2016年9月25日、貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州平塘県の窪地にある、中国が独自の知的財産権を持つ、世界最大口径の、最も感度の高い直径500メートルの球面電波望遠鏡（FAST）が竣工し、深宇宙の秘密の探索を開始した。

FASTのここがすごい

FASTは口径500メートル球面電波望遠鏡の英語の略称だ。同望遠鏡は4450枚の自動反射ユニットから構成され、敷地面積はサッカースタジアム約30個分に相当し、中国の「天眼」と呼ばれている。

電波は赤外線よりも周波数が低い電磁信号のため、簡単に言えば、電波望遠鏡の口径が大きいほど、より遠くの宇宙を見ることができる。ドイツの口径100メートルのエフェルスベルク電波望遠鏡と比べ、同望遠鏡の感度が約10倍まで向上している。これは100億光年以上離れた所からの電波でも捕捉できることを意味する。 ＞＞詳細へ

また、直径500メートル、総重量1300トン以上のケーブルネットは規模と精度が世界最高のケーブルネット構造で、世界で初めて変位作業モードを採用したケーブルネット構造でもあるため、複数の世界記録を樹立した。＞＞詳細へ

世界では現在、同クラスの大型電波望遠鏡の建設を計画している国はないため、FASTは世界の同類の設備に対して今後10−20年に渡り、世界一流設備の地位を維持することができる。

習近平総書記が祝辞

中国の天文学者は1994年に、この「天眼」と呼ばれる球面電波望遠鏡の構想を打ち出し、事前研究から竣工まで22年の月日が費やされた。9月26日、同望遠鏡の運用開始に対し、習近平中共中央総書記（国家主席、中央軍事委員会主席）は書面で祝辞を寄せ、開発と建設に関わった数多くの科学技術者、エンジニア、建設者に熱烈な祝意と心からの挨拶を表明した。＞＞詳細へ

海外も中国の「天眼」に注目

米国の物理学者、ノーベル賞受賞者のジョゼフ・テイラー氏はFASTは中国人の宇宙探査への熱意を高め、多くの人が科学に歩み寄る窓口になるとし、中国はこれにより、世界の科学技術分野でより重要な地位を占めると評価した。「私はFASTの建設者に祝いの言葉を述べたい。彼らは工期どおりに、世界最大で最高の感度をもつ設備を建設した。私はFASTがより多くの新しく重要な科学技術成果をもたらすと予想しており、これらの成果に非常に期待している」と話した。＞＞詳細へ

日本の宇宙情報サイト「sorae」は「中国の『天眼』は高い観測能力を持ち、微弱信号を発するパルサーの観測などに用いられる」とコメントを寄せた。

独フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙（電子版）は「これは唯一無二のプロジェクトで、地球以外の生命を探す世界の計画をサポートする」と評価した。

天眼の用途

これほど大きな望遠鏡で何ができるのだろうか、まさか宇宙人を観測するのだろうか？中国科学院国家天文台副台長の鄭暁年氏は、「その他の電波望遠鏡と同じく、中国の大型電波望遠鏡の最も主要な2大科学目標は、宇宙の中性水素の探査とパルサーの観測だ。前者は宇宙ラージスケール物理学の研究により、宇宙の起源と変化を探る。後者は極端な状態における物質構造と物理法則を研究する」と説明した。

また同望遠鏡はさまざまな奇妙な天体を見つけられる可能性がある。パルサーの観測、宇宙の起源と変化、星と銀河系の変化の探査などにも用いられる。さらには星と星の間の通信信号をキャッチし、地球外文明の探査を行うことが可能だ。＞＞詳細へ

中国天文学会会員、天津市天文学会理事の史志成氏は、「宇宙の生命体、もしくは高い知能を持つ宇宙人が存在すれば、彼らが広大な宇宙に残した情報を、FASTによって確認できるかもしれない」と述べた。

なぜ貴州省に？

FASTプロジェクト副チーフテクノロジストである孫才紅氏は、自然の窪地「大窩凼」を建設地として選んだ理由について、「まずはこの地形がFASTのくぼみのラジアンと形状に最も近く、掘削が最も容易だ。次に現地のカルスト地形によって雨水が地下に浸透しやすく、水たまりになり望遠鏡を浸食することがない。それから電波望遠鏡は静かな環境が必要だが、『大窩凼』から半径5キロ内に村が一つもなく、理想的な環境となっている」と説明した。

FASTの建設過程を振り返る

FASTは、2007年末に正式にプロジェクトが立案され、2011年3月に着工された。建設期間は5年半に達し、2016年9月２５日に稼働を始めた。＞＞詳細へ

（編集SC）

「人民網日本語版」2016年9月27日