AIを活用した黄砂予報、処理速度が100倍以上向上
「予報を見て安心した」と話す大学生の丁婷婷さんは先日、友人と甘粛省を旅行していた。中国の西北部では黄砂がしばしば生じるが、旅行中、彼女は黄砂や浮遊塵の正確な予報を受け取っただけでなく、「マスクやスカーフなどの防塵用品を携帯すること」「運転者は速度を抑えること」といった注意喚起のメッセージも受けとったという。人民日報が伝えた。
甘粛省蘭州市にある中国気象局蘭州乾燥気象研究所では、数値モデル研究室の首席専門家である段海霞氏が黄砂予報データの処理結果を分析していた。段氏は隣にいた同僚の雷雨虹氏に対して、「今回提供されたデータは期待通りだった。予報範囲も時期も十分に検証に耐えうるものだった」と語った。
この検証に耐え得たのは、研究所の「新しい同僚」であるエアロゾル・気象結合予報人工知能(AI)モデルのおかげだ。
一つのモデルがどうやって黄砂の到来を予測するのか。その鍵は「結合」にある。
一般の人々が日常的に接する天気予報は、気象予報士によるものが多い。予報士は複数の数値気象予報モデルやAIモデルの予報結果を分析し、地域の気象特性や予報経験を踏まえて最終的な予報を導き出す。しかし従来の数値予報モデルの多くは、黄砂やPM2.5などのエアロゾルを他の気象要素と分離して計算しており、それらの相互作用を十分に捉えることが難しかった。実際には、エアロゾルと他の気象要素との「結合関係」が黄砂の飛散や沈降に大きな影響を与えている。
この原理を活用し、中国気象科学研究院の車慧正研究員率いるチームはエアロゾル・気象結合予報AIモデルを開発した。エアロゾルと気温、風速、気圧などの気象要素との相互作用や協調変化を分析することで、予報精度を向上させている。
AIは黄砂を発見する優秀な「探偵」であるだけでなく、超高速計算もできる。従来の数値予報モデルは大規模コンピュータークラスターによる計算を必要とし、全球予報を1回実施するには数時間を要していたため、通常は1日に2~4回しか予報できなかった。一方、このモデルはAIによって駆動され、GPU(画像処理装置)による計算を可能にしている。全球予報の実行に必要な時間はわずか36秒で、処理速度は100倍以上向上している。
乾燥気象研究所は昨年10月末、このモデルを導入して試験運用を開始した。しかし、スマートフォンで撮影した広角写真を拡大すると細部がぼやけてしまうのと同じように、モデルをそのまま中国西北部の予報に利用する場合も同様の課題が生じた。より正確な地域ごとの状況を把握するため、研究チームはモデルが提供するデータをダウンスケーリングする必要があった。
雷氏は、「ダウンスケーリングは解像度を高める手法の一つだ。私たちは従来50キロメートルだった全球データの解像度を5キロメートルまで向上させた。チームは黄砂の光学的厚さや質量・濃度などの重要パラメータに対してダウンスケーリングを行い、高い時空間分解能を持つ可視化データを生成することで、予報品質をさらに向上させた」と説明。
モデルによる予測とダウンスケーリングを経た予報データは、リアルタイムで甘粛省気象局蘭州中心気象台のサーバーへ送信され、最終的な予報発表の参考情報として利用されている。段氏は、「この半年余りで、中国北部における10回以上の大規模な黄砂現象を比較的高い精度で予報してきた。このモデルは3~5日先の高精度な環境気象予報を実現できる。エアロゾル総量や地表付近の黄砂濃度の予測精度は、国際的な先進予報システムと比べて10~30%向上しており、計算コストも大幅に削減されている」としている。
黄砂の強さや発生時刻などをより正確に把握することは、人々の日常生活にとって極めて重要となる。段氏によると、このモデルは基本的な移動や健康に関する注意喚起に加え、リアルタイムデータと組み合わせることで個別化された防護アドバイスも提供できる。例えば、黄砂中のアレルゲン粒子濃度を分析し、アレルギー体質の人に対してN95マスクの着用や屋外滞在時間の短縮を事前に通知することが可能だ。また医療システムと連携することで、黄砂多発期における呼吸器疾患の受診ピークを予測し、医療機関が医療資源の事前調整を支援することで、公衆衛生を守るための防御体制を強化できる。
将来的には、社会のさまざまな生産現場での活用が期待されている。例えば、黄砂粒子の粒径、帯電特性、沈降速度を予測することで送電塔の保守運用を指導し、大規模な停電を回避することが可能になる。また、作物生育モデルと組み合わせて農作物の灌漑時期の調整を提案し、災害発生後の対応から災害発生前の予防的管理への転換を推進できる。さらに、森林火災対策においても事前警報を発し、住民避難を支援することで被害を軽減できる。このように、「黄砂大規模言語モデル」が関わるのは黄砂問題にとどまらず、多様なシナリオにおけるリスク予測と意思決定に対して、科学的な支援を提供することができるとみられている。(編集KN)
「人民網日本語版」2026年6月4日
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