ロボットが店員になる時

人民網日本語版 2025年09月09日14:19

「こんにちは、アイスアメリカーノができました。こちらからQRコードをスキャンしてカップをお受け取りください」。北京の中関村ART PARK大融城にある「銀河宇宙カプセル」という装置の前で、銀白色のロボットアームが静かにコーヒーを差し出した。並んでいる人々は違和感を覚えるどころか、次々とスマートフォンを向けてその瞬間を記録していた。経済日報が伝えた。

ロボットは話すだけでなく、コーヒーや飲み物を運ぶこともできる。この「銀河宇宙カプセル」は、都市生活向けに作られた人型ロボットによるスマートリテールソリューションであり、最小9平方メートルというスペースで24時間無人で稼働し、飲み物、軽食、文化・クリエイティブ商品、医薬品といった需要の高い商品を販売する。これは、人型ロボットが研究室から出て、私たちの生活に溶け込んでいることを示す、生き生きとした一例だ。

ロボットが「店員」としてスムーズに働き始めている背景には、人型ロボット技術の目覚ましい進歩と、シンプルな経済的合理性がある。ロボットによる小売は「一度の投資で、24時間稼働」が可能だ。同じロボットアームが、商品の補充、コーヒー作り、飲み物の提供を同時にこなすことができる。減価償却費、ハードウェアの償却費、運用コストを考慮しても、一人で複数の役割をこなすロボット「店員」の総コストは、従来の人的労働によるコストよりも低い。

このほか、新しい体験が生み出す集客効果も無視できない。ある報道によると、この「宇宙カプセル」は1日平均延べ2000人の利用者にサービスを提供し、周辺地域の来客数を3割増加させているという。現実の場面で人型ロボットが働き始めることで、好奇心から体験しに来る消費者が増え、「体験」が新たな生産要素になっている。

注目すべきは、ロボットは注目を浴びる場所だけでなく、人通りの少ない場所でも活躍できることだ。このようなスマートリテールが実践を通じて急速に進化すれば、それぞれの地域の特徴に合わせて、より多様な商品やサービスをカスタマイズで提供できる。さらに、交通拠点、老朽化した住宅団地、観光地の片隅、夜間など、従来のコンビニエンスストアではカバーしきれないような場所でも、より低コストかつ迅速な展開で効率的なサービスを提供し、公共サービスの密度と消費の利便性を効果的に向上させることが期待できる。

人型ロボットのスマートリテールとほぼ同時に、ロボット版「4S店(ディーラー)」も登場し、ロボットを展示品から日常用途へとさらに押し広げている。これまで、人型ロボットは価格が高く、メンテナンスコストも高かったため、その普及が大きく制限されていた。最近、北京の亦荘で世界初のエンボディドAIロボット「4S店」がオープンした。ここでは、世界トップレベルのロボット製品に最適なシーン展示と没入型体験スペースが提供され、利用者は製品の性能を直感的に体感できるようになった。

産業チェーン企業、完成品メーカー、そして「4S店」が連携することで、「研究開発—製造—シーン—金融—サービス」の一体型クローズドループが徐々に形成され、ロボットのライフサイクル全体をカバーするサービスシステムが構築されている。「集中調達+標準化メンテナンス」および金融機関と提携した「リース+管理」モデルを通じて、より多くの中小企業や一般家庭が、より低いハードルでロボットを利用できるようになり、潜在的な需要を現実の市場へと変え、技術的価値のスムーズな商業化を推進している。

ロボットコンビニからロボットレストラン、マラソンから各種競技大会に至るまで、今年に入って、人型ロボットの驚くべき能力が次々と話題になっている。その多様なスキルは人々を驚かせ、より多くの場面で人々の日常生活に溶け込むための基盤を築いている。

スマートリテールから「4S店」まで、標準化、データ化、サービス化の手法を用いることで、高コストで利用頻度が低く、メンテナンスが難しい「技術の贅沢品」を、低コスト・高頻度・メンテナンスが容易な「日常の耐久消費財」へと変えていく。技術は不可能をビジネスへと変えつつある。ロボットがもはやショーケースの中の「アイアンマン」ではなく、街角の「店員」になった時、新しい産業の時代が真に幕を開けるのだ。(編集YF)

「人民網日本語版」2025年9月9日

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