海外の人々の心をつかむ中国ドラマ
2015年に中国の人気ドラマ「後宮甄嬛伝(宮廷の諍い女)」の海外配信権をNetflix(ネットフリックス)が取得し、海外で有料配信された初の中国ドラマとなったのを皮切りに、中国ドラマの海外進出が常態化して10年以上が経った。当初は海外進出する中国ドラマと言えば歴史ドラマばかりだったものの、この約10年の間に、さまざまなタイプの中国の作品は、バラエティに富んだコンテンツ形態を通して、世界の視聴者の日常生活に溶け込むようになっている。ジャンルはサスペンスドラマや都市を舞台にしたドラマ、現代ドラマなど多様化し、その視聴者も、東南アジアの華僑・華人から、欧米人へと拡大している。人民日報が伝えた。
東洋の趣に世界の人々が夢中になる理由とは?
中国の特色あるドラマのジャンルである歴史ドラマは、海外でも以前から人気が高かった。その人気は配信されたドラマの数や再生回数といった面から見ても明らかだ。2010年代には「歩歩驚心(宮廷女官 若曦)」や「琅琊榜(琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~)」、「三生三世十里桃花(永遠の桃花~三生三世~)」、「長安十二時辰(長安二十四時)」などが海外進出したのに続き、ここ数年では、「蒼蘭訣(蒼蘭訣~エターナル・ラブ~)」や「度華年(The Princess Royal)」といった歴史ドラマも人気を集めている。
北京航空航天大学・人文社会科学学院の博士課程の指導教員を務める牛夢笛教授は、「中国の歴史ドラマが海外進出できるのは、一目で中国の文化と分かるほか、強い感情的共感を呼ぶことができるという大きな強みがあるからだ。衣装や歴史的建造物、伝統的な儀礼、無形文化遺産の技術、美しい大自然といった要素が独特の雰囲気を作り出し、海外の視聴者に全く新しい文化体験を提供することができている。そして、中国の歴史ドラマが世界の映画・ドラマ市場の差別化競争において競争力を高めることができるようバックアップしている。また一方で、家族への思いや見守り、故郷への思いといったテーマは、世界共通の感情で、海外の視聴者でも理解し、受け入れやすい」との見方を示している。

ドラマ「逐玉(逐玉:翡翠の君)」
例えば、ドラマ「逐玉(逐玉:翡翠の君)」は、家族と国に対する忠誠心と個人の成長というテーマがうまく融合されており、目まぐるしいストーリー展開の中で、自分の思いを貫き、家族や国を守る純粋で、平凡な人物が描き出されている。今年3月、同ドラマは愛奇芸(iQIYI)や騰訊視頻(テンセントビデオ)、Netflixといったプラットフォームで同時配信され、愛奇芸の海外版の全ジャンルのコンテンツ、及び中国語ドラマの再生回数ランキングでトップに立ったほか、2025年以降で、Googleで最も検索された中国の歴史ドラマとなった。
昨年大ヒットしたドラマ「蔵海伝(蔵海伝~静かなる炎、宮廷を揺るがす~)」は中国で放送と配信が始まると、視聴者が更新されると競うように視聴する人気ぶりとなり、海外でも同時配信されて、人気を集めた。ドラマは190ヶ国・地域で配信され、世界各地のさまざまな文化的背景の視聴者がそれを楽しみ、ほぞ穴や智謀といった中国伝統の文化コンテンツに興味を抱き、調べるようになっている。海外のコメント欄では、「Chinese Aesthetics(中国美学)」や「Xia Culture(侠文化)」が度々用いられるワードとなり、海外の視聴者の関心の高さを反映している。

ドラマ「太平年(Swords Into Plowshares)」
今年初め、歴史ドラマ「太平年(Swords Into Plowshares)」が海外の複数のプラットフォームで配信され、大きな注目を集めた。中国の唐の滅亡から北宋の成立までの間に、黄河流域を中心とした華北・中原を統治した5つの王朝(五代)と、華中、華南と華北の一部を支配した諸地方政権(十国)が興亡した五代十国時代を舞台に、銭俶が呉越の十三州を宋王朝に帰順させ、中国初の流血なき統一を成し遂げた歴史が中心となったこのドラマは、北米をメインに展開している動画配信サイト「Viki」で9.3ポイントという高得点をたたき出し、ベトナムのデジタルテレビプラットフォーム「TV360」の海外ドラマランキングでトップに立った。ソーシャルメディアを見ると、海外の視聴者は、同ドラマについて、「最近、五代十国の歴史に完全にはまってしまった」や「ドラマの登場人物について理解を深めるために、登場する実際の人物を一人ひとり研究した」といったコメントを寄せているほか、自分の感想を整理して書き込み、他のファンとドラマについて語り合っている。
