中国の研究者、抗がんコウモリを発見
中国科学院昆明動物研究所が11日、同研究所の研究者はこのほど、多くのコウモリの中から抗がんコウモリを発見した。これはコウモリという種ががんへの耐性を持つという直接的な実験の証拠を提供しているだけでなく、哺乳類の抗がん性の自然メカニズムの解明に啓発を与えたと明らかにした。これに関連する研究成果は国際的に有名な学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。科技日報が伝えた。
コウモリは哺乳類の中で適応進化が最も成功した生態群の一つだ。世界では現在まで計1400種余りのコウモリが発見されている。コウモリは哺乳類の中で、げっ歯類に次ぐ2番目に大きな目だ。その他の大半の哺乳類と比べると、コウモリはその進化において、飛行、エコロケーション、ウイルスへの耐性など複数の独特な適応表現型を進化させてきた。うち最も注目されているのは、多くのコウモリの種の寿命が同じ大きさの哺乳類を上回ることだ。これはコウモリががんに強いからではないかという推測を生んだ。これはハダカデバネズミやモグラジネズミなどの多くの長寿の哺乳類が天然の抗腫瘍能力を示しているからだ。しかしこの仮説は体系的な研究が行われていなかった。
上述した仮説を検証するため、昆明動物研究所の研究員である劉振氏と、博士課程在学中の華絨氏、馬苑碩氏、楊陸氏らが協力し、発がん遺伝子の「HRAS」と「SV40L」をそれぞれ7種のコウモリの繊維細胞のゲノムに入れ、先に体外培養を行ってからマウスの体内に移植し培養した。その結果、これらのコウモリのうちビッグフットコウモリの繊維細胞だけに、悪性増殖の現象が見られなかった。これはビッグフットコウモリが抗がん能力を持つように進化したことを示している。
ビッグフットコウモリ(撮影・劉奇)
COP9シグナロソーム5(COPS5)は進化的に保存された多機能タンパク質で、シグナル伝達、細胞増殖、アポトーシス、細胞周期、ゲノム不安定性、DNA損傷修復の制御において重要な役割を果たしている。研究者は分子進化理論に基づき、トランスクリプトームやゲノムなどのデータを統合・分析し、機能実験と組み合わせることで、ビッグフットコウモリがCOPS5遺伝子上流で低酸素誘導性転写因子の結合部位を失い、その発現が弱まることにより、抗がん能力をつけたことを突き止めた。これは哺乳類の抗がん性の自然メカニズムの研究に新たなアプローチをもたらした。(編集YF)
「人民網日本語版」2024年3月13日
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