世界初のニューロダイナミクスチップが誕生

人民網日本語版 2026年07月08日10:13

脳皮質表面の複雑な脳回や脳溝をコンピューター上でリアルタイムに再現するには、これまで高価な大型計算装置による長時間のオフライン演算が必要だった。しかし今、その状況が親指サイズの1枚のチップによって一変した。北京大学集積回路学院の楊玉超教授の研究チームと、中国科学院上海マイクロシステム・情報技術研究所の宋志棠研究員のチームは共同で、相変化メモリスタを用いた世界初のニューロダイナミクスシステムチップの開発に成功した。複雑な演算処理における単一ステップ当たりの遅延時間を初めて2.12ミリ秒まで短縮し、脳皮質の再現などのタスクでは、現在の先進GPUと比べて50~478倍の高速化を実現した。半世紀にわたりニューロダイナミクスを制約してきたリアルタイム計算のボトルネックを一挙に突破した。関連成果は3日付の学術誌「Science(サイエンス)」に掲載された。光明日報が伝えた。

研究チームは、相変化メモリが持つ特有の「コンダクタンスドリフト」現象、すなわち一定時間内におけるコンダクタンス変化が予測可能で精密に制御できるという特性を利用した。これに基づき、「制御可能なインメモリコンピューティング」という新たな計算パラダイムを提案した。分かりやすく言えば、従来は複雑なデジタル回路が繰り返し実行していた演算、キャッシュアクセス、データ転送などの作業を、素子自体の物理法則によって実行させるようにしたのだ。

さらに注目すべき点として、研究チームはニューラルネットワークの重みを相変化メモリの多段階コンダクタンス状態にマッピングし、同一アレイ内で行列乗算も同時に実行した。その結果、二つの主要計算タスクが総面積わずか0.28平方ミリメートルのメモリ・演算一体型アレイに統合された。40ナノメートルプロセスで製造されたこのチップは、1回の反復処理において2.12ミリ秒という遅延時間を実現し、ニューロダイナミクスハードウェアを初めてミリ秒時代へと導いた。

楊教授は、「性能は非常に期待を抱かせるものだ。同一条件の演算では、このチップは現在最先端の専用アクセラレーターと比べて3.82~36.27倍高速で、消費電力も大幅に低減した。また、高精度な脳皮質の再現では、海外の先進GPUと比べて478.18倍の高速化を達成した。再現された脳皮質メッシュは滑らかでトポロジーの整合性を保ち、複雑な脳回構造を高精度で再現するとともに、従来の手法で生じるアーチファクトや自己交差といった欠陥も効果的に抑制できる」と語る。

楊教授は、「この成果によってブレイン・マシン・インターフェース(BMI)や脳疾患診療の分野に新たな可能性が開かれる。将来的には、個別化・動的な脳デジタルツインの実現が可能となり、術中神経ナビゲーション、アルツハイマー病の早期スクリーニング、個別化治療などをリアルタイムで支えるハードウェア基盤となることが期待される」と話す。(編集YF)

「人民網日本語版」2026年7月8日

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