中国初の帰還型微小重力科学実験衛星「実践10号」が4月6日午前1時38分、長征2号丁ロケットによって打ち上げられた。この科学実験目的の衛星は、19の科学実験という「乗客」をのせて実験を実施する。
2020年頃から建設を開始する宇宙ステーションでも微小重力流体、燃焼、材料、バイオ技術などの科学研究を実施するが、なぜ「実践10号」を打ち上げなければならないのだろうか?
まず、衛星の微小重力水準が向上する。同衛星内は地球の表面重力の10-6Gだが、宇宙ステーション内は地球の重力の10-3Gのみ。次に、同衛星は機動性が高い。実験サンプルを衛星に積み込む時間は、打ち上げ直前が理想的だ。今回の実験に使われる幹細胞、骨髄、胚などは、打ち上げ数時間前に衛星に積み込まれた。実験終了後、サンプルは帰還モジュールにより迅速に回収され、分析に回される。
また、「実践10号」は帰還モジュールの他に軌道滞在モジュールがあり、燃焼実験など宇宙ステーションでは危険で行えない実験も、この軌道滞在モジュールで実施できる。>>詳細へ
設計上の使用寿命は15日の同衛星は軌道上で、宇宙の微小重力などの特殊環境を利用し、6大分野の19の科学実験を実施する。その後は中国の成熟した帰還型衛星技術を用い、計画に基づき地球に帰還する。
【6大分野】: 微小重力流体物理 微小重力燃焼 宇宙材料科学 宇宙放射線効果 生物への重力の効果 宇宙生物技術
19件の科学実験のうち、10件が微小重力科学実験、9件が宇宙生命科学実験となる。近づきがたいように思われるが、実際にはその多くが生活に即した内容だ。「微小重力下における石炭燃焼、その汚染物質の生成の特徴に関する研究」を例とすると、石炭燃焼は各大都市の大気汚染の大きな原因となっている。「実践10号」は石炭燃焼実験を計画している。中国の科学者は中国の典型的な3種の炭種を選択し、実験装置内で燃焼させ、異なる温度・炭種・粒径・環境ガス成分を条件とする球形石炭粒子と炭塵の燃焼の全過程を観測する。さらに火の形状、粒子表面の変化、揮発、放出などを記録し、燃焼の理論と模型を明らかにする。
中国航天科技集団第五研究院総体部帰還型衛星専門家の高振良氏は、「燃焼の研究を徹底すれば、石炭燃焼の効率を高め、大気汚染を着実に防止できる」と指摘した。>>詳細へ
カイコの発育への宇宙環境の影響および突然変異のメカニズムに関する研究・実験では、軌道上でカイコを育て、カイコの発育・遺伝子・タンパク質表現などを研究する。宇宙環境におけるカイコの突然変異の頻度とメカニズム、行為の変化の程度を理論的に解明する。
微小重力条件下の哺乳類の早期胚の発育に関する研究・実験は、マウスの早期胚を研究対象とし、軌道上で育てる。宇宙環境における哺乳類の早期胚の成長と発育への影響を研究することで、宇宙環境条件下の動物の早期生命活動法則を解明し、未来の宇宙長期飛行における人類生殖機能の発育の健康に対して、科学的な根拠を提供する。
実践8号の打ち上げに成功した2006年から、10年に渡り沈黙を守ってきた中国の帰還型衛星「実験10号」が、ついに帰ってきた。帰還型衛星ファミリーの「先輩」と比べ、「実践10号」にはどのような変化があるのだろうか?>>詳細へ
◆実験の精度が向上、リスク低減
◆制御・推進システムの改良
◆上部にメインパラシュートを取り付け、「水陸両用」になる
◆着陸地点は四川省より内モンゴル四子王旗に変更
「長男」: 暗黒物質粒子探査衛星「悟空」
中国は昨年12月17日、暗黒物質粒子探査衛星「悟空」の打ち上げに成功した。同衛星は暗黒物質粒子の探査と宇宙線物理という、2大科学難題の解明に挑む。>>詳細へ
「次男」: 微小重力科学実験衛星「実践10号」
「三男」: 量子科学実験衛星
中国は今年下半期に量子衛星を打ち上げる。同衛星は高速量子暗号伝送実験を行い、これを踏まえた上で広域量子暗号ネットワーク実験を実施し、宇宙量子通信の実用化に向け重大な進展を実現する。宇宙スケールで量子もつれの伝送と量子テレポーテーションの実験を行い、宇宙スケール量子力学の完全性を調べる実験と研究を実施する。
「四男」: 硬X線変調望遠鏡衛星
硬X線変調望遠鏡衛星も今年下半期に打ち上げられる。同衛星は広域X線による宇宙観測、塵埃によって遮られている特大質量ブラックホール、未知の天体の探査を実現する。ブラックホール、中性子星、活動星などの高エネルギー天体を観測することで、緻密天体とブラックホールの重力物質の動力学と高エネルギー放射の過程を研究する。X線パルサーを利用する宇宙線の自主ナビゲーションの技術と原理を模索する。
(編集SC)
「人民網日本語版」2016年4月11日