖だ。これは王さんにとって新鮮な経験で、江蘇省塩城市浜海県にとっては沿海資源を活用した新たな産業領域の開拓を意味する。人民網が伝えた。

「では、ご案内します」。浜海県陶湾海洋牧場陸上冷水魚養殖試験拠点の技術者である王晨浩さんは給水時間の午前9時になると給水管の先に向けて歩き出した。両側には10以上の円形養殖池が並び、それぞれにサーモン、ニジマス、チョウザメ、ヒラメなどが養殖されている。

浜海県陶湾海洋牧場陸上冷水魚養殖試験拠点。撮影・周夢嬌

浜海県陶湾海洋牧場陸上冷水魚養殖試験拠点。撮影・周夢嬌

養殖池の水は、中国海洋石油集団有限公司(中海油)塩城グリーンエネルギーポートのLNG受入ステーションで使用される生産用水で、直径16センチ、全長2000メートルのパイプを通じて、1日3回定時に供給されている。

経済価値の高い冷水魚の養殖は、水温管理が最大の制約となっている。中国最大規模のLNG備蓄拠点である中海油塩城グリーンエネルギーポートにおいて、6基のLNG貯蔵タンクが昨年6月、すべて完成した。同プロジェクトの第1期及び拡張工事における安定的なガス輸送能力は最大年間420万トンで、約348万ギガジュールの冷エネルギーを放出できる。

マイナス162℃のLNGは海水と熱交換して温度を上げることで、ガスとして外部に輸送できるようになる。この過程で放出される冷エネルギーは、海水温を5℃下げることができる。

浜海港経済区管理委員会の王歓副主任は、「冷エネルギーを海に放出することで、海水温が下がれば、海洋生態が破壊される。熱交換後の海水を池に流して養殖池にすれば資源の有効活用ができる」と述べた。

LNG冷エネルギー交換センター。撮影・周夢嬌

LNG冷エネルギー交換センター。撮影・周夢嬌

第1期約0.67ヘクタール規模の養殖実験拠点では、さまざまなモニタリング装置が設置されており、養殖池の水位、溶存酸素、温度、水交換量などがIoT(モノのインターネット)プラットフォームによってリアルタイムで監視されている。王さんは順番に排水バルブ、酸素供給バルブ、循環水バルブなどを点検し、スマート管理システムに魚の成長状況を入力する。そして午前10時頃、配合された魚の餌を与え始めた。

王さんは、「これらのサーモンは昨年入れた時は約200グラムだったが、2年で5キロ前後の成魚に成長した。来年は500グラム当たり100元(1元は約19.8円)で売れるだろう。拠点の第2期約10ヘクタールの拡張工事が進められており、年間24トンの生産能力を目指している」と述べた。

サーモンに餌を与える王晨浩さん。撮影・周夢嬌

サーモンに餌を与える王晨浩さん。撮影・周夢嬌

この養殖実験拠点は現在、毎日6ギガジュールの冷エネルギーを活用している。これは電力消費1680キロワット時(kWh)、二酸化炭素排出935キロの削減に相当する。塩城市工業・情報化局の関係責任者は、「冷エネルギーはかつて『エネルギーのブラックホール』だったが、今やここは『ブルーファーム』になり、工業余剰エネルギー+スマート漁業が経済と環境の両立を実現した」と述べた。また製氷工場、氷と雪のテーマパーク、フリーズドライ果物・野菜工場、演算能力センターなどの冷エネルギーの活用シーンは今後さらに広がっていく見込みだ。(編集YF)

「人民網日本語版」2025年4月9日

注目フォトニュース

関連記事