【日中科学技術交流は「面」の交流を】
記者:今回は成果報告会参加と同時に、108人からなる日本科学技術者幹部訪中団の一員としての北京を訪問されましたが、今回のような大規模な訪中団による交流への期待とは?
沖村氏:2017年7月に中国科学技術部(省)の万鋼部長が「さくらサイエンスプラン」を非常に高く評価し、中国側も日本から数百人規模の招請をしたいと言ってくださり、非常にうれしく思っています。長年、日中交流に関わっていますが、日中交流がうまくいかない一番の原因は、日本側がまだ中国のことをよく知らず、その現状やその科学技術力の高さをよくわかっていないからだと感じています。私は数年前から中国の科学技術はすでに広範な面で日本を抜き去っているばかりか、もうすぐアメリカに追いつき、追い越すとすら考えています。日本はそうした実態を踏まえ、もっと謙虚に中国と付き合わねばならないのに、中国をよくわかっていません。そんな中、万鋼部長が日本で影響力を持つ行政官や大学関係者を中国に招いてくださいました。彼らは、中国の凄まじい発展ぶりに驚き、認識を一変して帰国しております。こうした交流をさらに多く続けていけば、日本が中国をよく知るようになり、ひいては日本の将来にとって、中国と交流していかなければ日本の将来は無いことを深く認識し、交流がもっと活発になると思います。
記者:中国科技部は2016年に引き続き、日本の科学技術者幹部を中国に招待しています。2017年はその規模をさらに拡大し、北京だけでなく、グループに分かれ、西安や鄭州、上海を訪れています。こうした地方間の科学技術協力に対する考えは?
沖村氏:「さくらサイエンスプラン」は草の根を理想とし、中国の多くの研究所や大学と日本の研究所や大学が一緒になり「面」で協力することを理想としています。現在、同プランには日本側から268の機関が、中国も419の機関が参加し、中国では31の省と直轄都市、自治区全ての地域から参加してもらっています。私自身もチベットとウイグル以外の地域を全て訪問し、同プランをPRしています。国同士が本当に交流しようとしたら、主要な所を「点」でつなぐのではなく、国全体で、「面」で付き合う必要があります。そういう意味からも地方間の交流は重要であり、今後ますます深めていきたいと思っています。
記者:中日女性科学者会議がここ2年間再起動し、中日両国で科学技術者の訪問団を相互派遣しています。こうした人的交流が発揮する役割とは?
沖村氏:交流は人と人が交流することが原点だという考えから、「さくらサイエンスプラン」の他にも、「日中大学フェア&フォーラム」という大学同士の交流もやっています。「さくらサイエンスプラン」でようやく知り合え、そして徐々に大学同士で交流が始まったこの状態から、その交流をもっと活発にするための施策と工夫が必要だと考えています。そのため、こうした人的交流にはもっと力を入れていきたいと思っています。
記者:中国のここ数年の発展の変化と中日科学技術交流の現状は?
沖村氏:科学技術振興機構の理事長を始めてから、18年にわたり日中交流に携わっていますが、その中で得た結論は先ほども述べたように中国の科学技術はもう日本を抜き去っているということ。その原因は中国政府が科学技術を最も重要な政策と考えている点です。毛沢東主席の時代から、中国の科学技術政策重視の姿勢が始まっており、その姿勢にともない、第13次5カ年計画という素晴らしい計画があり、膨大な行政組織ができあがり、しかも中央政府だけでなく、地方政府に至るまできちんとした組織ができあがっています。さらに、近年は財政的にも豊かになり、非常に潤沢な資金が流れています。この財政比率は日本の5倍以上、アメリカに比べても高いのです。こうした科学技術重視の姿勢を続ける限り、中国は必ず世界に冠たる科学技術大国になるでしょう。日本は今後、中国の隣国としてもっと密接に交流していかなければ、日本の将来は無いと思っています。そういう思いから18年間ずっと日中交流に関わってきたのですが、まだまだだと感じており、これからもこうした活動に大いに力を注いでいきたいと思っています。中国の皆さんのご協力と、メディアとしての影響力をもつ人民網にもご協力をお願いいたします。(文・玄番登史江)
「人民網日本語版」2018年1月18日
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn