韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」のポスター。
整理収納アドバイザーの西卡さんは遺品整理士でもある。2021年末に上海で、おそらく中国初となる遺品整理サービスと生前整理サービスを提供するサービスブランド「宅疏一日」を立ち上げた。
「遺品を整理するのにお金を払って人を雇う必要があるの?」、「どうしてそんな縁起の悪い仕事をするの?」……遺品整理に対しては、こんな声も上がっている。
徐々に認知され、受け入れられている整理収納サービスに比べ、遺品整理はよりニッチな市場で新しく生まれた職業だ。
西卡さんは、「時々、奇妙な目でこの仕事についてたずねてきて、感動的なエピソードがあるかどうかに強い興味を示す人がいるが、私は非常に真剣な気持ちでこの仕事に向き合っている。遺品整理事業を中国で展開しようとするなら、必ず人々が実際に抱える問題を解決しなくてはならない。単なる親切心や繊細な気持ちだけでうまくできる仕事ではない」と説明する。
また西卡さんは、若い人の中には、昨年放送された韓国ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』を見て初めてこの仕事を知ったという人が多いと思う。でも、中国での遺品整理の仕事は、日本や韓国とは状況がかなり違う。中国人に合った遺品整理スタイルを模索し、みなさんが素晴らしい生活を送り、死と向き合う過程でお手伝いをしたいと思う」と話す。
一部の国では、人々は若いうちに遺言状を作る。遺品整理が早くから発展して成熟した職業になった日本では、多くの人が「生前整理」を行い、自分が死んだ後に残った物の行き先を前もって決めている。いつ起こるかわからない思いがけない事態に備え、心残りを少なくし、残された家族の負担も軽減する……これが日本の遺品整理だが、中国では健康な時に死後のことを考えるのに慣れていない人がほとんどだ。
「中国人にはどんな遺品整理が必要か?」
西卡さんは、「中国人には中国人に合ったやり方が必要だ。私は日本の遺品整理士認定協会と接触したが、国の事情、法律やルールが違い、生と死に対する考え方も違えば、ぶつかる抵抗も違うので、単純に日本のやり方をコピーしてもだめだということに気づいた」と振り返る。
たとえば日本と韓国では、遺品整理士の仕事には遺品を整理するだけでなく、一人暮らしの人が亡くなった後の「特殊清掃」もあるのが普通だ。一人暮らしの人が亡くなると、委託された専門の遺品整理士が現場を清掃し、消毒・消臭を行う。中国ではこうした仕事は警察か居民委員会が担うことになっている。
現在、中国人の遺品整理士に対し、感情面のニーズがより大きい。家族が亡くなると、悲しみのあまり、一人で遺品に向き合うことができないという人が、整理士を呼んで遺品の整理と清掃を手伝ってもらい、処理方法をアドバイスしてもらうといったケースが多い。
西卡さんは、「こうした感情面のニーズは硬直的需要ではなく、ビジネス化が難しい。成熟したサービスになるには、人々のためにより多くの実際的な問題を解決できなければならない」と話す。
昨年正式に施行された「中国民法典」には、遺産管理人制度が新たに加えられた。遺産管理人の6つの職責のうちの1つは「遺産を整理し遺産リストを作成する」ことだ。西卡さんはここに、弁護士、公証人、居民委員会などの遺産管理担当者と協力し、遺品の整理確認作業をするという遺品整理の新たな業務を見いだした。
去年の夏、西卡さんは公証処の委託を受けて、ある高齢者の遺品の整理確認をし、新業務を現場で実践することとなった。
この方は漆畹生さんという学者で、子どもはなく、生前に遺贈扶養契約を結び、住宅をはじめとする遺産を自分の世話をしてくれたヘルパーに贈ると決めていた。遺品の整理確認には12時間がかかり、最終的に54ページに及ぶリストが作成された。
遺品整理は生きている人がよりよく生きるためのものだ。生きている人に亡くなった人をよりよく理解できる可能性をもたらすと同時に、自分の生活を振り返る機会をくれる。西卡さんは、「物には人と人との間の気持ちの動きが託されている。遺品整理の意義の一つは、こうした気持ちの動きを伝えることだ」と話す。(編集KS)
「人民網日本語版」2022年4月6日