【国際観察】「ワクチンツアー」で露呈した米国のワクチン買い占め

人民網日本語版 2021年06月09日16:14

「私達が米国に来たのは『アメリカン・ドリーム』のためではなく、『ワクチン・ドリーム』のためだ」。CNNの報道で、ワクチン接種のため米国を訪れたあるペール人はこう語った。ペルーは現在、新型コロナウイルスによる死亡率が10万人あたり551人と世界で最も高い。(文:覃川。人民網掲載)

このような危機的状況を前に、ペルーは十分な量のワクチンを入手できず、ペルー国民はやむを得ずワクチン接種のため外国へ行く「ワクチンツアー」を選択している。そこで、大量のワクチンを買い占めている米国が人気の「旅行目的地」となっている。

だが、全ての人々が米国への「ワクチンツアー」費を払えるわけではない。

ニューヨーク・タイムズによると、米国に殺到する「ワクチンツーリスト」の多くは中南米各国の米国観光ビザを持つ富裕層や中産階級であり、低所得層は高額な旅行費を支払えない。汎米保健機構(PAHO)のまとめによると、米州ではすでに新型コロナウイルスワクチンの接種が4億回以上行われているが、その大部分は米国であり、中南米の人々は3%しかワクチン接種を完了していない。

このことから、「ワクチンツアー」がワクチン分配の不均衡による歪んだ産物であり、新型コロナの抑え込みにとって利点よりも弊害が大きく、社会的分断も深めていることが分かる。そして、他国が「1回分さえ入手困難」な時にワクチンを大量に買い占めている米国が、この危機の火に油を注いでいることは間違いない。

西側メディアの報道によると、すでに米国は約26億回分のワクチンの買い占めに走った。これは世界全体の4分の1を占め、自国の需要を遥かに超える。現在、何億回分ものワクチンが倉庫内で眠っている。ブルッキングス研究所の研究報告は、年末までに米国では10億回分以上のワクチンが余る可能性を指摘する。

しかし、世界ではまだ10数ヶ国が「ワクチン砂漠」におり、最前線で患者の治療に当たる医師ですらワクチン接種を1回も受けられずにいる。

また、中国と米国の対応の明確な違いも鮮明なコントラストを成している。中国は自国内にも膨大な人口を抱え、ワクチン供給が非常に厳しい中、すでに国際社会に3億5000万回分以上のワクチンを提供した(援助が80数ヶ国、輸出が40数ヶ国)。また、複数の発展途上国と協力して、ワクチンの大量生産を迅速に推し進めている。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はかつて、「ワクチン分配の不均衡は道徳的災難だ」と指摘した。国連のグテーレス事務総長も、「ワクチン・ナショナリズム」、ワクチン買い占め、ワクチンメーカーとの水面下での契約合意といった先進国の行為を繰り返し批判。ワクチンの不公平な分配は「道徳に反する」と指摘し、全世界への公平な分配を推進するよう呼びかけている。だが米国は、この時期においてもなおワクチン分配の問題において「米国第一」、「米国優先」を堅持すべきだと強調し続けているうえ、ワクチン原料の輸出を制限している。

「口数が多く行動が少ない」あるいは「口先だけで行動しない」は、米国の政治屋の一貫したやり方だ。だがパンデミックを前に、自国の「アメリカン・ドリーム」を他国にとっての「ワクチン・ドリーム」に変容させることは、間違いなく道徳的暴挙だと言えるだろう。(編集NA)

「人民網日本語版」2021年6月9日

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