ドラマ「家業(家業~The Heir~)」は、国家級無形文化遺産・徽墨の制作技術にスポットを当て、それと家族が奮闘する物語がうまく融合されており、中国の伝統手工芸の匠の心と温もりを生き生きと描き出している。配信が始まると、愛奇芸の海外版では、13ヶ国・地域の再生回数ランキングでトップに立った。
牛教授は、「無形文化遺産をテーマにした映画・ドラマが海外の視聴者の心を掴むためには、技術の素晴らしさだけでなく、職人がその技術を守り続ける理由やその技術が途絶えるとどうなるのか、伝承するためにどんな努力が必要なのかなどをはっきりと描き出さなければならない。『家業』は、理屈っぽさがなく、変化に富んだストーリーを通して、『徽墨』が背負っている『一つの道を一生かけて貫く』という価値観が描かれ、見る人を心の底から感動させている」との見方を示している。
マイクロドラマも大ヒット
中国のマイクロドラマはここ数年、ストリーミングメディア・プラットフォームを通じ、海外市場でめざましい発展を遂げた。とりわけ東南アジア地域での発展が目を引く。統計によれば、各種ストリーミングメディアサービスに対応した中国マイクロドラマの海外向けアプリはすでに300種類を超え、2025年には世界の累計ダウンロード数が約12億1000万件に達し、海外市場での売上総額は23億8000万ドル(1ドルは約160.5円)に達する見込みで、力強い成長の勢いを示した。
今年第1四半期(1-3月)世界のショートドラマ視聴アプリのダウンロード回数は前年同期比238%増で、世界のユーザーのインストールから30日後の1日当たりの平均使用時間は37.73分だった。ショートドラマに比べさらに短いマイクロドラマは、展開が速く、見る人の気分を高揚させ、ちょっとした時間を使って見ることができるといった強みを武器に、中国語コンテンツの世界に向けた発信において、決して軽視できない新たな存在となっている。
北京聯合大学・応用文理学院の邵将准教授は、「現在、中国のマイクロドラマの海外進出は、ダウンロードや有料広告頼りの大規模海外進出から、コンテンツやIP、文化的アイデンティティといった価値を売りにした海外進出へとシフトアップしている」との見方を示している。

マイクロドラマ「ENEMY」
社会現象を巻き起こしているマイクロドラマ「ENEMY」は、インフィニットスタイルのストーリーと古典的な演劇である戯曲や歴史的建造物といった中華の優秀な伝統文化の要素が革新的なスタイルで融合されている。同ドラマにおける戯曲のセリフや始まりの動作は、ストーリーと切り離されてPRされる文化ではなく、ストーリーの流れに組み込まれたターニングポイントとなっている。こうした細部が、さまざまな文化背景の視聴者がドラマの視聴を進めていく過程で、そこに秘められている深い感情や信念を理解できるようにサポートしている。同ドラマの配信が始まると、米国やメキシコ、タイ、インドネシアといった国や地域の人気ドラマランキングにランク入りし、多くのネットユーザーが海外のソーシャルメディアで、ストーリーの解釈や文化の細部の解説を行い、自発的に中国文化をPRするようになっている。
また今年の春節(旧正月、今年は2月17日)に合わせて配信が始まった「The Lady from the Northeast」の初月の再生回数は30億回を超えた。同ドラマは、中国東北エリアの地域文化と東南アジアの華人の生活シーンを融合させており、コメディを通して、地域の壁を打破し、そこに描かれている家族に対する温かな思いや、高い完成度が、中国とマレーシアの視聴者の心を結んだ。同ドラマでは、ストーリーに、テータリックや現地のお菓子、春節の「魚生(イーサン)」と呼ばれる刺身を食べる風習、及び美しい女性の伝統衣装といったマレーシア文化の要素が融合されており、「マレーシアテイストたっぷり」と喜ぶマレーシアの視聴者も多かった。
どんな「中国スタイルの風習」が議論の的に?
中国ドラマの「忠実なファン」になる外国人は、ストーリーや出演者に注目しているほか、ドラマで描かれている中国の日常生活や文化、風習にも目を向けるようになっており、海外のソーシャルメディアでは、中国ドラマで描かれている生活や文化の細部が度々話題となっている。中国のドラマや映画は今、雨が静かに降り、万物に潤いを与えるかのようなスタイルで、海外の視聴者が中国の社会や中華文化について理解を深める重要な窓口となっている。
中華グルメは外国人の間で人気が高い。ある海外のネットユーザーは、中国のドラマではほぼ毎回、食事の場面があることに注目している。ドラマ「愛你(The Best Thing)」に出てくる薬膳も、一部の視聴者の好奇心をそそり、「是非一度食べてみたい」というコメントも寄せられている。

あるマレーシアのネットユーザーは、月経困難症に悩まされ、改善する方法がなかなか見つからなかったものの、中国ドラマでよく出てくる黒砂糖に湯を注いで飲み、体を暖める「紅糖水」を突然思い出し、夫に作ってもらったという。すると、予想以上の効果があり、体がすぐにポカポカしてきて、痛みも大分収まったという。その女性は、「Thank you c drama」と感謝のコメントを寄せている。
ドラマに度々出て来るQRコード決済も、海外のネットユーザーの注目の的となっている。そのため、「中国では、ほとんどすべての消費シーンで、モバイル決済ができる。ドラマを見て一番感じるのは、今後は、中国に旅行に行く前に、モバイル決済をマスターしておかなければということ」というコメントも寄せられている。
中国文化を海外の人々の生活に浸透させる中国ドラマ
現地の言語を使うというのは、文化を海外へ広める上で重要な要素となる。ドラマ「逐玉」の配信が始まると、愛奇芸の海外版は14言語の字幕と5言語の吹き替え版を用意し、海外の視聴者がストーリーを理解し、ドラマの更新に付いていけるようサポートした。ドラマ「驕陽似我(Shine On Me)」は14言語の吹き替え版が用意され、アジアや北米、ポルトガル語圏、スペイン語圏などで大ヒットした。
また、オフラインイベントが中国語コンテンツと海外ユーザーの「絆」を深めている。中国文化の海外PR計画「愛奇芸星艦計画」が2024年から実施されて以降、「淮水竹亭(淮水竹亭~宿命の盟約~)」や「双軌(双軌~スピード&ラブ~)」、「成何体統(How Dare You)」、「樊籠」といった作品の主演俳優たちがシンガポールやタイ、マレーシアを訪問し、現地のファンと交流し、作品が大ヒットするようバックアップした。騰訊(テンセント)の海外市場向け動画配信サイト「WeTV」はタイやインドネシアなどで、ドラマ「莫離(莫離~初恋のジャスミン~)」の視聴イベントを開いたほか、人通りの多い場所での大スクリーンによる宣伝を行い、多くの人がイベントに参加したり、宣伝を見たりするために訪れた。
「China Travel」がトレンドとなって世界中に波及し、外国人観光客が動画を通して、中国で見聞きしたことを記録しているのを背景に、中国ドラマは海外進出の新たなチャンスを迎えている。「蔵海伝」を見た視聴者は、博物館や文化景勝地に足を運ぶようになり、シンガポール政府観光局は、電子書籍サービス大手「閲文集団」と 「IP+文化観光」のスタイルを共同開発することで合意し、中国ドラマの内容と観光体験が密接に結びついたことで、文化と観光の融合が持つポテンシャルが明確に証明された。
優れたストーリーは、文化を伝える重要な媒体であり、中国ドラマの背後には、奥深い中国文化がある。中国社会科学院・世界伝媒研究センターの秘書長を務める冷凇研究員は、「中国ドラマは、中国文化の海外進出における『先鋒部隊』だ。中国ドラマと中国文化は、『雪だるま式の共生関係』にある。ドラマは中国伝統文化において最もPRしやすい部分を、一種の現代的なライフスタイルで文化を超えて広め、更新と同時に視聴する風潮や文化の没入型体験のスタイルを作り出し、中国ドラマと中国文化をより緊密に融合させている」との見方を示した。(編集KN)
「人民網日本語版」2026年7月31日
おすすめの関連記事
「C-Drama」が外国人の間で大人気に どんな「中国スタイルの風習」が議論の的に?
中国発ネット文学・ドラマ・ゲームは文化の消費・海外進出の新エンジン
韓国で中国ブランドが人気 フードからドラマ、スマート製品まで
注目フォトニュース
関連記事
- 江蘇省塩城市発ショートドラマの人気の秘密とは?
- 「C-Drama」が外国人の間で大人気に どんな「中国スタイルの風習」が議論の的に?
- 中国発ネット文学・ドラマ・ゲームは文化の消費・海外進出の新エンジン
- 200超える国・地域で視聴者の心をつかむ中国ショートドラマ
- 中国文化の「新三種の神器」が海外で「中国旋風」
- タイの「中国カルチャーブーム」が両国の良好な関係の象徴に
- 中国貧困者支援ドラマ「山海情」、50以上の国と地域で好評配信
- 中国ドラマが海外進出 ドラマ効果で中国文化への注目も高まる
- 5つの顔を持つ男性が主役の中国のサスペンスドラマ「新生」が話題に
- 中国のショートドラマが爆発的人気に 1ヶ月200万円以上稼ぐ脚本家も
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257 Mail:japan@people.cn








